自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

耐震性と共振周波数の関係-後編-

-前編から続く-

3.共振周波数と地震対策

地震の揺れの周波数が建物の共振周波数に近いと、建物が「効率良く」揺れてしまい、倒壊の恐れが高くなります。従って、その条件が成立することだけは何としても避けねばなりません。

(1)古の住宅
昔々の筋交いのない住宅は、強度が低く、変形しやすい構造でしたが、これは細い竹ひごの振り子に相当します。つまりそれだけ共振周波数が低いと言うことです。

建物の共振周波数 < 地震の揺れの周波数


というわけです。建物の共振周波数が十分に低ければ、地震に対してのらりくらりと力を受け流すことが出来ます。前回の振り子の図で言うと、下図に相当します。

イメージ 1

大昔の住宅は、こうやって地震による倒壊から逃れていたと考えられそうです。その時代としては良くできた手法なのでしょうが、前回も書いた通り、壁が崩れたりといった建物の後遺症は避けられないので、現代では単純に「これはいい。素晴らしい」とは言えません。倒壊して住人が下敷きになると言う最悪の事態だけは避けようという、最低限の確保に注力した考え方ですね。

(2)在来工法の家
建築基準法によって筋交いのない家が建てられなくなり、全ての新築は筋交い(又はそれに相当する壁面材)を使わねばならなくなりました。これだと、家は変形し難くなります。竹ひご振り子のたとえで言うと、竹ひごが太い振り子に相当します。当然、建物の共振周波数は上がります。共振周波数を十分に高めれば、共振周波数は地震の周波数よりも高くなって、

建物の共振周波数 > 地震の揺れの周波数


となります。前回の図では下記に相当します。

イメージ 2

しかし、中途半端に強度アップをすると、

建物の共振周波数 ≒ 地震の揺れの周波数


になってしまい、むしろ大昔の住宅よりも危険になってしまいます。建築基準法が改正される度に住宅への要求強度が高くなっているのは、強度自体よりもむしろ、建物の共振周波数を高くすることで地震時の共振現象を避けようとしていると考えるべきでしょうね。
それでも、住宅という大きなものの共振周波数を十分に高くすることはなかなか難しいものです。結果、周期1~2秒の短周期振動で最も良く揺れるというのが実状のようです。これは地震の揺れとしてはそれほど珍しい周期ではありませんから、地震対策の観点ではあまり良い状態とは言えません。
一般に、在来工法よりも2×4が地震に強いと言われるのは、2×4の方が建物が「固い」ので共振周波数が高く、

建物の共振周波数 > 地震の揺れの周波数


と言う状態にし易いからだと理解できます。在来工法でも壁倍率の高い壁をなるべく多く設けるのが良いとされていますが、同様の理由でしょう。

十分に共振周波数を高くした住宅の場合、家全体が地面と同じように揺れることになります。建物が「効率良く」揺れることはありませんが、大地震の場合は「地面と同じ揺れ」というだけでも結構なものになりますから、その点は覚悟しておく必要があります。

(3)免震住宅
免震住宅は地面と建物の間に、柔らかい(変形し易い)部分を設けておく方法のことです。この場合、共振周波数は低くなりますので、前述の(1)と似たような状態になりますが、そうは言っても(1)と決定的に違う点があります。

先ず、一番大きいのが、共振周波数を自由に設計できると言うことです。(1)は建物の構造で共振周波数が決まっていたので、共振周波数を自由に調整することは出来ませんが、専用の装置を使う免震工法なら、装置の設計である程度自由になります。この為、

建物の共振周波数 < 地震の揺れの周波数


と言う状態を確実に実現できるので、地震対策を「設計」することが出来るわけです。


2点目の違いは、「建物自体」と「柔らかい部分」が別なので、1Fの床を含めて建物全体が揺れなくなると言うことです。

イメージ 3

住む人にとって、この違いは実に大きいものがあります。

(4)まとめ
以上の通り、住宅の地震対策は、「強度を上げる」というよりもむしろ「建物の共振周波数を地震の揺れの周波数から遠ざける」という考え方で理解した方が正確です。そう考えれば、

  • どうやって遠ざけるか?
  • 高い方に遠ざけるのか、低い方に遠ざけるのか?

といった点で、方法論がいくつかに別れることもすんなり理解できます。

なお、住宅の地震対策は共振周波数だけではなく、建物の強度バランスなど、色々な要因があります。上記ではその中の共振周波数だけを取り出して述べましたが、決して「これさえやっていれば大丈夫」というものではありません。その点はお間違えなきように。