自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

エネファームにメリットはほぼ無い-後編-

 
前回、エネファームを導入した場合のコスト的及びエネルギー的収支をラフに計算しました。その際、効果金額の算出に重要な間違いがあるのを意図的に無視していると書きました。今回はそのあたりの説明を中心に、「エネファームは苦しい立場だよな」という私の考えの背景をまとめてみます。
 
5.ガスの単価は家庭と企業では異なる
前回の効果金額の算出時には、ガスの単価を130[円/m3]としました。家庭で消費されるガスの量、加えて火力発電所で消費されるガスの量をそれぞれ算出し、合計の消費量に単価130[円/m3]を乗じて効果金額を出したわけです。
しかし冷静に考えると自明なのですが、家庭と電力会社では購入するガスの単価は全く異なります。
家庭用はガス会社が産出国からLNGタンカーなどで購入し、自社のガスタンクに保管した上で、都市に張り巡らせたガス管を通じて家庭に届けています。それらの施設を建設し、運用・管理し、修理するといった一連の費用(人件費も含めて)も、ガスの販売価格には含まれています。当然、それなりの価格になります。
一方、電力会社はガスの超大口ユーザです。そもそも東京電力東京ガスからガスを買っているわけではないでしょう。産出国から直接仕入れているのではないでしょうか。しかもLNGタンカーを自社の貯蔵施設に横付けさせて、直接納品させていることでしょう。売る側にとっても1[m3]あたりに要するコストは相当に小さくなるはずです。
こういったガス単価の差を無視して、全部を130[円/m3]で計算したわけですから、当然その結果はかなりデタラメな数字になります。
 
それでは、ガス単価の差を織り込んだら前回の計算結果はどうなるでしょうか。
先ず、電力会社が買っているガスの単価を調べました。東京電力のウェブサイトに基準燃料価格なる数字が載っています。実際には、ここから毎月の燃料費の増減を調整する処理がなされるようですが、典型的な数字としてこの基準燃料価格を使うことにします。
これによるとLNGの平均価格は1トン当たり67,548円です。LNGの気体密度を0.8[kg/m3](出展はこちら)として体積当たりの価格に換算すると、54[円/m3]になります。つまり東京電力天然ガス家庭用の4割程度の単価で買っていることになります。(もっと極端に安いかと思っていましたが、それほどでもなかった。)
 
以上を踏まえ、ガスの燃焼熱を45[MJ/m3](出展はこちら)、家庭のガス単価を130[円/m3]、電力会社のガス単価を54[円/m3]としてガス代を計算し直すと、方式毎の年間のガス代は以下の様になります。
 
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以下は当初に掲載していた計算間違いに基づく結果です。後日間違いに気づいたので本文は修正しましたが、かなり大きな間違いなので、訂正前のものも残しておきます。
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間違いの原因は、発電所でのガス消費量を計算する際に、発電効率の考慮を忘れていたことによります。つまり発電所発電効率が100%であるかの様な計算結果になっていました。訂正の結果、エネファームの欠点は若干緩和された事になりますが、全体の論旨に影響するほどではありません。
尚、この次の章の計算(ガス代と電気代を別々に計算)には間違いはありません。
と言うわけで、節約どころか、エコジョーズよりもランニングコストが高くなるという結論になりました。発電効率が高いほどガス代が高くなるのは、一見不思議な気もしますが、よく考えると当たり前です。
発電効率が高い場合、同じ量のガスからより多くの電気を作れますが、電気にエネルギーを取られる分だけ沸かせるお湯の量は減ります。とは言え、お湯は必要な分だけ作らねばなりませんので、発電効率が高ければ高いほどガスの使用量は増えるわけです。単価の高い家庭用ガスの使用量が増えたら、その分だけランニングコストが増えるのは当たり前です。
 
もっとも、本当の意味でランニングコストを算出する場合、電力会社が買うガスの単価を足し算しても意味がありません。私達は電力会社からガスを買うわけではなく、電気を買うのですから。その意味で、今回の計算もその結果の数字には大した意味はありません。
とは言えこの結果は、単価の高い燃料を使って家庭で発電することが如何に経済的に難しい挑戦であるかを教えてくれます。私がエネファームに対して強い否定的な見解を抱くことになった直接の理由がこれです。
 
6.本当のランニングコストは?
「本当の」というと大げさですが、ガス代はガス代として、電気代は電気代として集計したら、各方式のランニングコストは以下の様になります。家庭のガス単価は130[円/m3]、電気代は23[円/kWh]で計算しています。
 
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今度はちゃんと節約効果が出る結果になりました。しかも前回の試算よりも効果が拡大しています。前回は元を取るのに100年近くかかるはずでしたが、今回の結果に基づくと、僅か60~80年くらいで元が取れます!
 
‥‥‥‥‥‥やっぱり、「これは無いな」と思うわけです。
 
尚、実際のガス代・電気代には基本料金があって、料金の計算は上記よりも複雑です。また、エコウィルエネファームを設置するとガス代の割引サービスがあるので、節約金額は上記よりも少し大きくなります。とは言え、それらを加味したとしても、元を取れるレベルになるのは、ほぼ不可能と言わざるを得ません。
 
7.元を取るには何年かかる?
数字の精度は低いのですが、元を取るまでに何年かかるかざっと計算したのが下表です。エコジョーズは実勢価格でこのくらいかなという数字、エコウィルエネファームは機器の定価に工事費として10万円を加算しました。値引きや補助金を加味していないので、かなり大ざっぱな目安と思って下さい。
 
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SOFCエネファームは私が調べた限り販売中止になっているため今は入手できません。上記に書いた価格は以前販売されていた頃のもので、当時としてはPEFC型と遜色なかったのですが、今見ると高いですね。
元を取るのがこれほど難しいものに対し、補助金を付けて無理矢理普及の後押しをしているのが現状です。
ちなみに、10年くらいで元を取ろうと思ったら、機器価格(工事費込み)がどのくらいになればいいかを大ざっぱに逆算したのが下記です。
 
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今主流のPEFCエネファームで、価格が今の1/4くらいになれば、約10年で元が取れそうです。
エネファームはデビュー当初の価格が330万円(工事費別)。その後急速に低価格化が進んだとは言え、今でも160万円(工事費別)。ここから更に1/4にするのは、果たして現実的なチャレンジでしょうか?
私には無理筋としか思えないのですが。