自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

エネファームにメリットはほぼ無い-前編-

前回エネファームの効果を一般家庭のエネルギー消費をモデルに計算してみたいと書きましたので、それをやってみました。
給湯器にエコジョーズを使い、電気は電力会社から全部購入するという最も一般的なケースに対し、エネファームなどの家庭用発電機を使うと、ガスの消費量がどう変化するかという比較です。
 
1.計算の前提
一般家庭でどの程度エネルギーを使っているのか、その平均的なデータをモデルケースとして使います。資源エネルギー庁のウェブ・サイトに、こんなデータがあったので、ここから2011年度の数字を拾って使います。抜き出した数字が下表です。
 
イメージ 1 イメージ 2
今回計算に使うのは上記の黄色部分の数字です。尚、どちらも2011年度の数字なのに、年間のエネルギー消費量の合計値が微妙に違うのはどうしたことでしょうか。まあ、1%未満の僅かな違いなので、今回は無視して話を進めます。集計の際の四捨五入か何かが原因だと思うことにします。
ところで今回の話とは無関係ですが、このデータによると2009年度から2011年度の2年間で、家庭のエネルギー消費量は10%も増えているんですね。にわかには信じがたい急激な伸びです。震災後には再度省エネが進んでいる気もしますが、とにかく、家を建てるなら省エネの家にしたいものだと改めて感じました。
 
もう1つ使うのは、エコジョーズエネファームの効率の数字です。ガス会社や機器メーカのウェブ・サイトから引用しました。今回は、ガスエンジン型の発電機兼湯沸かし器であるエコウィルもついでに計算します。
 
イメージ 3
2.計算の進め方
前述の数字を基に、以下の考え方で計算を進めました。
 
(1)自宅でのガスの消費量を計算する
各機器は給湯の必要量を基準に動作しているので、給湯に使うエネルギー10,855[MJ/年]と、各機器の給湯効率の数字から、ガスの消費量が計算できます。(但し単位は[m3]ではなく、[MJ]です。)
 
(2)自家発電量を計算する
ガスの消費量が分かれば、発電効率の数字を使って発電量を計算できます。(単位は[kWh]ではなく、[MJ]です。)
 
(3)発電所でのガスの消費量を計算する
電気の消費量が分かっているので、これから(2)の結果を引けば、電力会社から買わねばならない電力量が求められます。
ここで、発電所の効率を50%とすれば、発電所で燃やすことになるガスの量も分かります。
発電所の効率をどう置くかは、立場によって変わってきます。まず、天然ガスか石炭か。更に、年式によって効率が違うので、業界平均値を使うか、最新型の数字を使うか。
ここでは、「天然ガスを燃やすのに、最も適切な燃やし方はどれか」という観点で、天然ガス火力発電の数字を使います。更に、「今後推進すべき方式はどれか」の視点で、最新型の発電所の数字を使います。
最新の天然ガス火力発電所の効率は、約60%です。但しこれは低位発熱量基準なので、高位発熱量基準に換算して約54%、更に送電ロスを加味して前述の50%としました。
 
(4)ガス消費量の合計を計算する
自宅で燃やすガスの量が(1)で分かっています。更に発電所で燃やすガスの量が(3)で分かります。両者を足せば、消費するガスの総量が分かります。
この数字を、各方式毎に計算して比較してみようというわけです。
 
3.結果
結果は下記の通りです。表の中に前述の計算手順に沿った途中の数字を入れてあります。
 
 
イメージ 4

「しっかり節約できてるじゃないか。何が『エネファームはダメだ』だ。いい加減なことを言うな」という声が聞こえてきそうです。
 
確かに、ガスの消費量自体は減る結果になりました。しかし問題はその量です。
上記の、5,077及び6,996[MJ]という節約量は、[m3]に換算するとそれぞれ113、155[m3]になります(天然ガスの燃焼熱を45[MJ/m3]として換算)。
ガス単価を130[円/m3]とすれば、それぞれ約14,600円、20,200円です。1年当たりの節約がこの程度では、元を取るまでに100年くらいかかってしまいます。話になりません。(実はこの効果金額の算出には重要な間違いがあるのを意図的に無視しているのですが、それは次回に。)
 
費用はともかく、ガスの使用量が減るなら資源の節約になるし、CO2排出量の削減にもなるからそれで良し、という立場もあるでしょう。
しかし、エネファームのような工業製品の場合、機器の価格が高いのは機器の製造に使っているエネルギーが多いからだと考えてほぼ間違いはありません(勿論、金額に比例するような単純なものではありませんが)。つまり、エネファームが高価なのは機器の製造時に大量のエネルギーを消費しているからであって、使用時に少々の節約が出来たところで、トータルではエネルギー喰いになっている可能性が非常に高い機器なのです。
 
費用面では高くつき、エネルギー消費の観点でも効果がマイナスの可能性が高い。私がエネファームに否定的な理由の1つがこれです。
 
4.将来はどうなる?
上記の試算では発電所の効率を50%としましたが、近い将来、これは60%くらいに上がってくる見込みがあります。トリプルコンバインドサイクルと呼ばれる方式です。(リンク先の資料では「効率70%」とありますが、これは低位発熱量基準なので、高位発熱量基準に換算し、更に送電ロスを加味すると60%くらいになります。)
発電所の効率が60%になると前述の結果がどうなるかというと、節約効果が半分以下になります。PEFC型で2,559[MJ/年]、約7,400[円/年]の節約、SOFC型で3,119[MJ/年]、約9,000[円/年]の節約になります。
 
比較している一方だけ将来の性能にするのは公平ではありませんね。
ではエネファームの性能がどの程度まで向上すれば先ほどの節約効果が維持できるか逆算してみると、「発電効率53%、給湯効率28%、総合81%」になれば、約20,000[円/年]の効果金額になって、ほぼ先ほどと同じ節約効果になります。果たしてエネファームはここまで進化できるでしょうか? いえ、本当はエネファームはこれ以上に進化せねばなりません。この進化では、元を取るのに100年かかる状態をなんとか維持できるだけなのですから。
ちなみにSOFC型なら技術的には先ほどの数字は実現可能でしょう。しかし進化できたとしても、先ほどの「金銭的には元を取るのに100年かかり、エネルギー的にも僅かな改善」にやっと届くだけですし、進化できなければますます価値のない機器に成り下がってしまいます。
国が補助金を出してまで推進するものだとは、到底考えられません。