自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

日射の採り入れ方、避け方

今日の話は受け売りです。
元ネタは、以前紹介した太陽建築(2020/04/26注:リンク切れ)です。とある雑誌に紹介されていたのをきっかけに知りました。なお、日本外断熱総合研究所(2020/04/19注:サイト主が転職したのか、ウェブサイトが全く別の個人ブログの様な内容に変わっています)も同様の考え方であるパッシブハウスを推進しています。この両者が私にとっての元ネタですが、世の中的にはさほど珍しくない考え方のようです。とは言え、住宅建築に当たってそれを明確に意識しているケースは、不思議と少ないようです。話を聞くと、非常に重要な取り組みだと思えるんですけどね。

この話を理解するキモは、夏と冬とでは太陽の高さが異なるという事です。ここで言う高さとは、見上げたときに地面となす角度のことで、夏は高く、冬は低い。
つまり、夏は真上に近いところから日が差すのに対して、冬は地平線近くから(は言い過ぎですが)水平気味に日が差すと言うことです。この差がかなり---多分多くの人が思っている以上に---大きいことがポイントです。

先ず、春分の日秋分の日の場合です。これが1年を通しての平均的な太陽高度です。太陽が南中したとき(=その日の中で一番高くなったとき)の角度は以下のようになります。

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土地の緯度は東京の場合で35.4度。なので、南中高度は90-35.4=54.6度です。

次に1年で最も太陽高度が高くなる夏至の場合は下図のようになります。
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同じく東京の場合だと、南中高度は78度になります。

更に冬至の場合は下図です。
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東京の場合で、南中高度は31.2度になります。

夏至は78度にもなり、ほとんど真上に近いところから照りつけるのに対し、冬至は31.2度と、かなり低くなります。
どうでしょう、「想像以上に差がある」と思いませんか?
ちなみに、上記の図は(目分量ですが)それらしい角度にしてあります。決して大げさに書いているわけではありません。

この差が夏の暑さと冬の寒さを生み出しているそもそもの原因なのですが、この差を日射のコントロールにも使うことができます。
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この図の様に軒の深さを設計すれば、夏の強い日射しを直接室内に入れることなく、しかも冬の日射しを最大限に室内に取り込むことができます。なお、この図も(目分量ですが)概ねそれらしい角度にしてあります。誇張ではありません。

夏至の直射日光を室内に入れないために必要な軒の深さは、

2.4 ÷ tan78° ≒ 0.51m

これだけ必要と分かります。但しこれはあくまで夏至の、しかも南中した太陽からの直射光を避けられるだけの数字です。実際には夏至だけではなく、その前後暫くの期間の直射光を避けられるようにしたいですし、南中の瞬間だけでなくその前後暫くの時間帯については、同様に直射を避けられるようにしたいものです。なので、もっと軒は深くせねばなりません。
どのくらいまでを避けるように設計すべきかは一概に言えませんが、仮に70
度より高い位置から照りつける直射日光を室内に入れない方針とするなら、

2.4 ÷ tan70° ≒ 0.87m

の軒が必要です。結構深い軒です。やや開放感が損なわれるかも知れません。
この深さの軒だと、冬至の日には壁から

2.4 ÷ tan31.2° - 0.87 ≒ 3.1m

のところまで、室内に直射日光が入ってきます。(細かく言うと壁の厚さを差し引く必要などありますが、割愛。) 8畳間ならほぼ部屋の奥まで届きます。冬の乏しい日射を最大限取り込むには悪くない状態ではないでしょうか。

とまあ、こんな感じで夏の日射を遮り、冬の日射を採り入れる工夫をすれば、機械的な空調の必要性を最小限に減らせ、低コストかつ快適な住宅を実現できるわけです。

なお、総2
階形状の場合、1階天井部分に軒が無いのが普通でしょう。上記の図からも分かる通り、2階天井部分の軒で、1階への直射日光を遮ろうとすると、非現実的な深さの軒が必要になります。上図で言う「天井高2.4m」の部分が2倍強になるわけですから、計算式を見て分かる通り、必要な軒の深さも2倍強になります。約2mです。これはさすがにあり得ないでしょう。

とは言え、総2階はダメだと言うことにはなりません。
例えば、2階のベランダ部分を1階よりも張り出させる間取りにすれば、それが実質的に軒の役目をします。1階天井部分に相当する位置ですから、深さは2mではなく0.87mあれば足りるので、十分実用的な範囲に収まります。
あるいは、オーニングを使うという手もあります。これは必要に応じて出し入れできるので、総2階に限らず、開放感と夏の直射日光避けの両立を図るのに好適な手段です。
和風にいきたいなら夏だけ葦簀を吊すという手もあります(葦簀は隙間から漏れてくる直射日光が結構ありますが、それでもかなりの効果が得られるはずです)。

何処までを建物本体でやって、どこからをオーニングや葦簀で補うのか、それは住む人の好み次第だと思います。ただ、手段はともかく、夏の直射日光避けと冬の直射日光取り入れを両立させることは必ず考慮に入れておくべきでしょう。
そうすることで、空調コストの最小化と、室内空間の快適性の両立が図れるはずです。