自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

電気代の認可制と自由化

ロシアとウクライナの戦争をきっかけに、電気代が随分高くなってきました。

戦時下と思えばこの程度は大したことないのかな、と思わないでもないですし、報道で見聞きするヨーロッパ諸国での上がり方と比べたら、知れているのは確かです。とは言え、あっちが異常なだけで、日本の上がり方だってそこそこです。

特に我が家は夏季の間中エアコンを再熱除湿で運転させっぱなしにするので電気使用量が多く、元の金額が高いので上がり幅も大きいです。

それ自体は納得の上なのでいいのですが、それをきっかけに電気代について調べていて、電気料金の仕組みの中に今まで知らなかったルールがあることを知りました。

今回はそのお話。

 

電気料金は、多くの場合、

  1. 基本料金
  2. 従量料金
  3. その他

で構成されていて、「3.その他」の中に、燃料費調整単価と再エネ付加金が含まれています。今回気づいたのは燃料費調整単価に関してです。

 

燃料費調整単価とは、発電に使う燃料の購入価格の増減に応じて従量料金に上乗せされるものです。例えば、本来の従量料金が24[円/kWh]だったとして、その時の燃料代が基準単価よりも高ければ単価を+1円とか+2円して単価を調整します。逆に燃料を安く買えれば、燃料費調整単価はマイナスになり、従量料金は24[円/kWh]より安くなるわけです。どのくらい高く/安くするかは計算方法がきちんと決められています。

ちなみに燃料は、主には天然ガス火力発電に使う天然ガスです。

仕組みとしては、航空チケットの燃油サーチャージみたいなものですね。

 

で、昨今は天然ガスの国際取引価格が暴騰しているので、燃料費調整単価がかなり高くなっており、電気代も高くなっている、というのが大ざっぱな話。

今回新しく知ったのは、この先の更に細かい話です。

 

その昔、電気料金はインフラという性格から、全て認可制でした。これに対し、数年前に電力小売り自由化と称して、認可を経ず電力会社が自由に価格設定が出来るようになりました。企業間の競争により、価格低減が進むと期待されたから導入された制度です。

で、ここからが肝心なのですが、今、電気料金は認可制の料金プランと自由化プランが混在している状態になっているのです。私はてっきり、全ての電気料金が自由化されたのだとばかり思っていたのですが、違いました。

両者の料金プランには大きな違いが1つあります。それは、認可制の料金プランの場合、燃料費調整単価には上限があるという事です。どんなに燃料費が上がっても、小売価格に転嫁できる金額には上限が有り、それを超えて燃料費が上がった分は、全て電力会社が負担せねばならないことになっているのです。そして、まさに今、その状況が出現しています。

ニュースなどで、「電力料金が上限に達したので、各電力会社は上限の緩和を政府に要求している」などと報道されているのがこれです。燃料代が上がった分をもっと小売価格に反映できないと赤字が増えて堪らない、と言うわけです。但し、こういう状況になっているのは認可制の料金プランだけです。認可制の料金プランの場合、料金の変更には政府の認可が必要なので、勝手に変えることが出来ません。だから政府に頼み込んでいるわけです。

想像するに、料金プランを考えた当初はここまで極端に燃料代が上がることは考えていなかったのでしょう。だから「多少足が出るくらいなら、その分は電力会社で負担しなさい。消費者にあまり重い負担をさせるわけには行かない」とか何とか考えて、燃料費調整単価に上限を設けたのだと思います。で、今の極端な天然ガスの値上がりで、電力会社が「いくら何でももう無理」となっているのです。

 

では自由化プランの場合はどうなのかというと、自由化プランの名の通り、単価は電力会社の裁量で決められます。燃料費調整単価には上限がありません。

なので、今の天然ガスの高騰で電気代が上がっていると言っても、契約プランが認可制の料金プランか、それとも自由化プランかで、上がり幅はかなり違います。

例えば我が家の場合、2年くらい前に自由化プランに変更したのですが、燃料費調整単価は6.14[円/kWh]です。これに対し、認可制の料金プランの場合、2.24[円/kWh]です(これが上限価格)。その差、3.9[円/kWh]もあります。

夏にエアコンをフルに使って、500[kWh]使ったとするなら、認可制の料金プランの場合、電気代は(燃料代が標準だった数年前に比べて)1,120円アップですが、自由化プランの場合は3,070円アップにもなります。差額だけでも2,000円近いです。

 

と言う背景事情を知ったので、我が家では認可制の料金プランに戻すことにしました。認可制の料金プランは要するに自由化前から存在していた料金プランのことで、多くの電力会社では「従量電灯A」などの名称で提供されています。

実際に手続きを試みたところ、自由化プランに切り替えるのはwebで簡単にできるのに対し、認可制の料金プランに切り替えるのは電話で申し込む必要があるなど、ちょっとしたハードルが設けられていました。まあ、でも手続きできましたけどね。

 

これまで(2年ほどですが)自由化プランを使って安くなっていたので(月に1,000くらいですが)、ここで掌返して認可制の料金プランに戻すのはずるいかなと思わないでもないですが、決められたルール内なのでまあいいかなと。

それに、遠からず認可制の料金プランでも燃料費調整単価の上限が(政府の認可を得た上で)引き上げられて、料金の差は縮まることでしょう。

根本的に料金が下がるためには、原発の稼働が進むなどして天然ガスの購入量が下がるのを待つしか無さそうです。ロシアとウクライナの戦争の状況を見る限り、天然ガスの価格は当分下がりそうにありませんので。

いやはや、大変な時代になりました。