自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

「エコハウスのウソ2」を読んでみた

エコハウスのウソ2という書籍を読みました。今回はその感想文。

 

著者は前真之氏。東京大学の准教授で、日経ホームビルダー(休刊)などにも連載を持っていたこの業界では有名な方です。この本も日経ホームビルダーの連載記事を元に、記述を大幅に充実させたものになっているようです。

タイトルはエコハウスなんてクソ食らえという主張に読めますが、実際は真逆。「世の中には間違ったエコハウスが多いので、気を付けて正しいエコハウスを建てましょうね」というものです。要するに、断熱性・気密性の高い住宅を建てましょう、という方向性のもので、昔読んだ大工が教えるほんとうの家づくりとは大違いです。

とは言え、具体的な内容については前氏のオリジナルな主張がちりばめられていて、なかなか独特の読後感があります。

 

目次

全体は8章+エピローグで構成されており、第1~5章がPart 1、第6~8章+エピローグがPart 2という構成です。目次は下記の通り。

Part 1

第1章 環境・エネルギー

第2章 健康

第3章 家電

第4章 太陽光発電

第5章 エコハウスの目標

Part 2

第6章 冬の備え

第7章 夏の備え

第8章 空気とお湯

エピローグ

 

住宅を論ずるに当たり、先ず「環境・エネルギー」問題から始めるところが独特です。いや、確かに大きな問題ではありますが、これから自分の家を建てようという人に、地球温暖化防止のためにとか、CO2削減のためにを訴えても響かないと思うんですよね。数千万円もの身銭を切って一世一代の買い物をしようとしている個人ですよ。そりゃそういう問題にも少しは関心は持つでしょうが、いの一番はそこではないのが普通でしょう。

先ずはエコハウスにした方が快適ですよ、から始まって、ついでにそうすれば環境にもいいんですよ、という話の方が読者が付いてきやすいんじゃないかなと思います。

 

Part 1

上にも書きましたが、Part 1は全体的にちょっと振りかぶり過ぎの印象です。

例えば、第1章は「地球温暖化」ネタから始まっています。地球温暖化は人間の活動が原因で、その主要因がCO2であることは既に確定したこと、という話から始まっているのですが、こういう話を既定のこととして書いていいんですかね。確かにそれが世の趨勢であることは事実ですが、まだまだ異論もあります。天動説みたいなことにならなきゃいいんですが。

何より、そんな話を持ち出さなくても、熱性・気密性の高い住宅の方が住んでて快適じゃんと言う話が施主にとっては全てだと思うのですよね。

で、地球レベルの無駄に大きな話から入った結果、太陽光発電は温暖化対策に非常に有用で是非乗せるべきだがFITの制度設計が不味かったので誤解している人も多いとか、蓄電池の役目が今後は増してくるとか、家電の省エネはもう進化が止まっているとか、いろんな話が雑多に展開されるのがPart 1です。

主張の一つ一つは概ね正しいんですが、その話、無くても良くない? という気がしてなりません。このPart 1でページ数のほぼ半分を使っており、この手の書籍としてはちとバランスが悪い印象です。

 

Part 2

Part 2は実際にどういう家を建てるべきか、という具体的な話です。もう、ここだけで良かったんじゃないでしょうか。

内容は、断熱性だけじゃ駄目で気密性も必要とか、UA値を小さくする為に窓を小さくすると日射取得が出来なくなるのでむしろエコから遠ざかるとか、適切に設計すれば全館24時間暖房でも決してランニングコストは高くならないと言った話がデータとともに紹介されています。ちょっとデータが多過ぎで、素人には読みこなすのが苦しい気もしますが、細かいデータは読み飛ばしても論旨は分かりますし、良く纏まっている印象です。

1つ、私自身も勉強になったのが、夏の日射遮蔽の話です。随分前に日射の採り入れ方について書きましたが、その時は太陽からの直射日光(専門的には直達日射と呼ぶらしい)だけを意識して書いていました。当時も太陽の無い方向からやって来る日光(天空日射と言うらしい)の存在は知っていましたが、「まあ、そんなに気にするほどでもないだろう」とたかをくくっていたので、すっぱり無視したわけです。

しかしこの本によると、天空日射の影響は無視できないほど大きく、天気によっては天空日射の方が大きな影響を及ぼすとのことです。天空日射は庇では防げないので、すだれやブラインドが必要という結論になっています。これは意外でした。本にはグラフも載っており、晴天の日はさすがに直達日射の方が強い様ですが、8月平均では南面で直達日射が0.7kWh、天空日射が1.2kWhと、天空日射の方が倍近く影響が大きい様です。なるほど、これは認識を改めないといけません。緑の家の場合はすだれが設置できるように留め具が付いてくるので対策済みですけど。さすがはオーブルデザインです。

 

読後の感想

360ページを超える対策で内容も盛りだくさん。Part 1は無くても良いんじゃないかという気はしますが、世の中の情勢を知るには好適。Part 2は必要な事項が漏れなく記載してあって、これに全て留意すれば温熱環境的には申し分ない家が建てられると思います。しかもデータが豊富。私にとっては「話としては知っている」事が多かったのですが、それでも具体的なデータで説明されるのは説得力が抜群で学ぶことも多かったです。

話の入り口が地球温暖化問題で、ちょっと鼻につく感がなきにしもあらずですが、家を建てようとする多くの人にお薦めできる本でした。