自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

太陽光発電の価値(1)

今回は太陽光発電の意義について考察します。
と言っても、補助金やら売電やらを踏まえてどういう場合に元が取れるかといった話は既にあちこちで書かれているので、もうちょっと大局的な視点で考えてみます。あんまり風呂敷を広げすぎると手に負えないので、あくまで一素人の考えの及ぶ範囲と言うことで。

1.そもそも環境に優しいのか?

「環境に優しい」という表現は非常に情緒的で、個人的にはあまり好みません。「環境に対する負荷が小さい」と言うべきでしょう。環境を変えてしまう作用が小さいという意味です。
まあ、それはさておき、太陽光発電において「環境負荷が小さい」かどうかは、何を差し置いても「エネルギー的に元が取れるのか?」という視点が重要です。もうちょっと具体的に言うと、「製造~使用~廃棄までの一連の過程で使用する全てのエネルギーの合計に対して、発電するエネルギーの総量は本当に上回るのか?」ということです。これがマイナスだとやる意味がありません。

製造に使うエネルギーは、まあ何となく分かるでしょう。原料をどこかから採掘してくるところから始まって、原料の輸送、精製、そして太陽光発電パネルを製造する。更にパワーコンディショナーやケーブル、架台などの付帯装置を作り、屋根の上に設置工事を行う。その一連の過程で使われるエネルギー全てを合計したものです。
使用時に使うエネルギーとは、太陽光発電の場合、メンテナンスに必要なエネルギーということになりますが、ほぼメンテナンスフリーの装置ですので、ゼロに近いと考えて構わないでしょう。細かく言うと、(パネルより寿命が短い)パワーコンディショナーの交換や、もしかしたら施工起因の雨漏り修繕に要するエネルギーも加えるべきでしょうか。
廃棄に使うエネルギーとは、使えなくなったパネルを屋根から下ろして解体し、原材料に戻してリサイクルするのに必要なエネルギーです。

上記で必要なエネルギーがどのくらいか、個別の住宅について計算することはほぼ不可能ですが、「平均的には大体このくらいだろう」というのを何人もの専門家が見積もっています。ちなみに一番大きいのは製造に使われるエネルギーで、これは単結晶型とか薄膜型といった、太陽光発電パネルの方式によってかなり違います。
一方、設置された太陽光発電パネルが1年間でどれくらい発電するかは、既にかなりの実績データがあるので、割と正確に求められます。勿論、この数値も太陽光発電パネルの方式によって異なります。

以上2つの数字が分かれば、「何年でエネルギー的に元が取れるか(ペイするか)?」を算出できます。この計算結果をエネルギー・ペイバック・タイム(EPT)と言います。
この数値は太陽光発電パネルの方式によって異なりますし、計算の前提によってもばらつきはありますが、EPTはおおよそ1~3年程度とされています。つまり、1~3年以上稼働させればエネルギー的には元が取れ、そこから先は丸儲けというわけです。

太陽光発電パネルの環境負荷は小さいと考えて問題ありません。

2.コスト的にはペイしないのは何故か?

エネルギー的には僅か1~3年で元が取れるのに、今のところコスト的には15~20年くらいしないと元が取れません。補助金やら売電やらで、無理矢理10年程度でトントンになるようにしていますが、それだって税金などの形でコストは払われているわけですから、社会全体で見れば、15~20年くらいかかっていることに違いはありません。
この点を捉えて、「コストが高いと言うことは、結局エネルギー的にも損しているハズだ」と主張する人が今でも居ます。確かに火力発電の発電コストは7円/kWhくらいで、太陽光発電の30円/kWh程度に比べるとかなり安いのは事実です。低コストと言うことは、その分だけ環境負荷が低いような気もしてきます。この結論のズレはどこから出てくるのか? どこで考え違いをしているのか?

これは、突き詰めると現在の経済の仕組み自体に原因があります。
太陽光発電パネルの場合、コスト計算では製造~使用~廃棄に要する全てのコストを合計します。エネルギー・ペイバック・タイムの計算と同じやり方です。
一方、火力発電でコストを計算する場合、製造~使用までのコストは合計に含めますが、ある重要な廃棄物については、廃棄コストを払わなくてもいい事になっているのです。
では、火力発電から廃棄されるもののうち、廃棄時に費用を払わなくてもいい重要な廃棄物とは何か? もうお分かりですね。
それは二酸化炭素です。

二酸化炭素を費用ゼロで垂れ流しにしてもいいルールになっているからこそ、火力発電は低コストで運転が可能なのです。
もしも二酸化炭素の廃棄が有料になったら、例えば、「排出する二酸化炭素を全部吸収できるだけの森林を植林して維持管理せねばならない」となったら、火力発電の費用は跳ね上がることでしょう。具体的な金額の試算はしたことがありませんが、現在、大気中の二酸化炭素濃度が増え続けていることを踏まえれば、世界中の森林(などの二酸化炭素吸収源)を全て足しても足りないことは明白です。
となると、石油・石炭・天然ガスの使用量を大幅に減らさねばなりません。森林の「二酸化炭素吸収能力の権利」を持つ者だけがその分だけの化石燃料を燃やしていいとなれば、その権利は高騰するでしょう(実際、世の中はその方向に動いています)。そうなれば、火力発電も今のコストでは運転できなくなります。

まあ、そんな時代が明日直ぐに訪れるわけではありませんので、当面は「火力発電の方が低コスト」と思っておけばいいのですが、低コストだからと言って、環境負荷が低いとは限らないのです。少なくとも火力発電の場合はそうです。

-(2)に続く-