電気自動車メーカーであるテスラが家庭用蓄電池の新製品Powerwall 3を発売しました。
家庭用蓄電池と言えばニチコンなどの老舗国内メーカーに交じって、中国メーカーなどが存在感も増しているところ。そんな市場にテスラが新商品を投入した、という構図です。
テスラの蓄電池については随分前に考察しました。
この時の商品(初代Powerwall)は日本では発売されていません。その後モデルチェンジしたPowerwall 2から日本での発売が始まっています。
今回、Powerwall 3の発売をきっかけに、11年ぶりに改めて考察してみます。
1.Powerwall 2との違い
Powerwall 2からは何が変わったのでしょうか。公表されている情報から分かることを列挙します。
(1)ハイブリッド型になった
蓄電池の単機能型とハイブリッド型の違いは以前書きました。
Powerwall 2は単機能型でしたが、Powerwall 3はハイブリッド型になりました。別々に導入するよりもトータルコストが安くなると期待されます。新築時に太陽光発電と一緒に導入するのが前提の我が家はハイブリッド型が前提になるので、Powerwall 3は大きく魅力が向上したと言えます。
太陽光発電のパワコンを兼ねるので、発電された電気を蓄電池に充電する際のロスが少なくなる利点もあります。
(2)自立運転時の出力が増えた
Powerwall 2の自立運転時出力(停電時の出力)は最大5kW(10秒までの短時間なら7kW)でした。これは決して小さいというわけではないのですが、オール電化の場合、停電時には「ブレーカーが落ちる」状態にならないように、電気の使い方に気を付ける必要がありました。例えば、エコキュートが動いて湯沸かししている間はIHコンロは弱火に限る、とか。
家庭用蓄電池として有名なニチコンの場合、主要モデルの自立運転時出力は5.9kWですから、それより少しパワー不足だったわけです。
Powerwall 3では最大9.69kWになりました。停電時にも、ほぼ何も気にせず電機が使えるレベルと言っていいでしょう。
オフグリッドにもちょっと興味があった私からすると、大変魅力のある仕様です。
(3)SII登録モデルになった
SIIとは、一般社団法人環境共創イニシアチブのことです。ここの登録モデルになっていることが条件になっている補助金が多いので、Powerwall 3は多くの場合補助金の対象になると期待されます。(補助金自体が地域によって有ったり無かったりするので話がややこしいですが。)
他にも、連結動作できる最大台数が10台から4台に減ったなどの違いもありますが、一般家庭には無関係ですね。
2.その他の特徴
太陽光発電のパワコンとしての能力は最大20kWでかなり大きいです。北米の大きな家が前提だからでしょう。その割にMPPT数(太陽光発電パネルを何系統に分割して接続できるか)が3と少ないのも北米仕様だからかな? 日本では容量はちょっと過剰なくらいで、逆にMPPT数は4に増やして欲しいケースも多いのではないかと思われます。
個人的に一つ気になるのが音です。蓄電池自体は音はしませんが、蓄電池「システム」となるとパワコンが含まれるので、その電気回路が音を出します。
Powerwall 2は「40dB未満」だったのですが、Powerwall 3は「標準50dB未満、最大62dB未満」とかなりうるさくなっています。
オーブルデザインの緑の家にするつもりの我が家は床下が最大1400mmあるので、この手の機材も床下設置するつもりでいました。機器自体は屋外設置前提の設計になっていますが、温度が安定している屋内に設置できるならそれに越したことはありませんから。
ただ、動作騒音が最大62dBもあるとなると話は別です。これはかなりうるさいです。いくらハイブリッドパワコンに機能アップしているといってもねぇ。
ちなみにニチコンのトライブリッドパワコンは40dBです。ハイブリッドパワコンがどうこうではなく、単にテスラがうるさいだけですね。
3.容量は初期実行容量だった
Powerwall 3の蓄電容量は13.5kWhで、これはPowerwall 2と同じなのですが、今回カタログを良く読んでみて、これが「初期実行容量」であることに気づきました。
初期実行容量とは何なのか? あまり知られていませんが、これは蓄電池「システム」ならではの概念です。
蓄電池システムでは、蓄電池にためた電気をパワコンでAC100VやAV200Vに変換して取り出します。接続する電気製品がそれでないと動かないからです。
つまり、蓄電池に10kWhの電気が溜まっていたとしても、それをパワコンでAC100VやAV200Vに変換するときにロスが生じるため、実際に電気製品に供給できる電力はパワコンの変換ロス分だけ減って、9.5kWhなどと少なくなってしまうのです。どのくらい減るかはパワコンの効率次第です。このロスを加味して、「AC100V/200Vで使える電力はいくら?」に換算したのが初期実行容量なのです。
例えば、ニチコンのトライブリッドにはいくつかの容量ラインナップがありますが、最新のT5/T6シリーズでPowerwall 3に近い容量を選ぶと14.9kWhという仕様があります。これがいわゆるカタログスペックですが、これは「バッテリーにためられる電気の量」です。実際に使うときにはパワコンのロス分だけ使える電気量は減り、初期実行容量は12.9kWhになります。Powerwall 3とわずかに逆転します。
実際に意味があるのは初期実行容量なのですが、見かけ上大容量に見える効果を狙ってか、ほとんどのメーカーがカタログには蓄電池容量(パワコンのロスを加味しない)を記載しています。これに対してテスラはフェアな姿勢と言えるでしょう。下手なことをするとすぐに訴訟される北米の企業ならではかもしれません。
4.価格競争力はありそう
今回のPowerwall 3の価格は工事費込みで180~190万円程度の様です。ニチコンの14.9kWhのシステムの場合、230~240万円くらいの様なので、Powerwall 3はかなり安いといえるでしょう。
Powerwall 2はSII登録品でなく、補助金がもらえないなどの足かせがありましたが、Powerwall 3はそれもなくなり他社品と同じ土俵で戦えます。かなり売れるのではないかという気がします。
5.自分はどうするか
ハイブリッド型でなかったPowerwall 2にはあまり興味がなかったのですが、Powerwall 3は私から見てかなり魅力的です。ハイブリッド型になってコスパが良くなったのは勿論のこと、停電時(自立運転時)に9.69kWまで出せるのは大きいです。
我が家では選択の有力候補になると思っています。
気になる点を挙げるとすると、蓄電池寿命です。テスラはEVメーカですからバッテリーの性能も電気自動車レベルです。かつてはパナソニックの三元系リチウムイオン電池を使っていましたが、今は中国製のリン酸鉄リチウムイオン電池も使っていると聞きます(詳細はよく知りませんが)。Powerwall 3にはどちらが使われているのでしょう?
リン酸鉄リチウムイオン電池は同じ容量だと重いので電気自動車用には不利ですが、家庭用なら重さは関係ありません。一方、寿命の観点ではリン酸鉄リチウムイオン電池の方が一般的には有利と言われます。Powerwall 3はリン酸鉄リチウムイオン電池かな。
原理的に有利と言っても、本当に優れているかは何とも言えません。テスラが使っているパナソニック製は世界でも最高性能と言っていいでしょう。原理的に寿命に不利な三元系リチウムイオン電池ではありますが、実際には言うほど劣っていない可能性もあります。
ちなみに日本メーカの多くが15~20年保証をしているところ、テスラは10年保証です。
もう一点、迷う点はV2H対応ができないのはちょっと気になります。これをやるならニチコンのトライブリッドになります。我が家は今は電気自動車は所有しておらず、現時点で具体的な購入計画もないのですが、将来は何らかの形で電気自動車を購入することになるだろうなという漠然とした認識はあります。
そんな、あるかどうかも具体的でない話のためにテスラのコスパを手放すのか、というのは、実際に家を建てる時までには決めておかねばいけませんね。