自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

太陽光発電の価値(3)

-(2)から続く-

今回は遠い将来の話を想像してみます。20年後に興味が無い人は読むだけ無駄ですのでご注意を。

5.補助金終了のずっと先にどんな時代が訪れるか?

そもそも太陽光発電による発電コストは、現在でも安いものなら電力会社から購入する電力とほぼ同じ24円/kWhくらいです。(1kWの太陽光発電パネルは、期待寿命である20年間の総発電量が約20,000kWhくらいになります。1kWあたりの初期費用が48万円なら、発電1kWhあたり24円の費用がかかる計算になります。)
これだと単にトントンというだけなので、消費者にとってはリスクを取って設置する意味がありません。当然、普及は進みません。
そこで補助金などの政策的なアシストによって、「10年くらいで元が取れる様に」しているわけです。10年目以降はトクになるなら、「リスクはあるけど設置してみよう」という消費者が出てきますので。

逆に言うと、実力でも「10年くらいで元が取れる」コストになったなら、補助金は役目を終えて終了されます。そこに到達するまで、恐らく4~5年くらいでしょう。(前回書いたように、割り増し価格による売電は4年後くらいには終了する様に制度設計されています。これは専門家が「4年後くらいにはそんなアシストをしなくても良くなる」と判断しているからこそです。勿論、状況に応じて延長や短縮の計画変更はされるでしょうが。)

その先はどうか?
補助金があろうが無かろうが、安定した需要の市場があれば、メーカ間の性能開発競争や価格競争は続きます。なので価格低下は続くと思っていいでしょう。
前回書いた通り、2020年頃には1kWあたり12万円程度の初期費用になっているのも夢物語ではありません。売電価格が24円/kWなら、5年で元が取れる価格です。その頃には「特別な事情が無い限り、太陽光発電パネルは付けて当たり前」になっていることでしょう。

さて問題は、「その頃に果たして売電価格は24円/kwのままだろうか?」です。
割り増し価格でないのは当然ですが、逆に「割引価格」でなければ売電できなくなる可能性があるのです。と言うのも、火力発電の発電コストは現状で6~7円くらいだからです。電力会社にしてみれば、一般家庭の太陽光発電から24円/kWで「仕入れ」てくるよりも、自分で火力発電所を作って発電した方が低コストなのです。にも関わらず、高い価格で電力を引き取ってくれるのは、太陽光発電パネルの普及を促進するという政策があるからです。(なお、火力発電のコストが6~7円/kWhと言っても、これは純粋に発電のコストだけです。他にも変電設備や送配電網の構築・整備に要するコスト、万一に備えた保守体制の確保など、様々なコストがあります。)

電力会社の立場では、「放っておいても売れるほど低コストになったんなら、我々が割を食って高い価格で引き取る必要ないよね」となるでしょう。

ところで、家庭に供給されている電源は、100V、50Hz(西日本は60Hz)で安定していますが、どうやって安定させているかご存じでしょうか? 実は、電力会社が電力の消費量を監視しつつ、それとバランスするだけの発電量を秒単位で(!)制御しているからこそ、家庭の電力は安定供給されています。電力は基本的に溜めることが出来ないので、「使われる分だけ作る」ことをしないと、電圧や周波数が上下してしまうのです。この意味で、お天気任せで発電量が大きく変動する太陽光発電は、電力会社にとっては非常にやっかいなのです。

そんなことを考えると、どこかの時点で売電は「割引価格」になることを覚悟しておかねばならないと思うのです。

そうなると、「24円/kWhで売れないなら、自分で使った方がいい」と言う発想になるのは自然な流れです。例えば、エコキュートは昼間動作させるのが当たり前、なんて時代が来るかも知れません。
更に推し進めて考えると、昼間作った電気を夜間に使えないか、という発想になります。先ほど「電気は溜めておくことが出来ない」と書きましたが、実は家一件分の電力くらいならバッテリーに溜められなくもないです。かなり高価ですけど。

鍵を握るのは電気自動車です。
三菱のi-MiEVは16kWh、日産のリーフは24kWhのバッテリーを積んでいます。これら電気自動車で使い古したバッテリーを、住宅用の蓄電装置として使い回してはどうかという話が産業界では検討されています。というのも、バッテリーは使うに従って劣化し、容量が減っていきますので、例えば容量が半分になったら、自動車用としてはもう使い物になりません。そうでなくても重いバッテリーを2倍も積んで走るわけにはいかないからです。
でも、住宅用の蓄電装置なら話は別です。半分の容量でもそれなりに使い物になりますし、何より足りなければ2倍使えばいいのです。重さの制約は特にありませんから。

オール電化住宅でどのくらいの電力を溜めておけば役に立つかを試算してみます。東京電力のデータから、電力使用量は月に600~700kWhくらいだろうと試算できます。700kWhとして1日当たり23kWhです。このうち、太陽光発電が発電できない時間帯に消費する電力が7割を占めるとすると、16kWhになります。

2022/08/28注

この記事を書いた当時、東京電力のウェブ・サイトにはオール電化にしたご家庭の平均電気料金が載っており、上記ではそのページへのリンクを貼っていました。しかし、その後、福島第一原子力発電所の事故でオール電化への風当たりが強くなったためか、当該ページは姿を消してしまいました。Yahoo!ブログからHatenaブログに引っ越したときに、ブログ内のデッドリンクの貼り直しなどをやったのですが、リンク先が消滅していてはどうにも出来ず、このリンクについてはデッドリンクのままにしてありました。

今回コメントでご指摘頂きましたが、オール電化の料金メニューを紹介したいわけではなく、オール電化家庭のおおよその消費電力量を算出したかっただけなので、すっぱりリンクを削除しました。

ちなみに当時、オール電化家庭の平均電気料金は月額12,500円くらいと書かれていたように記憶します。これと当時のオール電化の料金単価(確か深夜電力が¥9~10/kWh程度、昼間が¥28/kWhくらいではなかったかと)から、おおよそこのくらいの使用電力量ではないか、を逆算・推定しました。

電気自動車のお古のバッテリーは容量が半分になっているとすると、i-MiEVのものは8kWh、リーフのお古は12kWhです。自動車1台分のお古では夜間を完全にまかなうことは出来ませんが、半分以上は自家発電でいけるのですから、悪くない話ではないでしょうかオール電化でなければ、ほぼ全部まかなえる可能性が濃厚です。

電気自動車は今年が普及元年。10年後の2020年には今のハイブリッド車と同じくらいには売れていることは十分考えられます。とすれば、その更に10年後、2030年頃には、それなりの数の「使い古しバッテリー」が出回り始めることになります。太陽光発電の爆発的普及にはちょっと間に合わないかも知れませんが、組み合わせれば「電力の完全な自給自足」も夢ではありません。

ちなみに、完全な自給自足のためにどのくらいの太陽光発電パネルが必要か計算してみます。
太陽光発電パネル1kWあたりの年間発電量は約1,000kWhですから、1日当たりにすると2.74kWhです。先ほどの試算で、オール電化なら1日当たり23kWhの消費(昼夜の合計)ですから、単純計算で8.4kW
必要です。
これだけのパネルが載せられる家はちょっと無いでしょうね。残念ながら完全な自給自足は無理っぽいです。あえて言うと、一条工務店の夢発電なら可能かも知れません。
なお、1日当たりの消費電力量を平均すると上記の計算になりますが、現実には雨の日も曇りの日もありますから、電力が余る日と足りない日が出てきます。これを均すには数日分の電力を蓄えられるバッテリーが必要になり、これもかなり高いハードルです。
オール電化でなければ半分またはそれ以下で済むでしょうから、完全な自給自足もギリギリいけるかな?

そんなわけで、完全な自給自足はまだまだ難しく、電力会社にはまだまだお世話にならざるを得ないようです。
とは言え、こんな風に未来を想像してみるのも、なかなか楽しいと思いませんか?