自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

ヘーベルハウスの「性能体験見学会」-後編-

-中編から続く-

5.その他

今までご紹介したネタに比べるとかなり小粒になりますが、目に留まったものをいくつかご紹介します。

<放射冷暖房パネル サーモマイルド>
旭化成ホームズと三協立山アルミが共同開発した輻射方式の冷暖房設備です。見た目はデロンギのオイルヒーターに似ていますが、冷房も出来るのが大きな特長です。
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側に立ってみると、風が来るわけでもないのに、確かにそちら側からひんやりした感じを受けます。冷房を輻射でやるのはちょっと不思議な感じですが、これなら寒くなる心配は無さそう。
暖房では床暖房など輻射熱による暖房が割と一般的になってきていますが、冷房にも輻射方式を持ち込んだのは面白い着眼点です。暖房と違って、エアコンという手段しか事実上存在しなかった冷房の世界に多様性をもたらしてくれることを是非期待したいところです。
ただこの製品に限って言えば、三協立山アルミとの共同開発品だからでしょうか、上記のカタログ写真のように、デロンギのオイルヒーターっぽい外観にしか出来ないのは残念な制約です。どの部屋にも違和感なく置ける、ということにはなりません。
床暖房みたいに、壁なり床なりに埋め込んでしまえばその問題は解決しそうですが、冷房では結露という課題があるので簡単にはいきません。(この製品では露受け皿を下部に設けることで結露水の問題を回避しています。パネル自体はじっとりと濡れていました。) とは言え、何とか解決して、次世代の冷房システムとして完成させて欲しいものです。
こういう良さそうなものは、他社も追従して、業界を挙げて完成度を上げて欲しいですね。

<エアーフラット冷暖房システム>
これも冷暖房関係のネタです。エアコンによる冷暖房ですが、ダクト式にして吹き出し口を天井に設け、更に吹き出し口にフュージョンという複合素材で出来た畳サイズのパネルを設けます。これにより、風速の非常に低い冷気が広い面積からじんわり下りてくる状態を作り出すものです。熱源はエアコンなので暖房も出来ますが、特に冷房時の快適性を上げるのに大きな効果が期待できそうです。(暖房は床暖房などの快適性が高い方法が他にありますから。)
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上の寝室写
真で天井に張り付いている2枚の白いパネルがフュージョンパネルです。でフュージョンの断面写真がその右側の写真。見た目では1cmも無いくらいの厚みですが、独特の断面を持っているため、下図のように気流を全面に広げる効果が出せるようです。
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実際に稼働しているエアコンの下(フュージョンパネルの真下)に立ってみると、ほとんど風を感じませんが、じんわりと冷気が降りてくる感じはします。立った状態でそうなので、ベッドに寝ていれば全く風は感じないでしょう。バンザイしてフュージョンパネルの近くに手をかざしてみると、微かに冷気の流れ(下降気流)が感じられます。
開発では実際に大学生を被験者としてこの部屋で寝てもらい、通常のエアコンとエアーフラットシステムでの睡眠の深さの違いを測定するなどの検証を行ったそうです。結果、通常のエアコンだと夜中に何度か目が覚めてしまう(睡眠が非常に浅くなる)のに対し、エアーフラットシステムでは朝までたっぷり熟睡すると言った差が認められたそう。

確かにこのシステムはなかなかのものです。快適性は前述のサーモマイルドの方が高そうですが、エアーフラットシステムは直ぐに使える安価な技術だけで構成されている点が素晴らしい。ただ、それだけにエアコンの室内機が天井埋め込み型になっていて、設置に天井補強が必要(多分)とか、専用のエアコン(ダイキン製)でなければダメといった制約が残念でなりません。
これ、他のハウスメーカで真似してもらえませんかね? フュージョンパナソニックの空気清浄機の加湿フィルタに使われているくらいですから、他のハウスメーカでも買えるでしょう。既設のエアコンと組み合わせ可能なものが作れれば、喜ぶ人は多いと思います。特許が気にはなりますが。

<他にも>
築37年のヘーベルハウスを部分移築したものや、遮音施工の展示、重量鉄骨の展示などもありましたが、あまり詳しく見ていないので割愛します。
また、共催である東京ガスもブースを構え、ガスコンロやミストサウナの展示をやっていましたが、これも割愛します。

6.おもてなし

展示とは直接関係ありませんが、付帯サービスも充実していました。

先ずは保育施設。この手の専門サービス会社から来たと思われる保育士さんが6~7名いて、会議室を模様替えした臨時保育室で預かってもらえます。一条工務店のイベントでは託児サービスが無く、それで特に何とも感じませんでしたが、実際に利用してみると実に便利。乳児がいると、やれおむつ換えだの喉が渇いただので頻繁に中断される上、終いにはぐずったり泣き出したりで、落ち着いて話を聞くことが出来ません。
もっとも、せっかくの保育サービスも、今回はかなり閑散としていました。子供よりも保育士さんの方が多いくらいです。ヘーベルハウスの客層には、乳幼児連れの夫婦は少ないのでしょうかね?

ペットボトルの飲み物はあちこちで配っていますし、昼食・軽食用に屋台も出ています。静岡名物(自称?)の富士宮焼きそば、うなぎまんじゅう、みしまコロッケを初め、クレープ、ソフトクリーム、ホットドッグ、おにぎりなどの屋台も充実、本当の祭りに比べればずっと少ないものの、今回のイベントの趣旨に照らせば十分と思えるだけのラインナップが揃っています。勿論、全て無料で食べられます。お土産に持って帰る人も居たようです。
私としては富士宮焼きそばがお勧め。どうせ屋台の焼きそば、と期待感ゼロで食べましたが、なかなかどうして、もっちりした太麺という珍しい焼きそばは、屋台だからと言う言い訳を付けなくても十分旨いものでした。
それにしても、クレープ屋台の店員さんがネクタイを締めていて、クレープの焼き方が実に下手くそだったのが気になります。手慣れた様子だった焼きそば屋と違って、あれは絶対ヘーベルハウスの従業員でしょう。しかも営業スマイルの下手さからすると営業担当ではなく富士研究所の研究者と見ました。仕事とは言え休日出勤に駆り出され、しかも技術説明員でなくクレープを焼かされるとは、サラリーマンの悲哀に涙がちょちょぎれます。


この業界では驚くほどではないのでしょうが、非常に至れり尽くせりのイベントでした。あれやこれやで、非常にお金と手間がかかっています。
新富士までの電車代もヘーベルハウス持ちでしたし。来場者は300~500人程度と言うところでしょうか。
ざっと見た印象では、1,500~2,000万円くらいかかっているでしょうかね。本当に年4回やるなら6,000~8,000万円。
これを高いと見るかどうか。ヘーベルハウスの販売棟数は年間1万弱ですから、1軒あたり1万円弱コストが上乗せされることになります。
価値観は人それぞれですが、私には大した金額とは思えません。施主の1人として、その程度の価格の上乗せで、これくらい充実した情報提供が受けられるなら、喜んで払います。メーカとしても、このイベントによって迷っていた見込み客の背中を押すことができ、その内の何人かが契約に至るなら、簡単に元が取れることでしょう。メーカがこの手のイベントに力を入れる理由がよく分かります。
ただ、前編にも書きましたが、このイベントを年4回もやるのは研究者の方々への負担が大きすぎるので、止めた方が良いと思います。見かけ上のコストがペイするとしても、長い目で見ればヘーベルハウスの競争力を損ないかねません。悪いことは言わないから、年1回にしておきましょうね。

7.終わりに

そんなわけで、ほぼ丸1日かかった見学会は終了。
全体を通じて伝わってきたのは、ヘーベルハウスロングライフに最大の重点を置いているというメッセージです。単に家の間取りや仕様がそうだと言うだけではなく、研究開発の段階からロングライフを極めるという一点にほぼ全てが注がれています。ロングライフのための耐震性、
ロングライフのための耐火性、ロングライフのための外壁材、ロングライフのためのコーキング、ロングライフのための‥‥。
逆に言うと、それ以外の性能を犠牲にしてでも、という雰囲気もありますから、熱狂的な支持者が居る一方で、クソミソにけなす人も居るのでしょう。他のどのハウスメーカにも出来ない家であることだけは間違いありません。
代わるものが無いという点において、ヘーベルハウスは今後の人口減少時代(つまり住宅需要が激減する時代)にも生き残れる可能性が高いメーカの1つと言えるでしょう。

それはそうと、個人的な希望を言わせてもらうなら、やっぱり
断熱性を上げて欲しいと思います。標準のヘーベルハウスでも、今の私の住まいよりは断熱性が高いのだろうと思いますが、それではもの足りません。
え? ロングライフに無関係なものには力を入れられない? だったら、住宅それ自体のロングライフだけでなく、住む人のロングライフ(健康で長生き)も含めたトータルロングライフって解釈でどうでしょう? ダメ?