自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

ユニットバスを選んでみる-其の四-

-其の参から続く-

 

8.メーカ毎の特長、雑感

7社の特長をざっと見てきて感じたのは、一部のメーカを除き、機能・性能面の競争はあまり熱心ではなく、それよりも壁パネルの意匠性とか、照明が良い雰囲気にできるといった、良し悪しが感性に依存する項目に力を入れている印象でした。

もっとも、折角頑張っている各社には申し訳ないですが、私は浴室内のデザインなどにはあまり関心がありません。なのでここ数回のメーカ毎の特長紹介でもほとんど触れていません。メーカのウェブ・サイトやカタログではかなりページ数を割いてアピールされているのですけど。私が気になるのは、せいぜい肌触りに関わる浴槽の材質くらい。それでも各社がこれ程力を入れているところを見ると、世間的にはデザイン周りの需要は高いのでしょう。

一方私の関心の中心は汚れが付き難いとか、自動おそうじなどの機能・性能面。これらに今でも力を入れているのはTOTOLIXILの2社という印象でした。

 

9.どのメーカ・モデルにするか?

これまで見てきた特長を踏まえ、今ならどのメーカにするかを考えます。

先ず、おそうじ浴槽のあるTOTOLIXIL、トクラスにポイントが入ります。床ワイパー洗浄でTOTOには更にポイント加算。

浴槽の材質は肌触りに直接聞くので、感性品質の中では例外的に気にする点です。この項目ではタカラスタンダードが頭1つリード。第2集団がアクリル系の素材を使うTOTOLIXILパナソニック、トクラスで、ここまでは大きな差はありません。

浴槽の大きさと形状ではLIXILが1馬身リード。単に幅広と言うだけならどのメーカにもありますが、LIXILの説明で触れたように難があったりして、しっくりくるものがあまりありません。私が段差付き浴槽が好きではないのも選択の余地を狭めます。尚この項目では「入ったときに寛げる形状か?」といった感性品質も大切ですが、これはショールームにでも行って実際に入ってみないと分からないので、ここではあえて無視します。

浴槽の贅沢機能は価格も高いのでホントに採用するかやや疑問ですが、採用するとしたらTOTOの楽湯、LIXILのアクアフィールが筆頭候補。次点はパナソニックとトクラスのマイクロバブルですかね。

シャワー関係の機能については、オーバーヘッドシャワーに興味はあるものの、どのメーカもあまりに高いので選ぶことはないでしょう。従ってこの項目は優劣無しです。

 

と、以上のように考えていくと、現次点で選ぶならTOTOということになります。楽湯を付けるならSYNLA、不要ならsazanaで良さそうです。次点はLIXIL。おそうじ浴槽はスパージュにしか付かないので、LIXILの場合はスパージュ一択です。

広々とした浴槽がどうしても欲しければLIXIL、そこまででなければTOTO、という言い方も出来るでしょう。

楽湯を付けるかどうかの家庭内稟議が最後の課題になりそうです。

 

ユニットバスを選んでみる-其の参-

-其の弐から続く-

 

3.パナソニック

パナソニックは、上位機種であるLクラスと、リフォムス、オフローラをラインナップしています。リフォムスはリフォーム用らしいので、私には対象外かも知れません。

 

(1)汚れ難い、掃除し易い

スゴピカ浴槽を始め、様々な箇所に同社が有機ガラスと呼ぶ素材を使って汚れを付きにくく落とし易くするものです。昨今ではどのメーカもやっていますね。

おそうじ浴槽は無いので、その点ではTOTOLIXILに一歩劣ると言えるでしょうか。

 

(2)お湯に浸かるのが快適になる機能

リゾートバブルは浴槽の底から大きな泡を発生させてリラックス効果を得るもの(Lクラスのみ)。短時間の入浴でも身体が温まる効果もあるそう。狙いはTOTOの楽湯、LIXILのアクアフィールなどと同じ方向性ですが、私の好みとしては肩湯かな。

オイルヴェール酸素美泡湯は浴槽内に微細な空気とオイルの泡(お湯が乳白色に見えるくらい細かい泡)を発生させるもの。入浴剤要らずで湯冷めしにくいとか、湯上がりに肌が乾燥し難いなどの効果があるようです。私も冬は乾燥肌っぽくなるので、これはいいかも。

 

(3)The シャワー(Lクラスのみ)

オーバーヘッドシャワー(Lクラスのみ;255,200円)もあるのですが、The シャワーの方がパナソニック独自で面白いです。全身に満遍なくお湯を当ててくれるタイプのシャワーです。浴槽にお湯を張るほどではないけど暖まりたくてシャワーを浴びるときに良さそうです。とは言え、306,900円はオーバーヘッドシャワー以上に手が出ません。

 

4.トクラス

お次はトクラスです。昔のヤマハですね。システムキッチンでは人造大理石カウンターで有名な印象があります。ラインナップはYUNOとeveryの2つ。

 

(1)おそうじ浴槽

トクラスもおそうじ浴槽装備、YUNO、everyのどちらでも選べます(138,000円)。色々見ていると我が家の場合、これが無くては始まらない気がしてきます。

また、浴槽は人造大理石製で、汚れが付き難い、落ち易い表面加工がされています。

 

(2)マイクロバブルとジェットバス

マイクロバブルはパナソニックにあったのと類似の機能です。但しパナソニックと違ってオイルミストは無し。

ジェットバスは他社にもありますが、これがマイクロバブルと切り替えてどちらでも楽しめる、と言うのは珍しいです。ただ、ジェットバスの方は個人的な好みでいうとそれほどそそられませんね。

 

5.クリナップ

次はクリナップです。ラインナップはアクリアバスとユアシスの2つ。

 

他メーカと同じく掃除がし易いことを謳っていますが、カウンターや排水溝のヘアキャッチャー程度で、浴槽については特別な工夫は無いようですし、全体的にTOTOなど他メーカに比べると見劣りする印象です。

その他には、手すりの工夫や滑りにくい床など、身体が弱い人でも入りやすい工夫が目立つくらいでしょうか。

全般にこれまで見てきた他メーカに比べて、機能・性能面では見るべきものは無い印象です。

 

6.タカラスタンダード

次はタカラスタンダードです。ラインナップはプレデンシア、レラージュ、エメロード、ミーナと、戸建て住宅用だけで4つもあります。それにしてもカタログ価格が、一番高いプレデンシアは1,038,000円から、一番安いミーナは379,000円からと、3倍近く違うのは驚きです。

 

特徴は何と言っても鋳物ホーロー浴槽。以前ショールーム見学の時に書いたので繰り返しませんが、質感や肌触りなどの素材感で言えばこれが最良でしょう。勿論、浴槽の素材感だけで決めるわけではないですし、それ以外の特長が弱いのも否めないところです。

 

7.ハウステック

最後はハウステックです。システムキッチンを作っているのは知っていましたが、ユニットバスも作っていたんですね。戸建て向けのラインナップはフェリテプラスとフェリテです。

 

ここの最大の特徴は、軟水器を装備していることです。水に溶け込んでいるミネラルを除去する装置があるということです。ミネラル分を無くすと洗剤の泡立ちが良くなり洗浄力が上がるほか、石鹸かすが出難くなり浴室が汚れ難くなるという理屈です。

日本に比べて水道水が硬水のヨーロッパなどでは、洗濯機に軟水器が付いていたりするそうですが、日本の水道水も軟水装置を通せばより良くなるというわけ。その昔、日立が洗濯機に付けたこともあります(食塩を入れる洗濯機と言えば知っている人も居るかも)。

他にも、浴槽の壁を39cmと低くしてまたぎ易くするなど、独自視点での開発をやっていることが伺えます。

 

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全般的に、TOTOLIXILに比べると機能・性能が見劣りする点が増えてきます。全部入りではなく一点集中型という印象でしょうか。タカラスタンダードの鋳物ホーロー浴槽や、ハウステックの軟水器などです。

 

-其の四に続く-

 

ユニットバスを選んでみる-其の弐-

-其の壱から続く-

 

2.LIXIL

二番手はLIXILです。ユニットバスのラインナップはスパージュとアライズの2つです(集合住宅用やリフォーム用モデルは除外)。

特長を見てみます。

 

(1)アクアフィール(スパージュのみ)

TOTOに同じ様な機能がありますが、LIXILが本家。TOTOには無い肩ほぐし湯に相当する機能は、先達の意地でしょうか。お値段229,000円也(カタログの定価)。欲しいけど高いな。

 

(2)掃除が簡単

おそうじ浴槽はTOTOにもあった自動で浴槽を洗ってくれる機能。これはスパージュのみです。その他は自動おそうじではなく、汚れが付きにくい素材にしてあるとか、掃除が楽に出来る工夫と言った項目です。

TOTOの床ワイパー洗浄には一歩劣りますが、おそうじ浴槽(199,000円)だけでも欲しいところ。但しその為には上位機種のスパージュにしないといけないので、その点でもTOTOに分があります。

 

(3)くつろぎを育む、こだわりの空間(スパージュのみ)

ウェブ・サイトの記載をそのまま節タイトルにしましたが、LIXILに限らずお風呂の宣伝ってこういうのが多いですね。感性品質と言いますが、数値で比較しにくい項目を訴求する手法です。数値の優劣の様な単純比較が出来ないので、上手くやれば価格競争になり難いなどと言われます。ウェブ・サイトでは、実はこの項目が先頭に来ています。アクアフィールよりも前。一番訴求したいのはこれだと言うことです。

実際にやっているのは浴室・浴槽の素材の質感向上だったり、デザインだったり。特にグランフロアと名付けられた、フローリングの様な見た目の浴室床は面白いです。これは確かに風呂場の印象を大きく変えてくれます。

ただ、我が家では風呂にこういうのを求めないんですよね。良いなと思わないではないですが、それに積極的にお金をかけるかと言われると否。

 

(4)幅広の浴槽

我が家では、相方の希望で一回り大きい1.25坪タイプのユニットバスを使う予定です。折角浴室が広いので、できれば浴槽も大きめのものにしたいなと思っています。

ただ、TOTOの場合は幅広浴槽と言っても上部しか広くなく、しかも左右不均等に広がっているので、寸法だけ広くてもあまりゆったり感にはつながらない印象でした。

一方、LIXILの幅広浴槽は底まで広く、その為左右均等に広々した感じを味わえます。これはいいですね。LIXILを選ぶなら幅広浴槽にしたいです。

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(5)オーバーヘッドシャワー(スパージュのみ)

頭上から垂直に落ちてくるタイプのシャワーです。グレードによって仕様が違うので単純なオプション価格は出し難いのですが、少なくとも24万円以上の差額になる様です。どのメーカもオーバーヘッドシャワーは高いですね。これではとても手が出ません。

 

(6)洗濯用ふろ水利用配管

TOTOと同じ機能です。オプション価格は55,000円。LIXILもおそうじ浴槽との同時選択は出来ない様で、我が家では選ばないことになります。

 

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LIXILTOTOに次いで機能盛りだくさん、全部入り系の商品という印象です。

私の重要度でTOTOとの比較で言うと、おそうじ浴槽は両方にあってイーブン、床ワイパー洗浄でTOTOが一歩リード、一方幅広浴槽が選べる点でLIXILが一歩リード、というところでしょうか。有力候補の一角です。

 

-其の参に続く-

 

ユニットバスを選んでみる-其の壱-

タラレバ住設選定シリーズ。今度はユニットバスを選んでみます。

ネット検索で見つけた各メーカの特長をウェブ・サイトで確認して、もしも今選ぶなら、を考えてみます。

先ずは各社の特徴把握です。あくまでも私にとって重要度が高い項目を優先して確認しているので、世間の平均的な評価とは違っていると思いますが。

 

1.TOTO

まず一番手はTOTOです。TOTOがシステムキッチンを作っていることに驚いたのはもう10年前のこと。もはや昔話になってしまいました。そして今ではユニットバスでも業界でそれなりのポジションを占めているようです。

ユニットバスのラインナップはSYNLAとsazanaの2つ。

特長はざっと下記です。

 

(1)おそうじ浴槽床ワイパー洗浄

家族全員ズボラで怠惰な我が家では、「掃除をさぼれる」のは大変に魅力的です。去年までは上位機種であるSYNLAだけの機能だったと記憶するのですが、2021年8月の新モデルからはsazanaでも選べるようになりました。

おそうじ浴槽は144,200~154,700円(カタログ記載の定価)、床ワイパー洗浄は62,700円(同)です。ややお高いですが、我が家でTOTOを選ぶなら絶対付けるオプションです。

ところで、おそうじ浴槽はTOTOオリジナルではなく、ノーリツが開発して他社にライセンスしているもののようです。今回調べた中では、LIXIL、トクラスなどもおそうじ浴槽を採用していました。一方、床ワイパー洗浄はTOTOオリジナルの様です。

 

(2)楽湯(SYNLAのみ)

肩と腰に水流を当てて心地良い入浴を実現するもの。こう言っては何ですが、LIXILの真似ですね。この機能があるのは今のところTOTOLIXILだけです。

肩湯は気持ちよさそうですが、ちょっと贅沢品かなぁ(定価で211,000円)。

 

(3)ファーストクラス浴槽ゆるリラ浴槽

SYNLAは全てファーストクラス浴槽ですが、sazanaは複数ある浴槽の1つがゆるリラ浴槽です。どちらも人間工学に基づいたリラックスできる形状とのことですが、どのくらい良いのかはショールームで実際に入ってみるしかないでしょうね。

ファーストクラス浴槽は人工大理石(アクリルウレタン樹脂)仕様が標準で、2021年8月の新モデルからはsazanaでもオプションながら人工大理石が選べるようになりました(差額は125,400~135,900円)。多分、表面の汚れを落ち易くしておそうじ浴槽の効果を十分発揮できるようにするためのオプションでしょう。

 

(4)つながる快適セット

スマホで操作できる機能です。TOTOではスマートスピーカーにも対応していて、声でもお湯はりやおそうじ浴槽や床ワイパー洗浄を起動することが出来ます(33,000~42,000円)。

家の外から浴室暖房とお湯はりをすれば、帰宅して直ぐに暖かいお風呂に入れますよ、ということなんですが、緑の家にするつもりの我が家には浴室暖房は不要だし、自動洗浄は、湯はり前じゃなく風呂から出たときにボタン押せばいいので、わざわざAlexaに頼む意味が見いだせません(そもそもスマートスピーカー使ってないし)。

辛うじて帰宅前のお湯はりは多少有り難く感じそうですが、それだけなら給湯器にもその機能はあります。ユニットバス側に設ける必然性が欲しいところです。

 

(5)ノコリ~ユECO

これも以前はSYNLAのみでしたが、今ではsazanaでも選べるようになりました。ただ、取り合いの制約でおそうじ浴槽との同時選択が出来ません。かつてはこの機能が欲しくてユニットバスを調べ始めたくらいだったのですが、今となってはおそうじ浴槽の方がずっと重要なので、TOTOを選んでもこのオプションを選ぶことはありません。我が家は随分前からドラム式洗濯機なのでそもそも使用水量が少なく、残り湯を汲み上げても大した節水にはならない状況になってしまいましたし。

 

(6)エアインオーバーヘッドシャワー

要するに真上から落ちてくるシャワーのことです。シャワーヘッドを壁のフックに引っかけて浴びる普通のシャワーは斜め上から水がやってきますが、これは重力に引かれて、ただ上から落ちてきます。たったそれだけの違いなのですが、これ、想像以上に浴び心地が違って気持ちいいんですよね。海外のホテルに泊まったときにたまたま部屋の浴室に付いていて使ったことがあります。

とは言え、293,300円(SYNLA)のオプション価格はいくら何でも高すぎます。3万円くらいだったら付けますけど。それと、sazanaでのオプション価格が102,400円と、3倍近く違うのも理解を超えています。ウォームピラーモードの有無という仕様の違いはあるんですけど、それでこんなに違うのは何故なんでしょう?

ちょっとだけ欲しいけど、この価格では付ける気になれないです。残念ながら。

 

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他にも、浴室や浴槽が断熱されていてお湯が冷めないとか足が冷たくないなどの特長もウェブ・サイトにはありますが、今時は他社でも同じなのでわざわざ取り上げるほどではありません。

 

TOTOの全体的な印象としては、そつが無い「全部入り」のメーカ、といったところでしょうか。

特におそうじ機能は私にとって魅力的で、有力な候補です。

 

-其の弐に続く-

 

アイランドキッチン風前の灯火か

幅240cmのキッチンでもOKのアイディアを思いついたのでアイランド型に出来る、めでたしめでたし。と書いたのはもう2年前。月日の経つのは早いものです。

で、それを可能にするグリルレスのIHコンロとして三菱のEURO STYLE IHという機種を選定したのですが、今になってたまたま三菱のウェブ・サイトを見たところ、不穏な雰囲気を感じました。EURO STYLE IHは近々廃盤になるかも知れません。

と言うのも、三菱IHの商品一覧のページからEURO STYLE IHが消えているのです。リンクをどう辿ってもEURO STYLE IHの商品ページにたどり着けません。

EURO STYLE IHの商品ページのURLを直接クリックすると商品ページ自体は存在しているし、廃盤になった様な記載もないのですが、経験的に、こういう扱いをされる場合、遠からずその商品は廃盤になると相場は決まっています。

 

いやはや残念です。折角見つけたグリルレスIHコンロが使えなくなるとは(確定していませんけど)。バックアップとして考えていたAEGの寸法互換品を本命として考えないといけなくなりそうです。

とは言え、良く考えると、寸法互換品が重要だったのは、最初に三菱のEURO STYLE IHを使うつもりだったからです。数年後、それが壊れた時に三菱が後継機種を作っていなかったら、寸法互換品が必要になるからです。最初が三菱でないなら、三菱の(国内メーカ標準の)寸法にこだわる必要は無くなります。

価格が高いことと寸法が国内メーカ標準とは違うことに目をつぶれば、AEG以外にもグリルレスIHコンロを出している海外メーカはあります。(と言うか、海外メーカ製で、国内メーカの様な魚焼きグリルを装備しているものはありません。魚はオーブンで焼くからでしょうね。)

と言うわけで、次は海外メーカ製のグリルレスIHコンロの選定をする必要が出てきそうです。もっとも、EURO STYLE IHの廃盤が確定したわけではありませんけど。

蓄電池あれこれ

蓄電池の導入検討について書いたので、ついでに蓄電池がらみのネタを少々書いておきます。

 

1.材料系と寿命

今市販されている家庭用の蓄電池は全てリチウムイオン電池ですが、実は一口にリチウムイオン電池と言っても、材料の細かい違いでいくつか種類があります。NMC系(三元系)、リン酸鉄リチウム系、チタン酸リチウム系など。そしてその材料系の違いで容量や寿命が結構違います。

 

家庭用の蓄電池で最も広く使われているのはリン酸鉄リチウム系です。前回、候補に挙げた4機種は全てこのタイプです。

最大の特長は安全性の高さ。材料の結晶構造が安定なので、充放電で化学反応を繰り返しても変質し難く不安全になり難いのだとか。

但し、時々ネットニュースに出てくる「中国製の電気自動車が火事になりました」の記事に出てくる中国製電池のほとんどはリン酸鉄リチウム系です。原理的に(他の方式と比較して)安全性が高い、と言っても、実際の製品の安全性がどの程度であるかはまた別問題と言うことです。

また、安全性が高いのと同じ理由で寿命も長いです。充放電で材料が変質し難いということは、劣化し難いということでもあるからです。製品によっては12,000回の充放電寿命を謳うものも有ります。これは1日1回の充放電だとすると32年以上に相当します。 これくらい持てば十分でしょう。

但しNMC系などに比べると容量が小さめで、同じ容量にしようとすると体積・重さが大きくなってしまうのが欠点。とは言え、定置用なら致命的な欠点ではありません。

今後も当分の間、家庭用の蓄電池はリン酸鉄リチウム系が主流になりそうです。

 

但し、以前も書いた電気自動車の中古蓄電池をリユースする方法がもしも一般的になったら、話は変わってきます。電気自動車には容量が大きく出来ることが特長のNMC系が良く使われているからです。

これは実際に4Rエナジー(フォーアールエナジー)と言う企業が事業化しています。広く市場に出回るのはこれからですが、寿命がどうなのか、少々気になります。

 

2.自動車用の蓄電池は意外に寿命短い

自動車用というと、とにかく信頼性命、みたいなイメージがあります。そのイメージは決して間違いではないのですが、「だから電気自動車やハイブリッドカーの蓄電池も寿命が長いに違いない」と思うと、実はイメージほどではありません。

 

電気自動車の蓄電池の寿命はどのくらいでしょうか。何回くらい充電できるのでしょうか。

実は蓄電池には「どうなったら寿命と見做すか」という業界共通のルールが存在しません。なので、「何回充電したら寿命か?」も明確には言えません。ただ、ここでは寿命の正確な定義は横に置いておきます。

リチウムイオン電池の寿命は使い方で全く違ってきます。

(a) 100%(満充電) → 0%(完全放電) → 100%(満充電)

(b) 100%(満充電) → 80%(ちょっとだけ使った) → 100%(満充電)

上記はどちらも「充放電1回」ではありますが、寿命に与える影響は全く異なります。(b)の方が遥かに劣化が少ないのです。なので、回数だけで単純に論じるのは難しいのですが、ここでは(a)の様な使い方を前提に寿命を考えてみます。何故かというと、一般的にカタログに書かれる蓄電池の充放電寿命は(a)の使い方を前提にしていることが多いからです。

 

ここでは電気自動車の代表選手として日産リーフに登場願います。標準タイプのバッテリー容量は40kWh。電費はネットのユーザ情報から6km/kWhとします。すると1回の充電で240km走れることになります。ちなみにリーフe+だと62kWhなので、充電1回で372kmです。

一方、車って寿命(廃車)までにどのくらい走行するかというと、おおよそ10万km(1年に1万km走り、10年で廃車とする)という所でしょう。(電気自動車だから、ではなく、家庭用の乗用車一般の話として。)とすると、標準リーフで廃車までに417回の充電が出来れば足りることになります。リーフe+だと269回です。「今時10年じゃ廃車にしないでしょ」とか、「バッテリーが弱ってくると距離が伸びなくなるから充電回数は増える」などの突っ込みはあるでしょう。それを考慮して3倍のマージンを持たせたとしても、806~1250回くらいの充電回数に耐えられれば十分となります。

 

ここでスマホのバッテリーと比較してみます。スマホは1日1回の充電として1年で365回の充電です。多くの人は2~3年は使うでしょうから、寿命までに730~1,095回の充電が出来れば十分です。今時は1日2回充電する人も珍しくないとすれば、1,460~2,190回の充電に対応できる必要があります。

この様に考えてみると、電気自動車の蓄電池に必要な充電寿命は、スマホと同程度かむしろ少ないくらいで十分足りてしまうのです。意外に大したことないですよね。

蓄電池に限りませんが、自動車は使わないときも屋外に置かれていますから、温度変化などの周囲の環境に対する耐久性の要求は極めて厳しいです。この意味で、自動車用蓄電池の信頼性は非常に高いものがあります。ここで「大したことない」と書いているのは、あくまでも「充放電の回数に関する耐久性」に限った話です。

 一方、家庭用の蓄電池は1日1回の充電としても、20年使えるためには7,300回の充電寿命が必要です。自動車用に比べて(勿論スマホ用に比べても)段違いに高い耐久性が必要になるのです。

 

3.テスラはどうよ?

数年前に、テスラが極めて安価な家庭用蓄電池Powerwallを発売しましたが、実はこの製品、日本では発売されませんでした。

で、最近になってPowerwall2という後継モデルを発売しました。初代Powerwallが発売されていなかった日本では、この"2"の方をPowerwallという名称で発売することにしたそうです。容量は13.5kWh、価格は工事費別で99万円+税です。

初代モデルは日本で未発売ですが、あえて価格比較をしてみます。初代は「10kWhで42万円(当時の為替レート)」だったので、「13.5kWhで99万円」の後継機種は大幅値上げに見えます。しかし両者は仕様が違っていて、初代は蓄電池のみ、後継モデルはパワコン一体型なのです。それを加味すると、「ちょっと値上げ」くらいが妥当な評価でしょう。それでも「6年も経つのに安くならないどころか値上げとはどういうことだ」と文句の1つも言いたくはなります。とは言え、これでも家庭用蓄電池の価格としては破格に安いのですよね。工事費込みの価格でも日本メーカのものに比べて3割引くらいですから。

テスラとしては、本業の自動車が好調なので、蓄電池を安く売る理由が無くなったのでしょう(6年前は自動車の生産台数があまり増やせず、蓄電池が余り気味だったのではないかと)。

 

さて、価格では(初代モデルよりも値上げされたとは言え)圧倒的に優位なPowerwallですが、気になるのは前章で述べた寿命の話です。と言うのも、Powerwallは電気自動車用のバッテリーを家庭用に仕立て直した物です。充電回数寿命は1,000回くらいあれば十分な自動車用の品質しか持っていないと考えるのが妥当です。これでは3年も持ちません。何の工夫も無く家庭用に供給しているとは思えませんが、大丈夫なのかどうか不安は拭えないなと言うのが私の正直な印象です。

容量は13.5kWhと大きいし、出力も連続で5kW、ピーク(短時間)では7kWまで出せるので、オール電化でも安心です。勿論全負荷型です。このスペックと価格だけ見ると実に魅力的なんですが、私自身は今すぐ手を出すのは避けたいなと思っています。人柱の皆さんが導入して、問題なく使えそうという実績がでてきたら候補に入れようかと。

 

4.価格イメージってどうなった?

以前、将来このくらいの価格になることを期待したいてな話を書きました。あれから6年経って、今の価格は当時の予想に対してどうなったかと言うと、、、

 

太陽光発電は20万円/kWhという期待値に肉薄してきました。太陽光発電の電力買い取り価格を審議している委員会の報告書を読むと、住宅用太陽光発電の設置費用は新築の場合で、平均28.6万円/kWhとの調査結果なので、正確にはまだ届いていません。しかしこの調査でも安い方から上位20%のケースでは既に20万円/kWhに届いているようですから、平均値で20万円/kWhになるのも数年以内というところではないでしょうか。

ゴール(私が勝手に決めたゴールですが)にほぼ到達です。

 

蓄電池とそのインバータ(パワコン)はまだまだです。今の蓄電池はほとんどがインバータとセット売りなので、合計価格で見てみます。6年前は「20kWhで70万円(40万円+30万円)を期待」とか言ってましたが、現実には前回書いた通り、12kWhで250万円程度です。容量あたりではまだ6倍近く違います。テスラのPowerwallですら13.5kWhで150万円(工事費込み価格の一例)なので容量あたり3倍くらい違います。こちらはゴールにはほど遠いです。

しかし当時は完全オフグリッドの為には20kWhとか言っていたわけで、それは非現実的と諦めた今となっては10kWhもあれば十分と思います(この部分の妥当性検討は別途やってみたいところ)。容量単価が3~6倍高くても、必要な容量を以前の検討時の半分で良いと割り切るなら、価格のギャップは縮まります。とは言え当時の期待値70万円に対してテスラのPowerwallでも150万円(工事費込み)と2倍強のギャップは残ります(寿命の不安は横に置いて)。ゴールは遠いです。

蓄電池に関してはパワコン(インバータ)一体型の商品がデビューして家庭で実際に使える様になった点が最大の進歩ですね。価格の話はまだまだこれからです。

 

現時点の結論として、価格は6年前の期待に対してまだまだ遠いです。導入するなら相当に割高な(つまり金銭的に元は取れない)ことを覚悟せねばならないようです。

私自身はもうちょっと要検討ですね。

 

蓄電池の導入を考えてみる-後編-

-中編から続く-

 

6.候補になる機種はどれか

ここまでの考察をまとめると、

  • 10kWh程度又はそれ以上の容量
  • 5kW以上の出力
  • ハイブリッド型又は停電時に太陽光発電の能力を使い切れるタイプの単機能型
  • ハイブリッド型の場合、太陽光発電のパワコンとしての能力は6~8kW程度

というあたりのものが候補になります。条件を満たす物を探してみました。

 

ESS-H2L1(ニチコン)

ニチコンは家庭用蓄電池の大手メーカで、ラインナップも豊富ですが、ハイブリッド型はこの機種だけです(正確にはこのモデルの1つ前モデルであるESS-H1L1/L2がまだ販売されていますが)。勿論、全負荷型です。

容量は12kWhと十分、蓄電池の出力も5.9kWとなかなかのもの。また太陽光発電のパワコンとしての能力は5.9kWで、ちょっと足りないかなどうかな、くらいです。

保証が15年と長いのも特長です。

価格は、1つ古い型番であるESS-H1L1のものになりますが、業者紹介サイトであるソーラーパートナーズによると、実勢価格は250万円程度とのこと。ハイブリッド型なので太陽光発電のパワコンは不要です。それを加味すると後で出てくる単機能型と比較する際は20~30万円差し引いた220~230万円くらいとみておくのが妥当でしょう。

 

EIBS7(田淵電機)

この機種も全負荷型のハイブリッド型ですが、特徴はパワコン部が蓄電池本体とは別筐体になっていること。パワコン部と蓄電池部の組み合わせで性能にバリエーションを持たせられます。

蓄電池の容量は7.04kWhで、今回見つけた他のモデルに比べるとやや小さめ。但し蓄電池は2台まで接続できる仕様になっていて、2台なら14.1kWhとかなりの大容量になります(価格が凄いことになりそうですが)。

パワコン部は太陽光発電のパワコンとしての能力の違いで3機種がラインナップ。5.5kW品、8kW品、9.9kW品の3種類から選べます。それ以外の仕様は3機種とも同じ。蓄電池の出力は5.5kWで、これもまずまずです。

ソーラーパートナーズによると、5.5kW/7.04kWhの組み合わせの場合で実勢価格は237万円程度とのこと。これも単機能型と比較するなら207~217万円くらいとみるべきでしょう。蓄電池の容量の差からすると、ニチコンの方がややお買い得な気もしますが、パワコンの能力を大きくしたい場合はニチコンではダメなのでEIBS7が魅力的になります。

これも保証は15年と長期です。

 

iedenchi-Hybrid(ネクストエナジー)

これも全負荷型のハイブリッド型です。蓄電池本体とパワコンが別筐体になっている点は田淵電機のEIBS7と同じですが、こちらは仕様のバリエーションは無く、蓄電池は1台のみ、パワコンも1種類のみです。

蓄電池の容量は10.24kWhと十分ですが、蓄電池出力は3kWとやや小さく、実はこの点で条件を満たしていません。

保証は10年と標準的。

価格情報は見つけられませんでしたが、同じネクスエナジーiedenchi-NXは実勢価格187万円程度のようです。但しiedenchi-NXは単機能型なので、ハイブリッド型であるiedenchi-Hybridはそれより20~30万円程度高いと考えるのが妥当でしょう。

 

スマートスターL(伊藤忠商事)

これは全負荷型の単機能型ですが、停電時にも太陽光発電の能力を目一杯使える特殊仕様のもの。知名度はナンバーワンだとか何とか。

蓄電池の容量は9.8kWhと十分ですが、蓄電池出力は3kWとこれもやや小さめ。この機種も厳密には条件を満たしていません。

保証は10年で標準的です。

実勢価格は193万円程度の模様

上で出てきたネクスエナジーのiedenchi-NXや、DMMの蓄電池と同じものだそうです。サービスなど細かい点で違いはあるようですが、基本性能は同じ。

 

7.今選ぶならESS-H2L1(ニチコン

今回は4機種をノミネートしました。世の中にある機種を全て調査できたわけではないので、もしかしたら調査から漏れた物の中に良いものがあるかも知れませんが、それはここでは無視しましょう。きりが無いので。

その上で、どれかを選ぶとなると、ESS-H2L1(ニチコン)かEIBS7(田淵電機)が有力ですね。iedenchi-HybridとスマートスターLは蓄電池出力が3kWと低いので、太陽光発電が動いていない夜間は、電力会社から電力を買うことがどうしても多くなってしまいます。また、停電時には3kWを超えない様におっかなびっくり生活せねばなりません。勿論、欲を言えばきりが無いので妥協も必要ですが、性能で妥協しないといけない割に、価格はニチコンやEIBS7と比べてびっくりするほど安いわけでもありません(20~30万円程度の価格差をどう解釈するかは色々あるでしょうが、私はそう大きな差では無いと感じました)。なのでiedenchi-HybridとスマートスターLは落選。

 

ニチコンとEIBS7のどちらが良いかは難しいところ。パワコンの能力を選びたければEIBS7しかありませんが、我が家の屋根にはベストケースでも8.55kWしか載りません。「何が何でもEIBS7」という必要性は低そうです。

そう考えると、蓄電池の容量の差(12kWhと7.04kWh)と価格の差でニチコンが断然魅力的になります。

と言うわけで、我が家の蓄電池はESS-H2L1(ニチコン)で決まりです。もっとも、今選ぶなら、であって、来年になるとまた各社から新しいモデルが出ているかも知れません。そうあって欲しいものです。