自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

SE構法-ウェブ上見学-

以前から名前だけは耳にしたことがあったのですが、SE構法なるものを知る機会がありました。モデルハウスを実際に見学したわけではありませんが、ウェブ・サイトでざっと調べたことを簡単にまとめます。

1.SE構法とは

いわゆる金物工法の1つです。つまり躯体の構造強度をあるレベル以上にするための技術です。耐震性の高さが直接的な売りの1つになります。
開発したのは株式会社エヌ・シー・エヌという会社。これを一般の工務店にライセンスするフランチャイズ方式で展開されています。
世の中には他にも金物工法はありますが、他の金物工法との優劣比較は今回はやっていません。

2.最大の特徴は躯体強度の高さ

構造材として集成材を用いること、そして全棟について構造強度計算を実施することが特徴です。

住宅の構造材として無垢材と集成材のどちらが良いかは諸説ありますが、ばらつきを小さくできると言う点では集成材に軍配が上がります。SE構法で集成材を使っている最大の理由は多分これでしょう。と言うのも、ばらつきの大きい素材だと、もう一つの特徴である構造強度計算ができないからです。より正確に言うと、計算はできますが、その計算結果は信頼できません。
構造強度計算は、いわゆるコンピュータシミュレーションになるのですが、この手の計算は、

  • この材料の強度はこうで、寸法はこう。
  • 接合部の強さはこの通り。

といった諸情報を前提に行います。逆に言うと、この前提となる数字が間違っていると、計算結果も間違いになると言うわけです。
なので、「この柱(又は梁)は強いかも知れないし、あまり強くないかも知れない」ではダメなのです。ややこしいのは、「弱い柱を前提に設計すれば、実際に作る家は少なくともそれより強くなるだろう」という単純な発想が、必ずしも通用しないことです。
と言うのも、耐震性の高さで重要なのは、耐力壁などがバランス良く配置されていることだからです。家の中に強い部分と弱い部分が混在していると、地震の際には弱い部分に応力集中が発生し、そこが先ず破壊されます。なので、一部分だけ突出して強いよりは、全体がまんべんなく弱い方がマシ、ということも有り得るのです。
そんなわけで、構造強度計算をやるためには集成材のばらつきの少なさが大変重要になるわけです。

集成材を使うことで高い精度の構造強度計算ができる前提を整え、更に(法律上の義務がなくても)全棟で構造強度計算をやることで、十分な耐震性を確保する。
これがSE構法の根幹の考え方と言っていいでしょう。(集成材を使っている理由のもう一つは、無垢材よりも強度が高いことです。これも無視はできない理由でしょう。ばらつきの小ささの方が重要度は高いと思いますが。)

木造2階建て以下の住宅では、構造強度計算は義務ではなく、「壁量計算」をすればよいことになっています。これは「これだけ耐力壁が入ってりゃ、まあ大丈夫なんじゃない?」という、かなり簡易的な計算です。住まいの水先案内人に依れば特に専門知識もいらず、1時間程度でできるそうです。
そんなアバウトに家を建てて良いルールになっている理由は、「大工さんに構造計算を義務づけてもできっこないから、素人でもできる計算だけで良いことにせざるを得なかった」からでしょう。決して消費者のためのルールではありません。

SE構法では基本的な強度が高いため、大空間や吹き抜けを設るのが容易です。しかも、それらを設けた上で、世間標準よりも高い強度を確保できるよう、構造強度計算で詳細な設計を行うようです。
面白いのは、大空間を可能にする理由の理由の1つに、「間取りの変更の容易さ」を挙げていることです。ヘーベルハウスで聞いた話と同じですね。スケルトン・インフィルという考え方。

こういった大空間を可能にしているのが太い梁を使ったラーメン構造なのでしょう。エヌ・シー・エヌでは木造による大規模建築(体育館クラスの建物)も建てているようで、その技術を一般住宅にも適用している(順序は逆かな?)と謳っています。
なお、SE構法は厳密なラーメン構造ではないらしく、準ラーメン構造の表記が見受けられます。

ラーメン構造とは、柱と梁だけで構造強度を持たせる構法のことです。ポイントは、壁には全く強度を期待しないという点です。良くあるのは、鉄筋コンクリート造でのものです。
SE構法は木質ラーメン構造、つまり木でラーメン構造を実現しています、ということなのですが、完全に柱と梁だけで構造強度を持たせるわけではなく、耐力壁も併用するのが前提です。なので、準ラーメン構造というわけ。
勿論、柱や梁の強度が非常に高いので、必要な耐力壁は少なくて済み、大空間の実現やリフォームが容易などの特徴が出せているわけです。

 

3.断熱性・気密性はあまり重視せず

断熱性・気密性は無視、と言うわけではありませんが、あまり重要視されていないようです。SOWE(ソーウィー)デザインという呼び名で自然と上手く共生する設計なるものを提唱しています。日射しをとり入れたり遮ったり、あるいは風を上手く利用したり。
以前も書きましたが、私はこういう売り文句をあまり信頼していません。性能の低さをごまかすためにそういう文句が使われることが多いからです。一方で、そういう工夫は大切であると考えてはいますが。
SE構法の場合も、(ごまかしの意図があるかどうかは別にして)断熱・気密性は大したことはないようです。断熱に優れた住宅の例として次世代省エネ基準を挙げていますし、Q値C値の具体値にも言及がありません。

基本的には、頑丈な構造技術だけを会員である工務店に提供するのだと考えて良いようです。
FASの家 断熱・気密性だけをライセンスしているのと全く逆のパターンですね。

4.良い? 悪い?

強度の話は専門的すぎて、良いだの悪いだのを素人が論じられないですね。なのであまり書くこともない。
とは言え、SE構法のウェブ・サイトを読んで感じられるのは、この人たちは科学的な方法論に基づいて家づくりをやっているな、ということです。住宅は工業製品であるべきと考える私には、これは大きな安心材料です。「たまたま」ではない、確実な耐震性を間違いなく実現してくれるでしょう。

一方で、SE構法のフランチャイジーになっている工務店に、断熱性・気密性が高い家づくりをしてくれそうなところが無さそうなのは困った点です。全部の工務店を確認したわけではないですが、断熱性・気密性には無頓着か、あるいは感心があっても次世代省エネ基準程度で満足しているところが多いように見受けられました。

なかなか両立は難しいものですね。