自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

高気密健康住宅研究所

ネットサーフィンしていて、また1つ勉強になるサイトを見つけました。
高気密健康住宅研究所(2020/04/19注:鵜野さんがお亡くなりになったためと思いますが、ウェブ・サイトは閉鎖されました)と言います。名前はちょっと胡散臭い感じですが、書いてある内容は至極まともです。

鵜野日出男さんとおっしゃるこの方の出自がよく分からないのですが、どうやらかつてはどこかの工務店に所属して、家をたくさん建てていた方のようです。今現在の立場がよく分かりませんが、コンサルタントでしょうか?
北米やヨーロッパなどにも何度も視察に言っているらしく、「この部分は日本が大きく負けている。これじゃいかん」などと、一介の工務店では出ない発想で色々なことに取り組まれている様子。
ウェブ・サイトの内容は、定性的には今まで見聞きし、自分でも考えてきたことと整合しているので、全く新しい発見というのはありませんが、それでも個々の内容については勉強になります。さすがに現場で苦労されてきた方の言葉は重いと感じずにいられません。特にサッシの性能に関する記述にはうなずかされることしきり。私も以前、窓業界の閉鎖性を非難したことがあるだけに、「おお、専門家にも同じ意見の人が居たわい」と嬉しくなってしまいました。

さて、このウェブ・サイトはあまり内容が系統立っておらず、片っ端から読んでみるしかないのが玉に瑕なのですが、それでも1つだけ面白いコンテントを挙げるとするなら、パッシブハウスS邸の挑戦でしょうかね。
これはとある施主さんのご自宅建築の経緯をまとめたものなのですが、断熱計画、空調計画に始まって、実際の施工におけるこだわりなど、なかなか読み応えのあるドキュメントになっています。分量が多いので、全部読むのは大変ですけど。
中でも目に留まったのが、セントラル空調システムの一部として採用した換気システムのくだり。これ、X社がダイキンに仕様書発注して作らせたX社オリジナルのもので、それを無理を言ってX社とは無関係のS邸に使わせてもらえることになった、と言うのですが、これがどこからどう見ても、一条工務店のロスガード。ロスガードは間違いなくダイキン製ですし、全熱交換タイプで、交換効率90%で、バイパス機能が付いているなど、間違いありません。
この記事によると、使わせてもらう代わりに、セントラル空調システムの一部として稼働させたデータをまるごと一条工務店に提供する約束だそうですから、一条工務店はS邸のセントラル空調システムの稼働データを(何年分か知りませんが)入手していることになります。もしかしたら、一条工務店の次世代の夢の家には、その成果が反映されるのかも知れません。期待したいところです。とは言え、全館床暖房というキャッチフレーズをそう簡単に止められないでしょうから、宣伝戦略的には難しいところでしょうけど。(私自身は、FASの家の体験宿泊を通じて、「十分な断熱・気密があれば床暖房がなくても特に問題ない」ことを体感済みなので、暖房にしか効力のない床暖房よりは、冷房も出来るセントラル空調システムの方が魅力的に感じますが。)

もう一つ興味深いのは、鵜野氏はかなりの断熱重視派ということです。寒冷地でQ値が0.6~0.8、関東以西でも0.8~1.0にすべしという主張は、高性能住宅を建てている人の中にもなかなか見られません。しかも、鵜野氏にとってはこれは通過点に過ぎないようで、「次はパッシブハウスと言えるQ値0.5~0.6」、「更にその先は無暖房住宅であるQ値0.2~0.3」だとか。ドイツやスウェーデンなど、断熱先進国の動向を踏まえた上でのものらしいのですが、ちょっと極端な気がします。
以前紹介した日本外断熱総合研究所(2020/04/19注:サイト主が転職したのか、ウェブサイトが全く別の個人ブログの様な内容に変わっています)は、「Q値1.0~1.5あたりを境にして、Q値が小さくなればなるほど冷房の費用が上昇する」と試算していました。これは私には納得できる結論です。それを踏まえると、Q値0.6だの0.3だのになると、暖房費用は要らないけど冷房費用がかさんで仕方がないというオチになる気がしてなりません。もしもそうなら、年間の空調費はプラスマイナスゼロ、という可能性もあるわけで、断熱に金をかけただけ損になってしまいます。(鵜野氏自身、ブログでそれを気にした記述が一カ所だけありました。)
このあたりは、未だ業界でも統一した見解には至っていないのかも知れません。Q値が1.0を下回る住宅自体が、日本にはほとんどありませんから、誰もそういう困難に直面していないのでしょう。もしかしたら、i-cube(Q値0.76)を擁する一条工務店が、何か新しい取り組みをしてくるかも知れません。
うーん、こうしてみると、一条工務店ってさすがですな。全国展開しているメーカの中ではやはりぴかいちでしょう。(それだけにデザインの画一性が‥‥。)

ともかく、このウェブ・サイトを読んで、窓の遮熱のあり方とか、Q値の最適値など、考えさせられることがいくつか出てきました。いろいろ計算もしてみたいのですが、今までと違ってかなり手間のかかる計算になりそうで、どうしたものかな。