自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

FASの家の落下試験-前編-

以前にkazuさんからコメントで、「FAS本部は使用済みの実験棟で落下実験をしようとしている」との情報を頂きました。その後、特にチェックもしていませんでしたが、昨日ふと気が向いてFASのウェブサイトを見てみたら、ありました、実験の様子を撮影したビデオが。
 
■落下実験の様子を撮影したビデオ(全部で3つ)
 
このビデオ、宣伝用にわざわざウェブサイトに掲載している割には、何の説明書きも無いので、何が言いたいのかさっぱり分かりません。しかも映像のタイトルが、『ファース断熱材 落下試験』です。
え? 断熱材って落としたら壊れるの? その為の性能試験?
kazuさんからの事前情報をがあれば、「断熱材で強度が増しているので、こんなふうに乱暴なことをしても構造体は壊れませんよ」と言いたいのだろうと想像はつきますが、予備知識無くここを訪れた人には、「何のこっちゃ?」でしょう。かなり残念なコンテンツになってしまっています。
 
もうちょっと情報は無いかと探してみたら、ありました。福地建装の社長さんのブログに。
2014/04/09付けのブログに記述があります。それによると、、、
  • 実験棟は一辺2mの立方体。
  • もともとは温熱性能評価のために作ったもの。役目を終えたので落下実験に使うことにした模様。
  • 内側に100mmのウレタン断熱を施工(ファースでは「エアライト」と呼んでいる断熱材)。 筋交いや耐力面材の使用有無などは不明(開示されず)。
  • 7mの高さから落下させた。
  • 同じ実験棟を落とし方を変えながら3回落としたのか、それとも同じ仕様の実験棟が3つあって、それぞれを1回ずつ落下させたのかは不明。
  •  以前にも同様の落下試験を3mの高さで実施したことがあるらしい。
ビデオでみるだけでは細部は分かりませんが、コーナー落下以外では大きな損傷は受けていないように見えます。コーナー落下ではさすがに凹んでいますね。これを、「壊れてるじゃないか、大したことない」と見るか、「この程度しか損傷しないのか、大したものだ」と見るかは、立場によって様々でしょう。
 
社長さんの主張の通り、これがウレタン断熱材の効能ならば、大したものだと私は思います。
が、実験の細部が公開されていないので、明確な判断は出来ません。
エンジニアの立場でこの実験にいちゃもんを付けるなら、以下のような感じでしょうか。

 

  • 耐力面材や筋交いの仕様など、発泡ウレタン以外の強度に関する仕様を明確にして欲しい。
  • その上で、ウレタン無しの場合との比較実験をして欲しい。
  • 勿論その際は、落下の条件が同一になるように、落とし方にも工夫が必要。
  • どういう向きで落としたら地震に対する耐力と高い相関が取れるか、そこを踏まえた落とし方をして欲しい。(この落とし方で強ければ地震にも強いんです、と言える落とし方にして欲しい。)
  • 落下の際に構造体にかかる加速度を測定し、地震で言えばどの程度の揺れに相当するのか、定量評価できるようにして欲しい。

 

工学的な視点で言えば、全ての実験には目的があります。例えば、『ウレタン断熱材によってどの程度強度が上がるかを確認する』などです。この目的に沿って実験計画を立案せねばなりません。ただ落とせばいいというわけではないのです。この目的に沿って更に言えば、強度の差を正確に見るには、落下実験ではなく、壁倍率試験の方が良いのではないか、などの考察も出てきます。とにかく、先ず目的ありきでなければならないということです。
 
そういう視点で今回の実験を見てみると、ただ落としてみただけ、の感があります。FAS本部は工学的なアプローチに関して決して素人ではないので、実験とは何ぞやを知らなかったとは思えません。とすると今回の実験は何を目的としたものだったのでしょうか?