自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

1,000万円超のジャンク品

今日は久しぶりに土地の話。

私はよんどころない事情で建築計画を中止していますが、中止する前に土地探しをしていたとき、土地に関して非常に不思議な業界慣習があることをハウスメーカの営業さんから聞きました。
それは、

  1. 境界確定は土地の購入者側の仕事である
  2. 地盤調査も土地の購入者側の仕事である

です。
境界確定とは文字通り、隣地との境界線がどこであるかを測量に基づいて確定する作業です。登記簿には土地の形状やら面積やらがきちんと書かれていますが、なにぶん昔のことでもあり、登記簿の記載内容と実際の土地の状況が一致しているとは限らないのが現状です。まあ、これ自体は仕方のないことですね。そこで、土地の売買を行う際にはきちんと測量を行い、どこまでが売買対象の土地であるかを確定させるわけです。なお分譲地として売られている土地の場合、住宅メーカが一旦土地を買い上げ、その後整備・区画割りを行ってから売るので、その過程で境界確定が自動的に行われています。その場合は境界確定は売り主の役目であり、ここで言う「不思議な業界慣習」には当てはまりません。言わば、「売り主が住宅メーカだから」素人の常識が通用するのです。
ところが私のように、田舎にだだっ広い土地を買おうとすると、住宅メーカが区画割りをして分譲することはまずありません(需要が少なくて商売が成り立たないから)。その為、基本的には個人の売り主から(不動産屋を仲介して)買うことになります。この場合は不思議な業界慣習の始まり始まり‥‥。

この場合は何と、土地を買う時点では境界確定が行われていません。正確な土地の形状や面積が定かでないまま売買契約を締結することになります。そして契約後に、購入者の責任と費用負担において境界確定を行うのが「土地取引の常識」なのだそうです。
(実際の手続きは多少の前後があるかも知れません。ただ、測量の費用負担が購入者側にあるのは間違い有りません。)
形状や面積が確定していないと契約が出来ないということだって少なからずあるでしょう。もしも境界がずれたら、目論見通りの家を建てられなくなる可能性だってあるわけですから。その場合、売り主が許可すれば契約前に測量することは可能です。でも費用は購入者負担。測量の結果、購入断念と言うことになっても売り主は知らん顔です。購入者は丸損。
これが土地取引の「業界常識」なのだそうです。

地盤調査も同様です。きちんとした地盤調査は、家を建てる場所と家の形状が確定しないと実施できません。その意味では、購入者が地盤調査を行うのは納得がいきます。どんな家を建てるかは購入者が決めるわけですから。
そうは言っても、「だいたいここはこの程度の地盤」という概略測定データくらいは、購入前に欲しいところです。それによって地盤改良の費用が大きく変わってくるわけですから。1,000万円の土地で200万円の地盤改良費が必要ならば、その土地の正しい価格は1,200万円と見なすべきでしょう。1,000万円ではなく1,200万円と思えば、その土地を購入するかどうかの判断も大いに変わってきます。そう考えれば、地盤調査は是非とも購入前に知りたい重要情報ということになります。
ところが、これも土地取引では購入者側の責任です。買うまでどういう地盤か分からない。(売り主が許可すれば)買う前に調べることも出来るけど、その結果買わないことになっても売り主は知らん顔。購入者は丸損。
これが土地取引の「業界常識」なのだそうです。

私は上記はどちらも「ひでぇ業界慣習だ」と思いましたが、皆さんはどう感じたでしょうか?
私は上記に書いたような「買う側が一方的にリスクを取らねばならない売買形態」を土地取引以外に1つだけ知っています。
ジャンク品です。

ジャンク品とはご存じの通り、「動作するかどうか分からないものを捨て値で売っている」というものです。もしかしたら動くかも知れない。動いたら丸儲け。動かなかったらただのがらくた。ゴミを捨てる手間の分まで損をする。これがジャンク品です。
ジャンク品はそれでもいいでしょう。タダみたいな値段で売ってるんですから、動作しなくても文句言わないというルールも合理的です。

しかし土地は違います。何より金額が違いすぎる。
1,000万円以上もするようなものが、面積も形状も決まってません?
地耐力は不明で、もしかしたら100万円単位で余分な支出が発生します?
これが全部購入者の責任なんて、不動産業界はどうかしています。

ものを売る以上、売るものに責任を持つのは、何を売る場合であっても当然ではないでしょうか。また、売りたいのなら、(測量費用が無駄になるかも知れないといった)リスクを採るのも当然のことでしょう。
売り主側の都合も分からないではないですが、現状はあまりに一方的だと思わずには居られません。

実際のところ、業界慣習には従わないわけに行きません。どんなに不合理と感じても、世の中全体がそれに基づいて動いているなら、それを是としないわけにはいかないのです。ただ、どこまで行っても割り切れなさは拭いきれません。
こんなところにも不動産業界の暗黒面を垣間見た気がしました。如何に不動産業界が世間一般の常識からかけ離れているかを示すエピソードの1つと言って良いでしょう。
困ったもんです。