自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

一条工務店の「夢発電システム」-前編-

次は家の性能について思うところを書こうとして書庫にカテゴリまで作りましたが、非常に興味深い新情報を入手したので、そちらを先に書くことにします。

ネタは一条工務店の「夢発電システム」です。これ、現在(2010/07/10)のところ一条工務店のウェブ・サイトには何も載っておらず、その他を探しても情報が少ないんですが、たまたま営業さんから話を聞くことができ、カタログももらえたので、全貌を把握することが出来ました。

 

1.「夢発電」とは何か?

一条工務店が販売する太陽光発電システムです。明確な確認は取れていませんが、後述する理由により、発電システム単体での販売は行われず、あくまでもこれから新築する自社物件だけに付けられるものだと思われます。

2.費用は一条工務店から借り、分割払いで返済する

「普通は住宅ローンに入れるんだから、他メーカの太陽光発電も一緒じゃん」という声が聞こえてきそうですが、最大の違いは住宅ローンの外側で設置費用を工面することができるという点でしょう。
通常、太陽光発電システムの価格は住宅の一部となり、その総額に対して頭金と住宅ローンでの支払いを計画することになります。ただ、頭金が少ない場合、十分な金額を銀行が貸してくれるとは限らず、その結果、太陽光発電を諦めざるを得ない場合もあります。そういった顧客に対して太陽光発電を諦めずに済む手段を提供するのが夢発電である、と捉えることが出来ます。似たようなケースで、A銀行は金利が安いけど融資枠が少なくて太陽光発電を諦めざるを得ない、B銀行は金利がやや高いが融資枠も多めで、太陽光発電を付けられる、と言った場合、従来ならA銀行の低金利太陽光発電の二者択一になります。しかし夢発電であれば、A銀行の低金利太陽光発電を両方選ぶことができます。
当然ながら、金を借りる相手が銀行ではなく一条工務店になるだけで、ローンの支払いが太陽光発電の分だけ増えることには留意する必要があります。

一条工務店から借りる金利が高ければ意味がありませんが、夢発電の利率は1%ですので、住宅ローンに含めて借りる場合とほぼ同じ金利です。その意味でも、「支払い能力はあるのに、銀行の融資担当者がボンクラで貸してくれず、住宅ローンの中に含めることができない人」に大きなメリットがあるものです。
なお、毎月の支払額は、以下のようにして決めます。

  1. 設置kW数、設置地域を踏まえて、想定発電量をシミュレーションする。パネル表面の汚れや経年劣化を考慮し、発電量は毎年1%ずつ低下する想定。
  2. 想定電力消費パターンを踏まえて、自家消費分と売電分に振り分ける。電力消費量には、家のQ値や坪数も加味している模様(空調による消費電力量が変わってくるので)。
  3. 自家消費分を「電力会社から電力を買わずに済んだことによる利益」として計算し、それと売電金額を合算したものを「発電額」と定義する。
  4. 上記の発電額を、夢発電における月々の支払額とする。

シミュレーションの精度に起因する誤差や、「今月は雨の日が多かったので予定が狂った」といった要因を別にして考えれば、月々の負担は太陽光発電を載せない場合と同じになります。
一般の太陽光発電でも、「太陽光発電の分だけ住宅ローンの借入額が増えても、発電による利益(上記でいう「発電額」)で相殺すると月々の負担はむしろ軽くなる」てな説明がなされることがありますが、考え方はそれと同じです。ただ、「発電額」を全額支払いに回しますので、住宅ローンより短期で返します。夢発電では支払期間を最大10年としているようです。その為、月々の負担は住宅ローンに含める場合よりも大きくなります。

なお、普通に住宅ローンに含めて払っても構わないそうです。勿論、現金も可。

3.とにかく大容量を載せられる

割り増し価格による買い取り制度が始まったため、太陽光発電はとにかく大容量を載せた方が早く元が取れることになりました。夢発電もこの点は同じですが、どうやって大容量を載せるかという点で、いくつかの工夫が見られます。

(1)屋根材になっている

太陽光発電パネルが屋根材になっています。つまり、屋根材(瓦など)を載せる部分には全部載せられます。片流れ屋根だったら、「屋根は全部太陽光発電パネルで、瓦は1枚も載っていない」という極端なこともできます。普通の太陽光発電パネルは、設置上の制約で屋根の周辺部分には載せられませんから、その分だけ夢発電の方が大容量にできます。
この、「屋根材になっている」というのが、先に「一条工務店の新築物件にしか載せられない」と推定した理由の1つです。既築物件で屋根を葺き替えてまでやろうという人は居ないでしょうしね。
 

(2)屋根形状を最適化する

これは夢発電にしかできないことではありませんが、片流れ屋根にして面積を稼いだり、大容量にするために軒を普通よりも張り出させたりします。軒が長くなる分の費用も夢発電システムの価格に含むのかを聞き忘れましたが、カタログの文言を読む限り含むと思われます(と言うか、含んでいて欲しい)。
軒の長さについては、屋根の寸法をパネル寸法の整数倍に合わせるための調整という意味合いもあると思われます。
 

(3)カーポートにも載せられる

車2台が停められるカーポートが用意されていて、その屋根が太陽光発電パネルになっています。これで2.6kW上乗せできます。都心部の方には無意味ですが、一条工務店は地方部の顧客が多い(多分)ので有力なオプションになるでしょう。
ただそうは言っても、車1台分のカーポートという小さめのオプションも必要だったのではないかと思います。地方部でも、車2台分のカーポートが設置できる物件はやや限られますから。
なお、価格は「普通のカーポートの価格+太陽光発電パネルの価格」との事でしたが、正確なところは不明です。


以上の工夫で、少しでも大容量を載せられるようになっています。
後述の通り、使っている太陽光発電パネルは薄膜型で、効率があまり良くないですから、同じ容量であればより広い面積が必要です。その為もあって、上記のような工夫が必要だったのでしょう。
カタログには以下のようなプラン例が載っています。全部片流れ屋根です。

  • 39坪、総2階のi-cubeに7.28[kW]と、カーポートに2.6[kw]で、計9.88[kW]。
  • 57坪、総2階のセゾンに9.36[kW]。
  • 36坪、総2階のセゾンに6.37[kW]。
  • 41坪、総2階のi-cubeに7.15[kW]。

一条工務店では、「7~8[kW]は載せるぞ!」と考えている様ですね。

参考までに、カタログに載っている設置例のパースが下記です。
イメージ 1
<i-cube>
39.39坪
家に7.28[kW]+カーポートに2.6[kW]
計9.88[kW]
屋根勾配は家、カーポートとも1.5寸


イメージ 2
<セゾンF>
56.63坪
9.36[kW]
屋根勾配3.5寸


どちらもかなり極端な片流れ屋根で、独特の外観になっています。こういうのも「機能美」と言うんでしょうか? まあ、私はあまり外観にこだわりがないので、気になりませんが。

4.安い

カタログによると、載せる量によってkW単価が異なり、以下のようになっています。なお、下記はパワーコンディショナーや工事費など全て含みです(消費税は別)。国や地方自治体の補助金は含んでいません。

5kW未満  44万円/kW
5kW    42万円/kW
6kW    40万円/kW
7kW    38万円/kW
8kW    36万円/kW
9kW    34万円/kW
9.88kW     32.24万円/kW


一般的には3~4[kW]載せることが多いでしょうから、それだと44万円/kWで、まあ安いと言えば安いですが、驚くほどではないです(一条工務店がやっているホンダソルテックのシステム(2020/04/27注:リンク切れ)も47.3万円/kWですし)。しかし、一条工務店の狙い通り7~8kW載せられれば36~38万円/kWとなり、これはかなり安いと言えます。
前述の通り、このパネルは屋根材になっており、瓦の代わりに載せることになります。その為、瓦の部品代と施工代が要りません。これが低価格を実現できる理由の1つでしょう。新築の場合には、極めて合理的な手法だと思います。

捕らぬ狸の皮算用をしてみましょう。目一杯の9.88kW(何故目一杯が10kWじゃないのかは不明)を載せて東京都大田区で建てると、

設置費用   32.24万円 × 9.88 = 318.53万円
国の補助金    7万円 × 9.88 =   69.16万円
都の補助金     10万円 × 9.88 =   98.8 万円
区の補助金    7万円 × 9.88 =   69.16万円
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差し引き負担額           81.4万円


となります。カタログに載っている支払いシミュレーションからおおざっぱに推定すると、上記の場合、2年も待たずに
元が取れることになります。未だ売電額アップ期間が8年も残っています。丸儲けです。

まあそんな極端な話は別にしても、国の補助金だけを想定した場合、10年で元を取るには5[kW]でちょっと足りないくらいという試算がカタログには書かれています。だからこそ7~8[kW]は載せる、という方針になっているのでしょう。

2010/10/03追記
何故、目一杯が10kWじゃないのか、その理由がどうやら分かりました。(推測ですが。)
設置事例のkW数やパースのパネル設置枚数を数えてみると、夢発電で使っている太陽光発電パネルは、1モジュール当たりの出力がどうやら130Wの様です。(全ての設置事例が130Wの倍数になっています。)
一方、国の補助金(7万円/kW)受給と割り増し価格による売電が出来る条件は、どちらも「総容量が10kW未満のシステム」でなければなりません。9.88kWのシステムにもう1枚モジュールを追加すると10.01kWとなり、この条件から外れてしまうため、条件を満足するギリギリのところという意味で、上限を9.88kWに設定したのでしょう。

 

-後編に続く-