自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

一条工務店のハイブリッド免震と長周期振動

私が免震住宅を購入するとしたら、それは多分一条工務店のものになるでしょう。(他のメーカで建てることになったら、費用的に免震を断念することになると思われるので。)
一方、前回考察した通り、一条工務店方式だと共振現象に注意が必要です。免震機構に共振周波数が存在するので、地震でその周波数の揺れがやってきたらヤバイことになる可能性があるからです。今回はこのあたりを考察します。

1.そもそも共振周波数は?

そもそも一条工務店のハイブリッド免震の共振周波数は、いくらに設計されているのでしょうか? これは設計した人に訊かないと分からないので、訊いてみました。営業さん経由でしつこく訊いてもらったところ、回答は下記。勿論、物件によって違いはあります。

  • 0.25Hz前後(0.23~0.28くらい)

つまり4秒周期くらいの揺れだと共振することになります。地震のいわゆる長周期振動にはこのくらいの周期のものがあり得るとされているので、確かに不安になる数字です。

なお、「建物自体の共振周波数は0.5Hz以下(←多分、「以上」の間違い)になるように設計している」とのこと。2秒周期以下と言うことですね。
実は免震機構の共振周波数に対して、建物自体の共振周波数が十分に高くないと、免震は正しく機能しません。(免震機構と一緒に建物自体も揺れて変形してしまう。) この回答だと建物自体の共振周波数は免震機構の共振周波数の2倍以上あることになるので、まあ、十分に高いと言っていいでしょう。
心配なのは長周期振動での共振だけですね。

2.摩擦力はどの程度か?

ハイブリッド免震の場合、建物を支えているスライダーの摩擦で振動エネルギーの吸収を行います。では、その摩擦はどの程度でしょうか? 公式な説明では「震度5弱以上で免震が効き始める」となっています。逆に言うと、震度4以下では免震としての機能はしないということです。ただ、震度は被害に応じた指標であって、揺れの強さ(加速度)に対応した値ではないので、よく分かりません。加速度が知りたいと言うことで、訊いてみました。回答は下記。

  • 明確な設計値はない。
  • 実験による結果では、約200gal以上で免震としての動作を始めることが分かっている。それ以下だと摩擦により動かない。
  • 但し摩擦はばらつきが大きく、また(摩擦に直結する)スライダの数は摩擦よりも耐荷重重視で設計しているため、一概に言えない。建物によるばらつきは大きい。

新潟県中越沖地震での加速度が1019galだったそうですから、その1/5の加速度くらいから機能し始めるわけですね。

3.共振は起こるのか?

200gal以下の加速度ではそもそも免震が動かないので、共振は起こりません。少なくともそれ以上の加速度が(しかも4秒周期で)発生して初めて共振が起こります。
では、長周期振動(4秒周期)の200galってどんな揺れになるんでしょうか?

揺れの周波数(周期)と加速度が分かれば、そこから「何cmの振幅で揺れたときにその加速度になるか?」を計算できます。高校数学で習った三角関数微分です。昔はすらすらできたんですが、完全に忘れていて、いくつかのウェブ・サイトにお世話になりました。
で、結論は下記です。(但しサイン波の場合。)

中心に対して片側81cm、振幅で162cmの揺れが0.25Hz(4秒周期)で発生したとき、200galになる。


地震の専門家でない身で断定的なことを言うのは憚られますが、とは言え、162cmの幅でしかも4秒周期で揺れる地震ってさすがに無いでしょ。どうでしょうか? 詳しい方、これを読んでいたら是非コメント下さい。
なお、仮に200gal
という数字に2倍の誤差があったとしても、振幅81cmを超える揺れがきて初めて共振が始まります。これでもなかなか無さそうな気がします。

あくまで私見ですが、一条工務店のハイブリッド免震では、長周期振動による共振で被害を受けることはないと考えます。
長周期振動はあくまで中層以上のビルの場合にのみ心配しておけばよいと思われます。

なお、上記は「免震が悪さをすることはない」と言っているだけで、「免震ががっちり効きます」とは言っていないのでお間違えなきよう。「長周期振動の場合、免震は全然効きません。でも、だからこそ悪さはしません」と言っているわけです。
長周期振動に効かない免震には興味が無い、という方であれば、「一条工務店のハイブリッド免震には用がない」が結論になるでしょう。但しその場合は一条工務店だけでなく、ほとんどの免震に用が無くなると思いますが。

ちなみに、あるかも知れない揺れとして0.25Hz(4秒周期)で振幅50cm(片側25cm)を考えてみると、62galです。このレベルなら、そもそも特別な対策は不要でしょう。

4.結論

と言うわけで、折角の免震が役に立たない地震は有り得るとしても、少なくとも免震が悪さをすることはないと結論づけられます。
普通の短周期振動の地震なら大いに効力を発揮するわけですから、それに対してお金を払うかどうか、という判断になりますね。

私の場合は‥‥、そもそも一条工務店で建てると決めたわけではないし、一条工務店で建てるとしても、総工費次第ですね。気に入らない内装を気に入るようにするために費用がかさんだら、免震は諦めざるを得なくなりますから。