自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

地中熱の利用-中編-

-前編から続く-

4.ジオパワーの懸念点

パッシブ方式中でも、ジオパワーについてはもう一つ懸念があります。これは心配しているだけで、実際に問題があるのかどうか、ちゃんと確認していないので分からないという意味です。自宅への採用を本気で考える様になったらメーカに訊こうと思っていますが、今はちょっと面倒くさくて‥‥。

ジオパワーの説明図を見ると、夏の外気はジオパイプという名称の太いパイプ(TV番組で見たものは直径30cmくらいあるように見えました)で地中に送り込まれ、地中の温度に馴染むことで15~18℃程度に冷やされるわけです。このとき、夏の外気だと、かなりの湿気を含んでいますから、15℃まで冷やせば結露します。ジオパイプの中で結露するのですから、結露水はパイプの中に溜まります。

はて、この結露水はどこに行くのかしらん?

以前、おおざっぱな計算をしましたが、全熱交換をしない場合、換気によって夏の間の3ヶ月(7~9月)に室内に入ってくる余分な湿気は1.85トンにもなります。ジオパワーの場合、ジオパイプで冷却して除湿するので、この余分な湿気のうち、少なからぬ部分はジオパイプ内で結露することになります。1.85トンの内、どの程度がジオパイプ内で結露するのかは計算が面倒なので省略して、ざっと半分だと考えてみると、0.92トンです。920リットルです。
このままでは、一夏でパイプから溢れるほどの結露水が発生することになります。これではパイプとして機能しなくなりますから、何らかの対策が取られているのでしょうが、一体どうやっているのでしょうか? パイプから周囲の土壌にしみ出させて吸収させているのではないかと思われますが、副作用は無いのかどうか‥‥。

また、溜まった水を徐々に排出する機構はあるとしても、常にパイプの中が湿気っているということは、そこはカビの温床になる可能性があるということです(屋外からカビ菌はやってくるでしょうし)。だとすると、取り入れた外気は、ジオパイプで冷やされると同時にカビの胞子をたっぷり含んでから室内に導入されることになるわけで、それはあまり想像したくない図です。
何らかの対策が施されていると思いたいところですが、さて、本当のところはどうなっているのでしょうかね?

 

5.アクティブ利用形態

ちょっと小難しい印象ですが、アクティブ利用とはヒートポンプと組み合わせて使う形態のことです。

ヒートポンプは「熱を移動させる」ことで冷暖房を行います。
例えば夏なら、25℃の室内から35℃の屋外に向けて、熱を移動させます。普通なら熱は高い方から低い方に流れますが、それに逆らって熱を「汲み上げる」からヒートポンプ(熱のポンプ)と呼びます。冬は逆方向で、0℃の屋外から20度の室内に向けて熱を移動させます。
熱を移動させる為に電力を使いますが、使った電力に比べてどの程度の熱を運べたかというのがヒートポンプの性能を表す指標で、COPと言います。この数字が大きいほど高性能です。
肝心なのは、「室温と外気温の温度差によってCOPは変わる」と言うことです。先ほどの例で言うと、夏は10℃の温度差に逆らって熱を運びますが、冬は20℃の温度差に逆らって熱を運ばねばなりません。この場合、冬の暖房の方がCOPは小さく(悪く)なります。

で、いよいよ地中熱の出番です。

冬の場合、0℃の外気から20℃の室内に向けて熱を移動させるのですから、20℃の温度差に逆らわねばなりません。しかし、熱を移動させる元を外気ではなく、大地にしたらどうなるかと言うと、15~18℃の大地から20℃の室内に向けて、僅か数℃の温度差を逆流するだけで済みます。この場合、COPは非常に大きな(良い)値になります。(2倍くらいに改善した様な気がしますが、データを見つけられません。仮に2倍とすると、同じ暖房効果を得ながら、消費電力は半分に出来ます。)
夏に至っては、25℃の室内から15~18℃の大地に向けて熱を移動させるので、熱を「逆流」させるどころか、放っておいても熱が移動します。COPは跳ね上がります(これも具体的な数値が見つけられませんでした)。

「逆流」させねばならない温度差が大きいと効率がかなり下がるのがヒートポンプの弱点で、これが寒冷地でエアコン暖房があまり使われない最大の理由です。室温が20℃で外気が-20℃だと、40℃もの温度差を逆流させねばならないので、COPが小さくなる(悪化する)のも無理からぬところです。
しかし、相手が外気ではなく大地なら、前述の通り状況は大きく変わります。つまり、地中熱ヒートポンプは寒冷地であるほど御利益が大きいシステムと言えるでしょう。

LIXILのウェブ・サイトで割と分かり易い動画を見つけたので、興味がある方はどうぞ。
エアコンで言う「室外機」はファンを回して外気との熱交換を行っていますが、地中熱ヒートポンプの場合は、室外機に不凍液などの液体が入っており、これが熱交換する相手です。熱を受け取った(又は奪われた)液体はパイプを通って地中深くに入っていき、そこで大地の温度に馴染んでから再び戻ってきます。

 

6.アクティブ利用形態の利点と欠点

アクティブな地中熱利用は、一言で言うと「夏でも冬でも効率が高いエアコン」です。それを踏まえると、利点は以下のように纏められます。

  • 基本は機械による冷暖房なので、パッシブと違って冬の暖房に対しても補助設備は要らない。冷暖房を完全にこれだけでカバーできる。
  • 同じ原理で湯沸かしも可能(全ての地中熱ヒートポンプシステムが湯沸かし機能を持っているわけではない)。
  • 普通のエアコンと違って室外機が静か(らしい。普通のエアコンは外気と熱交換を行うので常時ファンが回っているが、地中熱ヒートポンプの場合、不凍液との熱交換なのでファンを回す必要がない)。

一方、欠点は下記です。

  • とにかく初期費用が高い。穴掘りに100万円以上かかる。それに専用の機器を加えると、込み込みで300万弱が相場。

基本的には「元が取れない」みたいですね。勿論、寒冷地で冬の間は給湯も含めて灯油代が毎月何万円もかかる様な土地柄であれば、10年くらいで元が取れるかも知れません。

ちなみに、地中熱ヒートポンプが最も普及しているのはアメリカらしいのですが、その最大の理由は「アメリカでは穴掘りコストが安い」事にあるようです。日本の1/5~1/10くらいらしいです。穴掘りが10万円であれば、専用のヒートポンプ機器が多少高くても、数年で元は取れるでしょう。寒冷地ならもっと早いでしょうね。

とにかく、地中熱ヒートポンプに携わっている人たちがやるべき事は、「どうやって穴掘りコストを一桁下げるか」です。それが出来れば、地中熱ヒートポンプは大きく普及するでしょう。普及すれば専用機器の価格もぐっと下がって、普通のエコキュートと同じくらいには出来るでしょうから、ますます普及に拍車がかかります。
実際、そういう試みも行われているようです。とは言え、まだまだ時間はかかるかな。

-後編に続く-