自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

太陽光発電は「有って当たり前の設備」になる-後編-

4.系統連系の制約が顕在化するのはもう少し先
 発電設備を電力会社の送配電網に接続することを系統連系と言います。以前も書いた通り、電力会社は電圧・周波数を安定化するために、発電量をきわめて精緻にコントロールしています。使われる電気と全く同じ量の電気を発電するように制御しておかないと、電気の電圧や周波数が狂ってしまうからです。
つまり、よく晴れて太陽光発電の発電力が増えたら、その分だけ火力発電や水力発電の発電量を減らさねばなりませんし、曇ってきたら火力・水力発電を増やして、常にバランスを取らねばなりません。大きなボリュームのある火力発電や水力発電にコバンザメする形でしか、太陽光発電は存在できないのです。(この制約は風力発電なども同じです。)
 
と言うわけで、導入量におのずと限界がある太陽光発電(などの再生可能エネルギー)ですが、問題は「その限界はどの程度か?」、です。
以前は、「全電力需要の3%程度が限界」などという主張を聞いたことがありますが、これはかなり余裕を見た、「ここまでなら絶対大丈夫」という話だったようです。では、実情に合った現実的な限界は、どのあたりになるのか?
これに対して目安を与えてくれる記事がこれです。(閲覧には無料の読者登録が必要です。また、技術者向けのウェブサイトのため、内容は少々専門的です。)
かいつまんで言うと、
  • 九州電力は最も再生可能エネルギーの導入が進んでいる区域である。最大電力需要が1,300万kWの九州電力管内で、既に導入された太陽光発電は200万kWになる。
  • 太陽光発電の実発電能力は定格の2/3くらいなので、九州全域が晴れるなどの好条件が揃ったときの太陽光発電の発電量は130万kWに達する。この時間帯の電力需要は1,100万kWなので、全体の12%程度を太陽光発電で賄う状況になる。
  • 近い将来の見通しとして、導入量は700万kW(内、太陽光発電は600万kW)まで増える。700万kWの受け入れは簡単ではないが、今後の技術開発を前提にすれば何とかなる。この700万kWは「限界」ではない。
  • 700万kWまで導入されたとすると、実発電量はピークで500万kWになり、全電力需要の半分近くを再生可能エネルギーでまかなう瞬間が生じるほどになる。
と言うわけで、定格電力換算で最大電力需要に大して半分強までは導入できる見通しがある様です。(この限界値は、各電力会社ごとの事情で変わってきます。火力・水力発電の比率が高いか低いか、などの事情です。)
最も導入が進んでいる九電管内で現状の3倍の太陽光発電を導入できる余力があると言うことは、日本全体の平均でいえば、まだまだ余力はあります。当分は系統連系の限界は訪れないと考えてよいでしょう。
 
5.今後は電力会社の役割が変わる
これはちょっと長期の話になりますが、今後は電力会社の役割が変わってくるでしょう。
先に紹介した九州電力の話に代表されますが、電力会社には太陽光発電風力発電の電力を買い取る義務があります。それが全電力の半分にも達するとなると、電力会社の役目として、発電の重要性は(無くなりはしませんが)相対的に下がってきます。
代わりに重要度が増すのは、電力供給を安定化する役目です。太陽光発電などの不安定な(言い換えれば品質の低い)電力を買い取り、安定化して品質の高い電力として販売するのが、電力会社の主要な役目になるでしょう。電力のトリートメント屋さんと言うわけです。
 
6.電力の買い取り価格は「割引価格」になる
以前も書きましたが、こうなった時に予想されるのが、「電力の買い取りは割引価格でしか引き取ってもらえなくなる」という状況です。何しろ、不安定な(=品質の低い)電力を買い取って、品質を上げてから販売するわけですから、電力会社はそのトリートメント代を儲けねばなりません。(このトリートメントには、実際にコストがかかります。) 販売価格を上げられないとなれば、「仕入れ価格」を下げねばなりません。(今は販売価格を上げていますが、これは再生可能エネルギーの導入促進のための時限措置です。いつまでもやるわけにはいきません。) なので、電力の買い取り価格は、将来のどこかの時点で割り増しどころか割引価格になるはずです。
どの程度の割引価格になるかはわかりませんが、「売るくらいなら自分で使う方がお得」になります。
 
7.蓄電池が一般的な時代が訪れる
 これも以前書きました
「売るくらいなら自分で使う方がお得」となれば、「使い切れない電力は売るのではなく、蓄電池に貯めておいて、自分で使おう」という発想も出てきます。蓄電池は(少なくとも今は)かなり高価なので、「そんなものに金かけるくらいなら、単価が安くても電力会社に引き取ってもらったほうがまし」でしょうが、蓄電池も徐々に安くなっていきます。そのうちに「蓄電池代を考慮しても、売るより自分で使う方が良い」となるかもしれません。
太陽光発電が「有って当たり前の設備」になった次は、蓄電池が同じ状況になるかもしれません。
 
8.ちなみに私は
 そんな将来を前に、私自身は「電気の完全自給自足ができないかな」と夢想しています。今は、自家消費の電力量を上回る発電をしていることをもって、「電気の自給自足」などと呼んでいますが、これは電力会社をバッファとして使うことで初めて成り立っている訳で、本来の自給自足とは呼べません。
私がやってみたいのは、十分な容量の蓄電池を備えることで電力を完全に自給自足することです。つまり、電力会社の系統に全く接続しないことを想定しています。
そんなことをして何のメリットがあるのかと言うと、実は何にもありません。必要な蓄電池の量と金額を考えるだけで、到底ペイしない取り組みになるでしょう。それなのに、何故やりたいかと言うと、単に面白そうというだけです。なので、他の人には到底お勧めできません。
これをやるとした時の最大のネックは、大容量のインバータ(バッテリーの直流電力から交流電力を生成する装置)が未だ無いことです。(桁違いに高価なものなら存在するようですが。) 大容量のバッテリーから大電力を取り出して、エアコンや電子レンジやIH調理機を同時に使用できるようにするには、かなり大容量のインバータが必要です。
これができる時代に早くならないかなぁと、夢想する日々です。