自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

イシカワのモデルハウス見学

もうモデルハウス見学は十分かなと思っていましたが、行きがかり上、新しいところを見ることになりました。
その1つがこの株式会社イシカワです。

そもそもは、何度か足を運んでいた総合展示場の一角に建設中だったモデルハウスです。完成したら入ってみようと相方と話していましたが、実際にオープンしたそのモデルハウスには、大きく「住宅を半分の価格で造る『良質住宅』」の垂れ幕が。
「これはさすがに(我々の方向性とは)違うよね」ということで、入らずにいたわけですが、今回ちょっとしたきっかけがあり入ってみました。

イシカワというハウスメーカは初耳です。聞けば新潟に本拠地があり、今は全国進出のただ中とか。後でウェブサイトも見てみましたが、地元の工務店が業績を伸ばして、会社を大きくしていったらこんなになりました、という感じなんでしょう。今は準大手に分類される一条工務店も、ちょっと前まではこんな感じだったのかも知れません。
平成19年度にフラット35利用で建てた住宅の平均坪単価が69.9万円ということを引き合いに出し、その半分以下である「坪単価30万円」を謳います。確かタマホームがこのくらいの坪単価でしたよね。ローコスト系ハウスメーカの坪単価は数字のトリックがいろいろあると聞きますが、そういった二重価格を否定し、消費者に分かり易い価格を提示するとカタログには書いてあります。玄関ポーチ工事費、確認申請や仮設工事、電気や屋内給排水工事も本体価格に含み、それらひっくるめて坪単価30万だということなので、タマホームより安いかも知れません。基礎はベタ基礎が標準だそうですし。

モデルハウスの間取りは1階が25坪、2階が21.6坪で、延べ床面積46.6坪。玄関ポーチと2階のバルコニー、吹き抜けは延べ床面積に含まれていません。床面積の算出方法に数字のトリックは無さそうです。これに坪単価の30万円をかけて、1,400万円が本体工事費になります。玄関ポーチ、バルコニー、吹き抜けの工事費は本体工事費に含まれます。尚、このモデルハウスは尺モジュールです。
何となく、タマホームよりは良い気がしてきます。(延べ床面積が45坪未満だと、坪単価は割高になるとも書いてありますが。)

まあタマホームとの比較はどうでも良くて、本題はここからです。
ズバリ、「このモデルハウスの価格はいくらですか?」と訊いてみたところ、モデルハウスなので頑張って作っていて、2,000万円だそう。坪単価43万円です。標準仕様との差額は坪当たり13万円。ただ、頑張ったというモデルハウスですが、私から見るとまだまだ安っぽい。構造躯体がどうこうという高尚な話ではなく、床や建具などの質感が。いえ、これは十分に「普通」と言うべきなのかも知れませんが、若い人ならともかく、いい年したオッサンは、こういう質感では全く満足できません。
もう1つ質問しました。Ⅰ地域用の標準仕様でQ値=1.3以下、C値=1.0以下というものがあるのですが、これの坪単価を訊いたら、34万円だそう。Ⅳ地域標準に比べて坪当たり4万円のアップでかなり優秀な断熱性が手に入ります。

このあたりで私は頭を抱えることになります。
標準仕様の1.4倍を超える費用をかけて(つまり600万円も上乗せして)、それでもこの安っぽい質感。標準仕様の内装って一体どんな代物なの? いや、そんなことより、私がまずまず満足できる質感の内装にしようとしたら、一体いくら上積みすればいいの? 更に600万円で足りますか? 足りたとしても坪単価56万円でっせ。全然ローコストじゃないじゃん。
それに比べて、業界トップレベルのQ値を得るための上乗せ費用は、たったの184万円。
何なのでしょうか、この費用対効果の圧倒的な違いは。

今のところ第1候補である一条工務店と比べてみましょう。一条工務店は業界トップレベルの高断熱高気密に全館床暖と質感の高い内装(デザインセンスは全然合わないけど)で坪当たり64万円。
一方のイシカワは、(標準仕様はいくら何でもチープすぎるので)モデルハウスの坪43万円をスタートとして、Ⅰ地域仕様の高断熱高気密オプションが坪4万円の加算。床暖は15坪程しか入っていないので、全館に付けるとして坪3万円の加算(これは私のラフな試算)。ここまでで坪50万円ですが、未だ仕様の差が残っています。

  • 構造用合板や石膏ボードによる壁倍率アップをやっておらず、耐震強度一条工務店より劣りそう。
  • 床の構造用合板が1階、2階とも24mmでやや薄く、少し弱い感じが否めない(一条工務店は1階28mm、2階32mm)。
  • 防蟻処理のカタログ記載が無いが、一般的な薬剤塗布だとすると一条工務店の加圧注入に比べて耐用年数が短く、メンテ費用が高い。
  • 換気が熱交換型ではなく、実効Q値は1.3よりも悪いと思われる。

このあたりを一条工務店同等にしてもらおうとすると、どの程度の上乗せが必要でしょうかね。高断熱高気密オプションがお買い得だったので、上記もお買い得と仮定して、5~6万円というところでしょうか? さすがにもうちょっとするかな? ちょっと幅を持たせて5~10万円アップとしておきましょう。これで坪55~60万円。
その上で、まだまだ安っぽい内装を何とかしてもらわねばなりません。標準仕様とモデルハウス仕様の差が坪13万もあったことを考えると、どの程度上乗せすればいいのか不安になりますが、半分の坪6.5万円で頑張ってもらいましょう。
さて、結局のところ一条工務店(坪64万円)と同等のモノを作るのに、イシカワだと坪61.5~66.5万円ということになりました。仮定がいっぱい入っていて不確定ではありますが、予想範囲のセンターに収まれば坪64万円で、一条工務店と同じ価格という結論になりました。これならインテリアセンスや間取りの提案で戦えるかも知れませんね。

あれ? イシカワって、ローコストで勝負できるハズのハウスメーカではなかったのでしたっけ? それが一条工務店と価格ではなく提案力で戦うと? それってローコストと言えるの?

結論:タマホームを凌駕するほど低コストに強みのあるメーカであっても、一条工務店と同じ仕様のものを作ったら、一条工務店と同じ価格になる。

いや、乱暴な結論だとは思いますよ。計算に仮定は多いし。でも、この結論に修正が必要だとしても、「同じ価格」を「近い価格」に書き換える程度ではないでしょうか。

良く言われることで、「地元の優良工務店に頼めば、大手メーカよりもずっと安く同じ家(またはより良い家)が出来る」てな話がありますが、今回の結論を踏まえると、地元工務店でもほぼ同じ結論になるのではないかという気がしてきました。
イシカワは大手ハウスメーカに比べると、かなり地元工務店に近い性質のメーカですが、そのイシカワでさえも一条工務店と僅かな差しかありません。地元工務店との比較でその差が2倍に開いたとしても、結局大した差とは言えません。
これが住宅価格の真の姿なのでしょう。最初は意外な気もしましたが、私にとって最終的には一番腑に落ちる結論でした。

ところで、一条工務店と同じ価格なら競合させてもいいんじゃないか? 候補になるはずだ。
最初はそんな風に思いましたが、イシカワに一条工務店と同じものを作ってもらおうと思ったら、やれ構造用合板を貼れだの、貼るときの釘ピッチはいくらだの、床合板は32mmにしろとか、断熱材は云々。こちらから指示せねばならないことが山ほど出てきて大変です。一条工務店なら放っておいてもやってくれることなのに。(それでずっと安くなるならともかく、大差無しですからね。)
そんなわけで、イシカワが我々の候補になることはないでしょう。勉強にはなりましたが。