自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

太陽光発電パネルに対する各種の補助

来年度(2011年度)の太陽光発電パネルへの補助金がどうやら決まったようです。
1kWあたり4.8万円、対象はシステム価格が1kWあたり60万円以下のシステムです。
というわけで、今回は太陽光発電への補助について。

1.何のために補助があるのか?

根本的な話ですが、国として太陽光発電を推進する理由は、大ざっぱに言って次の3つです。

(1)CO2排出抑制

日本は京都議定書に署名しているので、CO2の排出量を減らさないと大きなペナルティを負います。このままでは、CO2の排出権を外国から購入する必要が出るなど、国として大きな経済的損失が出るため、石油や天然ガスなどの化石燃料の使用量を減らさねばなりません。
それには色々な対策が必要ですが、その1つが発電に使う化石燃料を少なくすることであり、その手段の1つとして太陽光発電に白羽の矢が立っています。
 

(2)エネルギー供給の安定性確保

一昨年のガソリン・灯油の高騰は記憶に新しいところです。中国やインドなど、新興国でのエネルギー需要が激増しているため、石油などの獲得競争は厳しくなっています。今は小康状態ですが、長期的に見て資源価格は上がることはあっても下がることはないと考えられています。
その意味でも、化石燃料への依存度を下げていく必要があります。今すぐに危機にはならないでしょうが、長期的な対策として、太陽光発電が期待されています。
 

(3)産業振興

太陽光発電パネルは比較的日本メーカが強い業界であるため、これを支援することで産業振興を図り、雇用創出や外貨の獲得につなげたいという目的です。税収の増加にもつながります。


そんなわけで、国として太陽光発電を推進していくという大きな方針があるわけです。(なお、(1),(2)については「太陽光発電で全て解決」とはなりませんが、いくつも実施する対策の中の1つとして重視されています。)

とは言え、太陽光発電は未だコストが高く、導入する人の経済的な負担が大きいのが課題です。そこで、補助金や高額な電力買い取り制度を整えることで、導入を推進する政策が実施されています。これが補助を行う直接的な理由です。
この補助は、「長い目で見たときに、導入した人に若干の経済的利益が出る程度」に設定されています。(あくまでも若干のメリットなので、条件が悪いとメリットが出ないこともあります。)
新技術を推進するに当たって、なるべく多くの人にパトロンになってもらおうという趣旨ですから、それほど大きな利益が出るわけではありません。それでも、「若干でも利益が出るならOK」と考える人や、「収支トントンでもCO2削減に貢献できるなら満足」という人に協力してもらえるなら、普及が進み、メーカの努力も進み、遠くない将来には補助無しでも産業として成立するようになるだろうと考えられているわけです。

補助のための資金は、税金などの形で国民が広く薄く負担することになりますが、それによる恩恵(エネルギーの安定供給や雇用創出など)もまた、国民全体に広く薄く降り注ぐことになります。

2.補助金制度

太陽光発電に対する補助の柱が導入時の補助金です。

日本では1994年から太陽光発電への補助金が実施されていました。その後、「メーカも力を付けたようだし、もう補助が無くても大丈夫だろう」ということで、2005年に補助金制度が終了されたとたん、諸外国のメーカに追い抜かれてしまい、慌てて2009年度から補助金制度を復活させた経緯があります。以前は世界最大の太陽光発電パネルメーカだったシャープは、今では世界第4位にまで下がってしまいました。世界一と言えなくなったシャープは、最近では「太陽光発電パネルの累積設置量世界一」というかなり苦しいコマーシャルを打つようになってしまいました。(そんな、過去の栄光にすがるようなCMって‥‥。)

ちなみに、日本のメーカはそんなにヘボいと言ってしまうと少々気の毒で、諸外国(特にヨーロッパ)では日本が補助金を止めていた期間も、ずっと手厚い補助金制度を続けていたんですね。その差で一気に逆転されてしまいました。(なら日本メーカもその外国で売りまくれば良かったじゃないか、という突っ込みはあるでしょう。とは言え、販売網の充実度などで地の利がある地元のメーカにはなかなか敵わないようです。日本で外国メーカの太陽光発電をほとんど見かけないのと同じですね。)
とは言え、ヨーロッパ各国では手厚すぎる補助金が財政の負担になるなど、いろいろと難しい問題に直面しているようです。いくらメーカが潤っても、それでは元も子もありません。再開された日本の補助金制度は、そういった他国の事情も参考にした上で制度設計がなされています。

私は他国の補助金システムを詳しく知っているわけではないので、それと比較してどうこうは言えませんが、日本の現在の補助金システムで最も良くできているのは、補助対象のシステムの価格上限を設けており、それを毎年引き下げている点でしょう。
つまり、補助金の対象になるシステムは、

2009年度は1kWあたり70万円以下(補助金は1kWあたり7万円)
2010年度は1kWあたり65万円以下(補助金は1kWあたり7万円)

2011年度は1kWあたり60万円以下(補助金は1kWあたり4.8万円))

に限られているのです。補助金を受けられないと事実上商売になりませんから、メーカは毎年毎年低コスト化に励まねばならないわけです。メーカをアシストしつつも、メーカが自助努力せざるを得なくなるこのルールは非常にうまく出来ていると思います。
補助無しでも産業として独り立ちできるようになる日まで、少しずつ条件を厳しくし、少しずつ補助金額を少なくする様に運営されていくことでしょう。

3.フィード・イン・タリフ

いきなり専門用語で恐縮ですが、太陽光発電風力発電で発電した電力を割増料金で電力会社が買い取る制度のことをフィード・イン・タリフと呼びます。日本でも2010年度から始まり、太陽光発電の普及を後押しする制度として機能しています。
補助金という制度があるのに、わざわざ別の制度を併用する理由は、想像ですが税金の負担を下げるためです。

補助金はその費用が税金から捻出されています。なので、補助金だけで必要な補助を全てまかなおうとすると、税金が大量に必要になってしまいます。
一方、フィード・イン・タリフは税金ではなく電気料金が原資になっています。つまり、割増価格で電力を買い取った電力会社は、その「割増分」を電気料金に上乗せして徴収するルールになっているのです。2010年度に電力会社が支払った「割増料金」は、2011年度に各家庭の電気料金に上乗せされる予定になっており、その金額は「月当たり100円にはならない程度」と試算されています。

結局は国民が広く薄く負担すると言う点で、フィード・イン・タリフと補助金は同じです。とは言え、フィード・イン・タリフは名目上、税金とは無関係なので、税収が低迷している昨今では非常に効果的な補助の方法というわけです。

4.いつまで、どのくらい補助するか?

現在の太陽光発電は、補助が無ければ元を取るまでに15~20年くらいかかります。
政府は「10年で元を取れるなら、かなりの人が太陽光発電を設置するだろう」と考えたらしく、10年程度で元が取れるように補助金とフィード・イン・タリフは制度設計されています。そして実際、その読みは当たっていたようで、太陽光発電の設置量は政府の期待にほぼ添うように伸びています。

逆に言うと、補助が無くても10年程度で元が取れるまで低コスト化が進めば、補助は要らなくなるハズです。(「補助」という言葉が興味を惹き付けている面もありますから、一概には言い難いですが。)

では10年で元が取れるには、設置費用がどの程度になればいいのでしょうか?
太陽光発電パネル1kWあたりの年間発電量は、だいたい1,000kWhと言われています。10年で10,000kWhです。補助無しの前提ですから、フィード・イン・タリフも無い前提です。その場合、作った電気の価値はざっと24円/kWhですから、1kWのパネルは10年間で24万円の電気を生み出すことになります。
つまり、24万円/kWが「補助無しでも10年で元が取れる」ラインです。一般的な4kWを載せる場合で96万円ですね。

現在の市場価格の半分以下ですから、随分頑張らねばならないことになりますが、実は近い将来に十分実現可能と考えられています。例えば、「2020年までには75円/Wにできる」と主張するメーカがあります。1kWあたり何と7万5千円です。これはパネル部分だけの価格でしかも工場出荷価格ですから、これに流通コストが上乗せされますが、とはいえ、パワーコンディショナーや工事費など、諸々を足しても合計24万円には収まるでしょう。

そんなふうに自立できる産業になるまでのあいだは、政府は補助を上手く組み合わせて、きちんとアシストして欲しいものです。
また、産業界も、それに応えて十分な努力をして欲しいと思います。

5.おまけ

1kWあたり24万円が10年で元が取れる価格なのですが、私自身は以前も書いた通り、最終的には5年くらいで元が取れる様にすべきだと考えています。つまり1kWあたり12万円です。(一朝一夕には無理でしょうが、中長期的な目標としてです。)

1kWあたり12万円にせよ24万円にせよ、それらの実現に向けて最大の障害になりそうなのは、実はパネル自体の価格ではなく、設置台や工事費だと言われています。
というのも、パネル自体の価格は、現状で既に1kWあたり15万円程度まで下がっているのだそうです。しかも価格が高いとされる結晶系のもので。(これは工場出荷価格ですから、流通コストを上乗せせねばなりませんが。) にも関わらず、現在の設置価格が60万円前後もするのは、設置台などの周辺部材を含む工事費が高いからに他なりません(パワーコンディショナーやケーブルなどの材料費もありますが)。これではパネルがタダになっても、システム価格は40万円以上することになってしまいます。話になりません。

なので、今後十分に太陽光発電を低コスト化するためには、何よりも工事費の低コスト化を頑張ってもらわねばならない訳です。
その意味で、夢発電の様な屋根材一体型のシステムには期待大です。何しろ、工事費が等価的にタダになるのですから(配線工事費などは別枠で必要ですが)。しかも瓦の材料費も浮きます。実質的な負担額は大きく圧縮できます。(但し新築の場合に限りますが。)

補助のおかけで随分と成長してきた太陽光発電業界ですが、今後は今までと違う苦労が立ちはだかりそうです。