自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

ダイキン「DESICA(デシカ)」の動作原理

先日、ダイキンのDESICAという除加湿換気設備についてちょっとだけ触れましたが、これの動作原理がイマイチ分かりにくいので、自分の頭を整理する意味で、どういう仕組みで除湿・加湿を実現しているのかをまとめてみます。

1.デシカント方式で空気中の湿度を吸収する

DESICAはいわゆる「デシカント方式」に分類される原理で動作しています。デシカント方式とは、デシカント、すなわち乾燥剤を使った除湿機能のことで、家庭用の除湿器でもこの方式のものがあります。
乾燥剤ですから、湿気を含んだ空気を触れさせれば空気中の湿気を吸収して、空気は乾燥します。除湿器の場合、乾燥剤に湿気を吸収させたら、次はその湿気を乾燥剤から分離しなければなりません。吸いっ放しだと、乾燥材の限界まで湿気を吸ったところでハイおしまい、になってしまうからです。まさかその都度乾燥剤を取り換えるわけにはいきません。(お菓子の袋に入っている乾燥剤ならそれでいいですが。)

湿気を分離するには乾燥剤を加熱します。除湿器の場合、分離した水分は水タンクに溜めます(又は排水管経由で排水します)。湿気が分離された乾燥剤は、再び空気中の湿気を吸えるようになります。

除湿剤の一種であるシリカゲルには、加熱しなくても周囲の湿度が低くなったら湿度を放出するタイプのものがあります。加熱するエネルギーを使わなくても良いので、省エネな調湿ができます。FASの家で使っているスカットールはこのタイプです。
ただ、Wikipediaの記述を読むと分かりますが、このタイプのシリカゲル(B型)は「加熱しないと水分を分離できないタイプ(A型)」に比べて、吸湿能力が劣ります。高い吸湿性能を求める場合は、A型を使わざるを得ません。

DESICAの場合、除湿だけでなく加湿機能も持っていますが、そのどちらに対しても、この機能(つまり空気中の湿気を吸収し、加熱でその湿気を放出すること)がキモになっています。

  • 乾燥剤で空気中の湿気を吸収すること。
  • 吸収した湿気は、乾燥剤を加熱することで取り出すことができ、乾燥剤は再度利用できること。

この2つが最初に理解すべきポイントです。(ここまではDESICAに限らず、デシカント方式を使う除湿器に共通する性質です。)

2.加熱にヒートポンプを使うことで低消費電力を実現

ほとんどの除湿器は、吸収した湿気を乾燥剤から分離するための熱源に電気ヒーターを使っています。この為、除湿器としては消費電力が大きくなります。これが欠点です。

この欠点を克服するため、DESICAでは加熱に電気ヒータではなくヒートポンプを使います。DESICAならではの工夫です。
ヒートポンプは「熱を移動させる」ことで加熱や冷却をおこなう仕組みであり、エアコンでも使われている高効率な加熱手段です。電気ヒーターに比べると(条件にも依りますが)効率は5~6倍にもなります。
ただ、極端な高温や低温を作るのは苦手です。DESICAの場合、40℃という(従来に比べれば)低温で湿度が分離できる乾燥剤を使うことで、「ヒートポンプでもOK」を実現したようです。
これにより、「デシカント方式による強力な除湿」と「低消費電力」の両立が可能になったわけです。

3.取り出した湿気を室内に戻せば加湿になる

乾燥剤に湿気を吸収させ、それを加熱することで湿気を取り出すわけですが、取り出した湿気を室内に戻せば加湿になります。DESICAが除湿だけでなく加湿もできるのはその為です。
ぱっと考えると、「湿度を下げないように頑張ることはできても、湿度を上げることはできないのではないか?」と思えますが、よく考えると湿度を上げることも可能です。この点は後ほど。

4.除湿時の動作

ダイキンのウェブ・サイトに動作原理を説明したページがあるのですが、これがなかなか分かり難い。
下記はそのページに載っている図です(2020/04/18注:該当ページが改訂されました。下記は昔掲載されていた図)。

イメージ 1


基本的な話として、DESICAはそもそも「換気装置」です。なので除湿も加湿も、換気をするのと同時に行います。この為、空気の流れも「屋外からの吸気」と「屋外への排気」という2つの流れで構成されています。
それを踏まえた上で、DESICAの除湿動作を理解するポイントは下記です。上図と照らしながら読んでみて下さい。

  • 図の上半分は排気経路です。既に限界まで吸湿した除湿剤を加熱して、湿気を放出しています。
  • 放出された湿気は屋外に廃棄されます。
  • 図の下半分は吸気経路です。屋外から取り込んだ空気を除湿剤に通して乾燥した空気にします。
  • 図の上半分で除湿剤を加熱するのにヒートポンプが使われています。ヒートポンプは「熱を移動させる」ものなので、どこかから熱を運んできて加熱しています。どこから持ってきているかと言うと、図の下半分です。
  • なので、図の下半分では熱を奪われた分だけ冷房ができることになります。乾燥剤から湿気を分離するために加熱をするわけですが、そのついでに冷房もできるという上手い仕組みです。
  • 暫くしたら、図の上と下の役目を入れ替えます。給気と排気が逆になり、冷却と加熱も逆になります。
  • 上は除湿剤がリフレッシュされているので、再び湿気を吸えるようになっています。これで給気の湿気を吸いとります。更に冷却されるので、冷房にもなります。
  • 下半分は乾燥剤が一杯まで湿気を吸った後なので、加熱して湿気を放出させます。今度は排気経路になっていますから、放出した湿気は屋外に排出されます。
  • また暫くしたら上下の役目を入れ替えます。以降、繰り返しです。

外気を吸気するときに十分な除湿ができれば、室内を低湿度に保つことができます。デシカント方式による強力な除湿能力がそれを可能にしているようです。

5.加湿時の動作

加湿時の動作はさらに分かり難いです。基本的には除湿時の逆です。

イメージ 2


このときの動作は下記のようになります。

  • 図の上半分では、湿気を吸収した除湿剤を加熱して湿気を放出しています。その湿気を屋外から取り込んだ新鮮な空気に載せて室内に送り込みます。
  • 除湿剤をしっかり加熱すれば、室内に送る空気を暖房することも可能です。
  • 下半分では室内の空気を排気する前に、湿気を除湿剤に吸収させています。折角の室内の水分を捨ててしまわないためです。
  • 下半分で排気する空気から十分に湿気を回収できれば、排気は非常に乾燥したものになります。一方、上半分で給気している冬の外気は乾燥しているとは言っても、ある程度の湿気を含んでいます。排気に含まれる湿気が外気よりも少なければ、その差し引きの分だけ室内の湿気が増えることになります。この為、加湿が可能になります。
  • 上半分で加熱(暖房)している分だけ下半分の空気は冷却されていますが、冷えた空気は屋外に排出されるので支障ありません。
  • 除湿剤が能力一杯まで湿気を吸ったら、上下の役目を入れ替えます。

ポイントは、「除湿剤の能力が十分に高ければ加湿が可能になる」ということです。デシカント方式による強力な除湿能力がそれを可能にしているのでしょう。

6.日本にこそ必要な機器

夏には除湿をしながら(多少でしょうが)冷房ができる、冬には逆に加湿しながら(これも多少でしょうが)暖房ができる、というのは、日本にぴったりの空調機器です。アメリカやヨーロッパでは、夏は乾燥、冬は湿潤な地域が多いので、そういう機器の必要性が低いからです。
湿度制御は快適性には重要なだけに、期待の高い機器です。

もっとも、現在市販されているのは業務用だけの様で、家庭用は現在開発中らしいです。快適性の実現に有効な気がするだけに、気軽に使える機器になってほしいものです。