自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

オール電化の今後-前編-

既にあちこちで書いている人も居るので、今更という気もしましたが、随分偏った意見が多い気もしますし、自分の考えを整理する意味でも書いてみるのは悪くないかなと思います。
今回のテーマは、今後、オール電化はどうなるの?です。

1.結論

今回は結論から始めます。私なりの結論は下記です。

特にどうにもならない。

つまり、今まで通りって事です。巷では、原発の見直しが不可避だからオール電化には急ブレーキがかかるといった意見が散見されます。一見もっともらしい主張です。でも、オール電化を選ぶかどうかは、目先の数ヶ月の話ではなく、今後数十年の話をしているわけです。電力不足や輪番停電は未来永劫続くわけではないのですから、現下の状況がちょっとくらい逆風に見えても、大局的に見ればオール電化は今後も今まで同様に推移していくはずです。

ところで世の中には、福島第一原発の事故を契機に、「オール電化を選ぶ奴は原発推進派だと自覚しろ!」なんていう頓珍漢な主張をする人が居ます。「我が家はガス併用だから原発の世話にはなっていない」とでも言うのでしょうか? 電力は全て自家発電というなら未だ分かりますが、電力会社から電力の供給をしっかり受けているくせにその言いぐさは無いでしょう。
それに、電気は自宅で直接使うだけでなく、工場や商店など、我々の生活を支えるあらゆる場所で使われています。その内の3割が原発由来のものだと言うことは、今の日本に原発の世話になっていない人など居ないと言うことです。IHコンロとエコキュートを使っているかどうかで原発推進派と反対派に分類しようとするのは愚かなことです。
また、「節電すれば原発は直ぐにでも止められる」とのたまう御仁もいらっしゃいます。確かに現在東日本では、「快適性を犠牲にしてまでも節電する」というものすごい努力がなされています。でも、そこまでやっても昨年比で1割減になったかどうかというくらいです。工場などでの消費があるので、家庭でいくら頑張っても限界があるんですね。(工場はもともと家庭よりも省エネが進んでいますし。) と言っても、工場を止めると働いている人の給料が払えなくなるので、節電どころではない大問題になります。
結局、節電で対処するなんて、そんな簡単にはできません。
また、火力発電所を作ればいいという話も、そう簡単にはいきません。二酸化炭素の排出がどうこうという話もありますが、それ以前にどうやって十分な量の石油や天然ガスを安定的に確保するかという課題があります。
原発が事故ったからと言って、石油が湧いて出るわけではありません。ましてや、中国やインドなどの急激な経済成長に起因して、石油や天然ガスは奪い合いになっています。
原発を止めるのは、数十年先の話としてならともかく、ここ数年の話としては有り得ません。

 

2.災害に強い? 弱い?

良くある意見が、「エネルギー源を電気だけに頼るのは危険。ガスと併用にしてリスクを分散すべきだ」というものです。オール電化は災害に弱いと主張する根拠になっている論法がこれです。
一見もっともらしい主張なのですが、これ、信頼性工学の観点で言うと間違いです。(信頼性工学とは、モノが故障しないようにするにはどうすべきか、といった課題を扱う学問です。)

「両方あるから、どちらかがダメになっても大丈夫」と言えるためには、両方が同じ目的に使えないとダメです。つまり、

という感じで、あらゆるものが「電気でもガスでもOK」という風になっていて初めて「両方あるから大丈夫」と言えるのです。信頼性工学の用語で「二重化」と言います。これなら確かにリスク回避として大きな意味があります。
しかし、一般家庭でそんなことをやっている人はまず居ませんので、二重化にはなっていないのです。なのでリスク回避にはなりません。

冷静に考えれば簡単に分かるのですが、以下の中で一番トラブルに強い家、弱い家はそれぞれどれでしょうか?

  • 電気だけで生活の全てがまかなえる家。
  • 気とガスの両方がないと、生活の全てをまかなえない家。
  • 電気とガスと灯油と薪と炭が全て揃って初めて生活が成り立つ家。

お分かりでしょうか? 必要な項目が増えれば増えるほど、トラブルの可能性は増えるのです。なので、エネルギー源を何か1つに集約した上で、そのアキレス腱を補強するというのが、信頼性工学の観点では妥当なアプローチと言えます。(勿論、前述の通り、給湯も暖房も調理も、全てが二重化されているのがベストです。ただ、コスト的に現実的ではありません。)
そしてどれかに集約するのであれば、その候補は今のところ電気しか有り得ません。その意味で、オール電化こそがトラブルに最も強い家だと言えるのです。(より正確に言えば、そうなる可能性が高い家、という事です。)

勿論、「暖房」など、部分的な二重化なら容易なモノもあります(エアコンと石油ストーブが両方あるなど)。その場合、「暖房に関してはトラブルに強い」と言えます。それはそれで災害対策として十分に意味のあることです。

エネファームなら「ガスへの一本化」が出来そうな感じがします。
しかし、現状のエネファームは動作に外部電源が必要で、停電時には使えません。と言っても、外部発電機を用意したのでは、そもそも一本化になりません(発電機用のガソリンや軽油が必要)。災害対応のためには仕様を抜本的に変えねばなりません。
しかも、エネファームは発電量が最大でも700W程度しか無く、いくら何でも非力すぎます。
当分は候補になり得ません。


-後編に続く-