自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

オール電化の今後-後編-

-前編から続く-

 

3.オール電化のアキレス腱を強化する

エネルギー源を一本化するのが妥当とは言っても、それが「切れ易いアキレス腱」ではちっともトラブルに強いとは言えません。
幸い、電気は災害時の復旧が比較的早いので、「どちらかと言えば切れ難いアキレス腱」だと言えるでしょう。

では、その切れ難いアキレス腱を更に強化する方法はあるでしょうか?
結論は、「多少なら切れ難くできる。少し未来の話をすれば、更に切れ難くすることが出来る見込みもある」です。

(1)太陽光発電

言わずと知れた自家発電設備です。太陽が照っている時間帯に限るとはいえ、電気が使えるのはトラブル時に助かります。
ただ、現在市販されている太陽光発電システムは、停電時の使い勝手がかなり悪いです。具体的には、宅内の通常のコンセントからは電力が取れず、パワーコンディショナーの専用アウトレットからしか取れません。しかも、1,500Wが上限です(実際に3,000W発電していようが5,000W発電していようが、使えるのは1,500Wまでです。勿論、1,500W以下しか発電していなければ、発電している分しか使えません)。この妙な制約を解消した新型モデルを早いところ作ってもらいたいものです。
 
(2)蓄電池
これは現時点ではあまり一般的ではありませんが、数年以内にはもう少し一般的になってくるはずです。(開発段階のものとしては、例えばこういうのがあります。) 太陽光発電で発電した電力を溜めておき、夜間に使うという形で運用すれば、太陽が照っていない時間帯も電気が使えるようになります。
但し、これをやるには太陽光発電はかなり大容量が必要になります。何しろ、昼間その場で使う分だけでなく夜間の消費分も昼間のうちに発電しておかねばなりませんので。更に、蓄電池自体もかなりの容量が必要です。費用との兼ね合いになりますが、十分な大容量であれば、「1日くらいは雨が降っても大丈夫」となるでしょう。(勿論、節電する前提ですが。)


太陽光発電も蓄電池も決して安くないので、「一家に1台は当たり前」になるには何十年レベルの時間がかかるでしょう。その意味で、災害対策の本命というわけにはいきません。ただ、これから新築しようという私のような立場の者にとっては、こういう姿をイメージしておくのは有用だと思っています。少なくとも太陽光発電は今や特別なものではなくなっていますから、あとは蓄電池です。こちらは太陽光発電と違って後から導入するのも比較的容易ですので、将来のオプションとして考えるのも良いでしょう。

4.どの程度の規模の設備が必要か?

今、閲覧できなくなっていますが、東京電力のウェブ・サイトには、「オール電化にしている家庭の平均の電気代は月当たり12,500円」というデータが載っていました(金額はうろ覚えですが、大きくは外していないはずです)。ここから、オール電化住宅の平均的な電力使用量を計算してみます。

東京電力オール電化用契約プラン(電化上手)では、昼間9.17円/kWh、朝晩23.13円/kWh、昼間28.28円/kWhです。オール電化住宅ですので、大半は夜間につかっているハズですから、夜間7割、朝晩2割、昼間1割と仮定します。
ここから電気使用量を逆算すると、月当たり901kWhになります。(夜間631kWh、朝晩180kWh、昼間90kWhです。)
オール電化住宅の場合、太陽光発電を付けているケースも多いでしょうから、実際の電気使用量はこの平均値よりも多いと思われます。ここではきり良く1,000kWhとしてみましょう。

本来、季節毎に電気の使用量は違いますが、簡単のために単純に割り算すると、1日あたり33kWhの使用量です。
これを賄うために必要な設備の規模を簡単に試算します。

(1)太陽光発電の必要量

必要な設備の規模は、「最も発電量が少ない月」を基準に決める必要があります。
シャープの発電量試算サイトで東京都の条件で試算すると、11月が最も発電量が少なく、276kWhです。つまり1日あたり9.2kWh。これは3.91kWシステムでの値ですから、1kWあたりだと2.35kWhになります。
1kWあたり2.35kWhなので、33kWhを発電するには14kWのパネルが必要という試算結果になりました。
うーん、さすがにこれほどの太陽光発電パネルを載せられる家は、費用的にも屋根の面積的にもなかなか無いでしょう。
1日あたり33kWhというのは平時でものですから、非常時は節電に努めて半分に抑えるとしても7kWのパネルが必要です。これでも可能な家は限られますね。

(2)蓄電池の必要量

「1日あたり33kWh」の内、太陽が出ていない時間帯に使う電気は溜めておく必要があります。
先の前提では、朝晩と夜間の合計9割がそれに該当するので、つまり30.7kWh
の蓄電池が必要と言うことになります。これはかなりの量です。
ただ、蓄電池を使う場合、「電気を使う作業はなるべく昼間に済ませておき、蓄電池の必要量を最小限にする」という生活スタイルになるはずですから、現在のオール電化の電力消費パターンとはかなり異なるはずです。どの程度になるかはよく分かりませんが、ここでは「6割が昼間、4割が朝晩及び夜間」としてみましょう。
この場合33kWhの4割、つまり蓄電池の必要量は13.2kWhとなります。非常時は節電に努めて半分に抑えるとすれば6.6kWhの蓄電池が必要です。先
ほどリンクしたパナソニックの試作品は9kWhなので、この程度なら非現実的な値ではありません。(パナソニックが翌年2010年のCEATECで発表したものは、容量が6kWhに減っていました。コストを気にしたのかも知れません。)
天候不順などに備えるには数日分の蓄電をしたいところですが、その場合は蓄電池の必要量は数倍に跳ね上がりますので、そうなるとさすがに非現実的な量になってしまいそうです。
ちなみに、電気自動車のバッテリーを住宅用の蓄電池としても使い回そうという構想も世の中にはあります。例えば日産リーフのバッテリー容量は24kWhなので、これなら節電前提で1.5~2日分くらいにはなりそうです。

 

5.まとめ

完全にエネルギーの自給自足をするのは、太陽光発電パネルと蓄電池の必要量が多くなりすぎて難しそうですが、非常時に節電しながらの前提であれば、最小限の生活を維持することはどうやら可能です。
そう言う可能性を持っている点が、オール電化住宅の持つ利点の1つです。
見落とされがちですが、エネルギー源を電気にする最大の利点は、供給源の多様化が図れることにあります。石油や天然ガスだけでなく、太陽光や風力、地熱、潮力、そして原子力などなど。多様化しておけば、「どれか1つがダメになっても、残りで何とかカバーできる」という状態を作りやすくなります。ましてや、天然資源に依存する割合は、ある程度下げておかねば、安全保障上も問題が出ます。
オール電化という技術は、そう言う文脈で捉えるべきものだと私は考えています。