自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

蓄電池あれこれ

蓄電池の導入検討について書いたので、ついでに蓄電池がらみのネタを少々書いておきます。

 

1.材料系と寿命

今市販されている家庭用の蓄電池は全てリチウムイオン電池ですが、実は一口にリチウムイオン電池と言っても、材料の細かい違いでいくつか種類があります。NMC系(三元系)、リン酸鉄リチウム系、チタン酸リチウム系など。そしてその材料系の違いで容量や寿命が結構違います。

 

家庭用の蓄電池で最も広く使われているのはリン酸鉄リチウム系です。前回、候補に挙げた4機種は全てこのタイプです。

最大の特長は安全性の高さ。材料の結晶構造が安定なので、充放電で化学反応を繰り返しても変質し難く不安全になり難いのだとか。

但し、時々ネットニュースに出てくる「中国製の電気自動車が火事になりました」の記事に出てくる中国製電池のほとんどはリン酸鉄リチウム系です。原理的に(他の方式と比較して)安全性が高い、と言っても、実際の製品の安全性がどの程度であるかはまた別問題と言うことです。

また、安全性が高いのと同じ理由で寿命も長いです。充放電で材料が変質し難いということは、劣化し難いということでもあるからです。製品によっては12,000回の充放電寿命を謳うものも有ります。これは1日1回の充放電だとすると32年以上に相当します。 これくらい持てば十分でしょう。

但しNMC系などに比べると容量が小さめで、同じ容量にしようとすると体積・重さが大きくなってしまうのが欠点。とは言え、定置用なら致命的な欠点ではありません。

今後も当分の間、家庭用の蓄電池はリン酸鉄リチウム系が主流になりそうです。

 

但し、以前も書いた電気自動車の中古蓄電池をリユースする方法がもしも一般的になったら、話は変わってきます。電気自動車には容量が大きく出来ることが特長のNMC系が良く使われているからです。

これは実際に4Rエナジー(フォーアールエナジー)と言う企業が事業化しています。広く市場に出回るのはこれからですが、寿命がどうなのか、少々気になります。

 

2.自動車用の蓄電池は意外に寿命短い

自動車用というと、とにかく信頼性命、みたいなイメージがあります。そのイメージは決して間違いではないのですが、「だから電気自動車やハイブリッドカーの蓄電池も寿命が長いに違いない」と思うと、実はイメージほどではありません。

 

電気自動車の蓄電池の寿命はどのくらいでしょうか。何回くらい充電できるのでしょうか。

実は蓄電池には「どうなったら寿命と見做すか」という業界共通のルールが存在しません。なので、「何回充電したら寿命か?」も明確には言えません。ただ、ここでは寿命の正確な定義は横に置いておきます。

リチウムイオン電池の寿命は使い方で全く違ってきます。

(a) 100%(満充電) → 0%(完全放電) → 100%(満充電)

(b) 100%(満充電) → 80%(ちょっとだけ使った) → 100%(満充電)

上記はどちらも「充放電1回」ではありますが、寿命に与える影響は全く異なります。(b)の方が遥かに劣化が少ないのです。なので、回数だけで単純に論じるのは難しいのですが、ここでは(a)の様な使い方を前提に寿命を考えてみます。何故かというと、一般的にカタログに書かれる蓄電池の充放電寿命は(a)の使い方を前提にしていることが多いからです。

 

ここでは電気自動車の代表選手として日産リーフに登場願います。標準タイプのバッテリー容量は40kWh。電費はネットのユーザ情報から6km/kWhとします。すると1回の充電で240km走れることになります。ちなみにリーフe+だと62kWhなので、充電1回で372kmです。

一方、車って寿命(廃車)までにどのくらい走行するかというと、おおよそ10万km(1年に1万km走り、10年で廃車とする)という所でしょう。(電気自動車だから、ではなく、家庭用の乗用車一般の話として。)とすると、標準リーフで廃車までに417回の充電が出来れば足りることになります。リーフe+だと269回です。「今時10年じゃ廃車にしないでしょ」とか、「バッテリーが弱ってくると距離が伸びなくなるから充電回数は増える」などの突っ込みはあるでしょう。それを考慮して3倍のマージンを持たせたとしても、806~1250回くらいの充電回数に耐えられれば十分となります。

 

ここでスマホのバッテリーと比較してみます。スマホは1日1回の充電として1年で365回の充電です。多くの人は2~3年は使うでしょうから、寿命までに730~1,095回の充電が出来れば十分です。今時は1日2回充電する人も珍しくないとすれば、1,460~2,190回の充電に対応できる必要があります。

この様に考えてみると、電気自動車の蓄電池に必要な充電寿命は、スマホと同程度かむしろ少ないくらいで十分足りてしまうのです。意外に大したことないですよね。

蓄電池に限りませんが、自動車は使わないときも屋外に置かれていますから、温度変化などの周囲の環境に対する耐久性の要求は極めて厳しいです。この意味で、自動車用蓄電池の信頼性は非常に高いものがあります。ここで「大したことない」と書いているのは、あくまでも「充放電の回数に関する耐久性」に限った話です。

 一方、家庭用の蓄電池は1日1回の充電としても、20年使えるためには7,300回の充電寿命が必要です。自動車用に比べて(勿論スマホ用に比べても)段違いに高い耐久性が必要になるのです。

 

3.テスラはどうよ?

数年前に、テスラが極めて安価な家庭用蓄電池Powerwallを発売しましたが、実はこの製品、日本では発売されませんでした。

で、最近になってPowerwall2という後継モデルを発売しました。初代Powerwallが発売されていなかった日本では、この"2"の方をPowerwallという名称で発売することにしたそうです。容量は13.5kWh、価格は工事費別で99万円+税です。

初代モデルは日本で未発売ですが、あえて価格比較をしてみます。初代は「10kWhで42万円(当時の為替レート)」だったので、「13.5kWhで99万円」の後継機種は大幅値上げに見えます。しかし両者は仕様が違っていて、初代は蓄電池のみ、後継モデルはパワコン一体型なのです。それを加味すると、「ちょっと値上げ」くらいが妥当な評価でしょう。それでも「6年も経つのに安くならないどころか値上げとはどういうことだ」と文句の1つも言いたくはなります。とは言え、これでも家庭用蓄電池の価格としては破格に安いのですよね。工事費込みの価格でも日本メーカのものに比べて3割引くらいですから。

テスラとしては、本業の自動車が好調なので、蓄電池を安く売る理由が無くなったのでしょう(6年前は自動車の生産台数があまり増やせず、蓄電池が余り気味だったのではないかと)。

 

さて、価格では(初代モデルよりも値上げされたとは言え)圧倒的に優位なPowerwallですが、気になるのは前章で述べた寿命の話です。と言うのも、Powerwallは電気自動車用のバッテリーを家庭用に仕立て直した物です。充電回数寿命は1,000回くらいあれば十分な自動車用の品質しか持っていないと考えるのが妥当です。これでは3年も持ちません。何の工夫も無く家庭用に供給しているとは思えませんが、大丈夫なのかどうか不安は拭えないなと言うのが私の正直な印象です。

容量は13.5kWhと大きいし、出力も連続で5kW、ピーク(短時間)では7kWまで出せるので、オール電化でも安心です。勿論全負荷型です。このスペックと価格だけ見ると実に魅力的なんですが、私自身は今すぐ手を出すのは避けたいなと思っています。人柱の皆さんが導入して、問題なく使えそうという実績がでてきたら候補に入れようかと。

 

4.価格イメージってどうなった?

以前、将来このくらいの価格になることを期待したいてな話を書きました。あれから6年経って、今の価格は当時の予想に対してどうなったかと言うと、、、

 

太陽光発電は20万円/kWhという期待値に肉薄してきました。太陽光発電の電力買い取り価格を審議している委員会の報告書を読むと、住宅用太陽光発電の設置費用は新築の場合で、平均28.6万円/kWhとの調査結果なので、正確にはまだ届いていません。しかしこの調査でも安い方から上位20%のケースでは既に20万円/kWhに届いているようですから、平均値で20万円/kWhになるのも数年以内というところではないでしょうか。

ゴール(私が勝手に決めたゴールですが)にほぼ到達です。

 

蓄電池とそのインバータ(パワコン)はまだまだです。今の蓄電池はほとんどがインバータとセット売りなので、合計価格で見てみます。6年前は「20kWhで70万円(40万円+30万円)を期待」とか言ってましたが、現実には前回書いた通り、12kWhで250万円程度です。容量あたりではまだ6倍近く違います。テスラのPowerwallですら13.5kWhで150万円(工事費込み価格の一例)なので容量あたり3倍くらい違います。こちらはゴールにはほど遠いです。

しかし当時は完全オフグリッドの為には20kWhとか言っていたわけで、それは非現実的と諦めた今となっては10kWhもあれば十分と思います(この部分の妥当性検討は別途やってみたいところ)。容量単価が3~6倍高くても、必要な容量を以前の検討時の半分で良いと割り切るなら、価格のギャップは縮まります。とは言え当時の期待値70万円に対してテスラのPowerwallでも150万円(工事費込み)と2倍強のギャップは残ります(寿命の不安は横に置いて)。ゴールは遠いです。

蓄電池に関してはパワコン(インバータ)一体型の商品がデビューして家庭で実際に使える様になった点が最大の進歩ですね。価格の話はまだまだこれからです。

 

現時点の結論として、価格は6年前の期待に対してまだまだ遠いです。導入するなら相当に割高な(つまり金銭的に元は取れない)ことを覚悟せねばならないようです。

私自身はもうちょっと要検討ですね。