自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

FASの家に体験宿泊-其の参-

-其の弐から続く-

7.仕様についてあれこれ質問

到着時及び翌朝に、福地建装の方に色々質問した内容を順不同で書き連ねていきます。
ゲストハウスに限った項目もありますが、基本的にはFASの家全般についての内容になっています。

(1)基礎が断熱ラインの外側になっている理由

以前、FASの家では熱容量が不足していると書きました。更に、FASの家は熱容量を大きくするコンセプトなのに、何故基礎が断熱ラインの外側になっているのか?という疑問も書きました。
と言うわけで、今回、何故基礎を断熱ラインの外側にしているのか質問しました。理由は大きく2つだそう。
1つめは白蟻対策。昨今では北海道でも白蟻被害が見られるので配慮が必要だとのこと。ただ、基礎断熱の項でも書いたように、昨今では白蟻の不安無く基礎断熱を行うことも出来るようですから、ちょっと気にしすぎのような気がします。(私のは単にネットで読んだだけの知識ですけど。) 「他社さんでは問題なくやっているところもありますが、うちはそう言う考えです」と言われると、それ以上は議論にならないので、突っ込むのは止めました。
2つめの理由は、北海道では凍結深度の問題があるので施工が難しい為だそう。凍結深度とは、冬に地面が凍る現象についての用語で、地表からどの程度の深さまで凍るのかという数値です。勿論、地域によって異なり、寒い地域ほど深くなります。寒冷地では、基礎のフーチングを凍結深度よりも深いところに配置せねばならないといった配慮が必要です。こういう制約があると、基礎断熱をやるのが面倒になると言うのは(明確には理解できませんが)何となくそんな気はします。FASの家は北海道生まれなので、その事情に配慮したと言うことらしいです。
どちらの理由も、熱容量を2倍以上に出来るという極めて大きなメリットの前には、「何とか知恵を絞って克服すべし」という程度の課題としか思えませんでした。世界初の挑戦というならともかく、北海道でも基礎を断熱ラインの内側に持ってくる施工をやっているメーカはあるのですし。(それともそういうメーカは問題を抱えたまま危険な施工をしているとでも言うのか?)
結局、FASの家では看板に掲げている程には熱容量を重視していないと言うことなのでしょう。
 

(2)スカットールは徐々に変色する

FASの家では床下に調湿材である「スカットール」が撒かれています。これには有機物を吸着する効果があるそうで、ホルムアルデヒドなどの有害有機物を吸着する効果があるとFAS本部は主張しています。私が思うに、実際に吸着される成分のほとんどは、ホルムアルデヒドなどのご大層なものではなく、サンマを焼いた匂いではなかろうかと。
今回訪れたゲストハウスでは、床が部分的にガラス張りになっており、床下のダクトの出口(天井から床下に空気を送るダクト)周辺が見れるようになっています。
見てみると、ダクトの周辺のスカットールが黄色く変色していました。シリカゲルですから本来は無色又は白色です。黄色くなっているのは有機物を吸着したからなのでしょうね。一旦吸着したものは放さないらしいので、色は濃くなる一方です。
スカットールは床下全面に撒かれていますが、聞けば変色するのはダクト周辺だけで、それ以外は真っ白なままだそう。しかも、「ここ(ダクト周辺部)は黄色くなっていますが、変色は表面だけなので、少しかき混ぜると真っ白いのが出てきますよ」とのこと。
話してくれた福地建装の方が今までに見た中で、最も変色が激しかったのは、築15年くらいで喫煙者のいるお宅だそう。コゲ茶色になっていたらしいです。これ以上吸着できない、というところまで行くと真っ黒になるとか。「なので、家の寿命以上にスカットールの吸着性能は持続すると考えている」とのこと。
仮にそれ以上吸着できない状態になったら交換するのか?と聞いたところ、「真っ黒になっても調湿性能は残っているので、捨てるのは惜しい。追加で新しいスカットールを撒くのがいいでしょう」と言うことでした。
 

(3)新型スカットールの実験

スカットールには有機物を吸着する性質があるわけですが、更に吸着した有機物を分解してから放出する機能を加えた、新型スカットール(名称は私が勝手に命名)の実験をしていました。
話を聞く限り、光触媒系の材料を混ぜたものに感じられます。酸化チタンでしょうかね? どうやって光励起させるつもりなのか聞いたら、「床下に小さい蛍光灯を設置するなどでしょうかね。常時点灯させる必要はありませんし」とのこと。
こういう新しい試みは良いことだと思いますが、前述のスカットールの話を聞いた後では、ちょっと首をかしげざるを得なくなりました。つまり、10年以上も(喫煙者がいるという比較的厳しい条件で)使い続けてもまだまだ吸着能力は余裕があり、しかもちょっとかき混ぜれば新品同様のスカットールが顔を出すわけです。
わざわざご大層な新材料を開発しなくても、10年に1回かき混ぜれば十分じゃん、と私は思うのですが‥‥。(と言うか、かき混ぜる必要すら無いんじゃないかと。ダクト周辺のスカットールの吸着性能が低下しても、ダクトから少し離れたところで吸着されるでしょうから。)
こういう開発が無意味だと言っているわけではありません。優先度はかなり低いと言っているのです。こんな開発よりも、基礎を断熱ラインの内側に持ってきて、しかも白蟻の不安がない工法を開発する方が余程優先度が高いと思うのです。
 

(4)一番外気温の影響を受けるのは1階の床下

一番意外だったのがこれです。FASの家では換気装置が天井裏にあるので、夏の暑い外気や冬の寒い外気は先ず天井裏に入ります。(勿論、熱交換されているので、それなりに暑さ・寒さは緩和された状態で入ってきます。) しかし同時にエアコンも天井裏にあるので、入ってきた外気はエアコンで空調され、十分に涼しい/暖かい状態になってから、床下に送り込まれるのだと思っていました。もしもそうなら、最も空調が効いているのは1階の床下と言うことになります。
しかし、実際のFASの家では、換気装置で取り込んだ外気はほとんど空調されずにそのまま床下に送られる設計なのだそうです。換気の外気取り入れダクトの出口と床下ダクトの吸気口が近接して配置されているためです。床下に送り込まれた空気はその後、壁内や居室を通って天井裏まで戻ってきたときに、やっとエアコンで空調されることになるわけです。
このゲストハウスで一晩過ごして、1階の床の方が階段や2階の床よりも冷たいと感じたのですが、こういう理由だったんですね。確かに、床下の温度は室温よりも1~2℃低くなっていました。
理想を言えば、取り入れた外気を先ず天井裏で空調し、その後床下に送り込むべきです。そうすれば今回、1階の床がもっと暖かく感じたでしょうし、夏ならひんやりと気持ちいいでしょう。
何故わざわざ空調効果の劣る方法を採っているのか、よく分かりません。
 

(5)エアコンは一般家庭用

以前、エアコンなどの機器が専用品なのは保守の観点で不安と書きましたが、エアコンは市販の家庭用エアコンを使っているそうです。現在、「寒冷地でもエアコンで暖房が出来る」として採用しているのは、パナソニックのXシリーズ(2011年時点)だそうです。ハイエンド機種なので一般家庭用としてはかなり高価ですが、故障時の修理、寿命時の交換などに困ることはないでしょう。「エコナビとか、FASの家では使わない機能も付いているので勿体ないんですが」と言っていましたが、とんでもない。市販品であることの重要性を思えば、その程度は勿体ないうちに入りません。
ところで、今でもFAS本部のウェブ・サイトには専用エアコンを使っている旨の記述がありますが、これは市販のエアコンをベースに、ショートサーキットを起こさないような工夫をしているということを意味しているようです。(吸気口と排気口の間に仕切り板を入れるなどしているらしい。) 「寒冷地でもエアコンで」を可能にするためにこの機種を選んでいるとのことなので、寒冷地でなければ、必ずしもこの機種でなくてもいいのでしょう。
細かい話ですが、このエアコンを使うもう一つのメリットは、フィルターの自動清掃機能を備えていることでしょう。エアコンはフィルターの掃除をするかどうかで効率がかなり変わります。一方、エアコンの室内機が天井裏に設置されていたのでは、フィルタ掃除はかなり面倒な作業になってしまいます。部屋の壁に普通に設置してあるエアコンのフィルターですら滅多に掃除しない私のような不精者にとって、フィルターの自動清掃機能が有るか無いかは重大です。(まあ、フィルター掃除機能だけなら、もっとグレードの低い機種でも付いてますが。)
なお、今回訪問したゲストハウスは古いこともあり、蓄熱暖房なので天井裏にエアコンはありません。(細かく言うと、冷房専用の天井埋め込み型エアコンが設置されていましたが。)
 

(6)床下ダクトはφ150mm

FASの家では天井裏から床下まで空気を送り込むためのダクトが必要ですが、これは直径150mmのパイプだそう。内壁には収まらないので、家の間取り上、どこかにパイプを通すための場所を確保しておく必要があるそうです。パイプの本数は、通常は1本、大きめの家では2本必要だそうで、訪れたゲストハウスは延べ床面積約60坪で2本とのこと。
2階の和室の隅には不自然な出っ張り(RCのマンションにある柱の出っ張りみたいなの)がありましたが、これがダクトの配置場所。ここには1本だけで、もう1本はトイレの壁の奥でした。
もうちょっと細くして、内壁の中に納めることは出来なかったんでしょうかね。本数は増えますが。(直径半分なら4本必要。)


概ねFASの家の全貌がつかめてきた気がします。

-其の四に続く-