自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

ヘーベルハウスの「性能体験見学会」-前編-

ヘーベルハウスが主催する、「性能体験見学会」に参加しました。
内容が盛りだくさんなので、三部作でお届けします。


このイベントは凄いです。旭化成グループ
旭化成ホームズだけではなく)の総合研究所が富士にあるのですが、その研究所の一部を開放してヘーベルハウスの良さを体験してもらおうという趣向です。
‥‥と言ってしまうと何が凄いか分かり難いんですが、「研究所」というところがポイントです。モデルハウスや展示会場と違って、研究所というのはそもそも外部の人間を招き入れる様には作られていません。そう言う場所に大量の部外者を招き入れ、しかも受け入れる側のメンバーもそう言うことに不慣れな人ばかりという条件の中で、来客の安全面に配慮しつつ、試験装置や実験装置を動かして性能を体験してもらうというのは、とてつもなく手間のかかることなのです(自分の家にTV番組の取材がやってくることを想像すれば、その大変さが多少イメージできるでしょう)。 それほどの手間を(勿論それだけの費用も)承知の上で、これだけのイベントを催すというところに、ヘーベルハウスの意気込みが表れていると言っていいでしょう。
後で聞いたところに依ると、このイベントは最近始めたそうですが、3ヶ月に1回くらいやりたいと思っているとのこと。とは言え、思っているのは多分営業部門だけで、研究所の人にとってはたまったものではないでしょう。準備だけで1ヶ月くらいかかるはずです。せめて年に1回くらいにしておかないと、肝心の研究活動が疎かになってしまいますよ、ヘーベルハウスさん大丈夫ですか?

では、見て回った内容を順にご紹介します。

1.高い耐震性

ヘーベルハウスの売りの1つが高い耐震性です。ここでは水平振動台に乗せたヘーベルハウスの構造躯体(骨組みだけ)を揺らして、制震デバイスが振動エネルギーを吸収する(熱に変える)様子を実演して見せてくれます。
実験は1階部分のみの構造躯体で行われますが、2階と3階部分に相当する重りが上に乗せられており、3階建て相当の重さがかかっている状態でデモが行われました。結果はまあ、びくともしませんよと言う内容で、特にどうと言うこともないのですが、その後に担当の研究者の方に伺った話が非常に興味深いものでした。

  • 地震に対する強さは強度だけでは決まらない。強度は勿論必要だが、揺れを如何に抑え込めるか、つまり如何に制震できるかとの組み合わせで決まる。
  • ヘーベルハウスでは制震デバイスを多数配置することで制震性能を上げ、ひいては地震に対する強さを上げている。
  • 確かに他社でも制震はやっている。例えば積水ハウスさんだとシーカスフレームがあるが、多くの壁には強度を上げるためにブレースが入っており、シーカスを入れられる壁があまり無い。とは言え、シーカスの為にブレースを減らすわけにもいかない。結果、壁の多い間取りにならざるを得ず、ヘーベルハウスの様な大空間を作るのは苦手。

特に他社比較である3点目がヘーベルハウスの耐震性を理解する上でのポイントです。何故他の軽量鉄骨メーカでは出来ないことがヘーベルでは出来るのか? それを理解するための写真が下記です。
イメージ 1
この写真で何が分かるかというと、制震デバイスの数です。
ここには3つの耐力壁が写っていますが、耐力壁のそれぞれに、上下2個ずつ、計6個の制震デバイスが配置されています。

これが他の軽量鉄骨メーカだとどうなるかと言うと、この3つが全部ブレースになっていて、制震フレームを入れるための壁が追加で必要になると言うことです。

ラクリが理解できたでしょうか?
つまり、ヘーベルハウスでは耐力壁と制震壁を兼ねることが出来るというのがポイントなのです。全ての耐力壁が制震壁でもあるのです。だから、十分な壁量を確保しつつ、同時に十分な制震性能を持たせることが出来るのです。
他社の場合、耐力壁(ブレース)と制震壁(制震フレーム)が別ですので、両方を十分に配置しようとすると、どうしてもトータルの壁の数が多くならざるを得ません。だから地震に対する強度を同じにする場合、ヘーベルハウスに比べて大空間が取り難いのです。

如何でしょうか? 私にとってこの説明は腹にストンと落ちるものでした。各社がそれぞれ「地震に強いですよ」と謳う中で、明確に「他社よりも強いので、同じ強度なら広い空間が取れます」という主張を納得できる形で聞いたのはこれが初めてです。
感心しました。これは研究所に来なければ聞けなかった説明でしょう。
ヘーベルハウスの営業の方、この説明の仕方、覚えた方が良いですよ。説得力抜群です。

ところで、ここまでして大空間を可能にするのは、勿論私のような広いリビングを希望する者にも有り難いですが、それより何より、リフォームを容易にするためなのです。ヘーベルハウスの理念であるロングライフ住宅を実現するためには、住み手のライフスタイルの変化に対応できねばなりません。その為にはリフォームで間取りを変更できる必要があり、間取り変更の自由度を高くするには、基本的な構造躯体として、耐力壁を限りなく少なくした大空間を実現できている必要があります。
耐力壁と制震壁を兼ねた独特の構造は、ロングライフのためだったんですね。

2.高い耐火性

これはデモとしては良くあるものです。ヘーベル板とサイディング壁とタイル壁をガスバーナーで10分ほど加熱し、その損傷状態を比較するというもの。バーナーの温度は1200℃程度とのことで、隣家が火事になったときに外壁が晒される状態を模擬しています(かなり近接してお隣の家が建っている場合ですね)。 ちなみに、ベニヤ板にバーナーの炎を当てると、1秒も経たないうちに盛大に燃えます。そのくらい強烈な温度です。

一番弱いのはタイル壁。タイルを貼っている接着剤がダメになって、剥がれ落ちてきます。その後、内部に火が侵入し、断熱材が焦げてきます。まあ、温度が温度ですから、良くこの程度で済んでるなというのが正直な印象ですが。
次はサイディング。釘で留まっているので、簡単には脱落しませんが、徐々に焦げてきて、最後は炎が内部に侵入します。こちらは断熱材の焼損はごく僅かでした。大したもんです。
で、ヘーベル板はさすがに一番強く、1200℃の10分でもびくともしません。素晴らしいですね。

‥‥というデモなんですが、突っ込み所が大いにある、ちょっとフェアではないデモでした。
まず、本来ヘーベルハウスに使われる外壁用のヘーベル板には、3層の塗装(ロングライフコート:後述)が施されていますが、このデモ用のサンプルには塗装がしてありません。何故か? もしも塗装されていれば、ヘーベル板自体が無事でも、表面の塗装は無惨な状態になるでしょう。勿論、そうであっても高い耐火性の証明としては何も問題ないのですが、見た目(塗装)が無惨だと、見学者の中には「ヘーベル板自体にもダメージが及んでいるのでは?」という、あらぬ疑いを持つ人が出てこないとも限りません。そんな風に、痛くもない腹を探られるのは不本意なので、あえて塗装していないヘーベル板を使ったのでしょう。
じゃあ、何も問題ないだろう? そうですね。実験の趣旨に照らせば悪くない判断です。でもね、だったらサイディングも同じ条件で比較すべきでしょう。サイディングは最後には炎の侵入を許してしまいましたから、明らかにヘーベル板よりも耐火性は低いのですが、表面の塗装がぼろぼろになっていたことが素人目に印象の悪さを増幅していたのは間違いありません。つまり、本来の姿よりもヘーベル板とサイディングの差を強調してみせる形のデモになっていたわけです。優劣が逆になるような明白なインチキがあったわけではありませんが、広い意味ではこれもインチキの仲間でしょう。あまり正直なデモとは言えません。

もう一つの突っ込み所は少し深刻です。
ヘーベル板のサンプルにはコーキングと室内側の断熱材(ネオマフォーム)が付いていないのです。何故か? コーキングがされていれば、当然1200℃には耐えられず焼損します。
バーナーの炎はガスがかなりの勢いで噴出しているため、対象物への貫通力が強く、コーキングの隙間から炎が入り込んで室内側の断熱材も焼け焦げるでしょう。実際の火事の炎では、そこまでのことは無いので、断熱材に被害が及ぶところまではなかなか至らないはずです(コーキングはダメージを受けるでしょうが)。つまり、実際の火事では問題にならないにも関わらず、バーナー試験では問題があるかのような結果になってしまう可能性があります。それを嫌って、コーキング無し(2枚のヘーベル板を隙間ゼロで突き合わせてありました)のサンプルでデモを行ったのでしょう。
これも、それだけ見れば決して不合理な実験条件ではないのですが、比較相手と同条件ではないのはやっぱりフェアとは言えません。サイディング壁とタイル壁には、内側の合板やら断熱材やらがちゃんと取り付けてあったのですから。
しかも、説明者が「本来のヘーベルの外壁では隙間が埋めてあり、炎が入ってこないようになっていますが、今回はあえて隙間がある状態で御覧に入れます」などと、あたかもコーキングが無い方が不利であるかのような説明をしていたのは、欺瞞と言わざるを得ません。

そんなわけで、私にとっては少々残念なデモでした。

-中編に続く-