自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

耐震性と共振周波数の関係-前編-

今日の話はちょっと難しいです。その名も「共振周波数」という難しい用語が登場します。今回は「共振周波数」という概念を使って、地震対策を読み解いていきます。

1.共振周波数とは?

なるべく分かり易く共振周波数の概念を説明しましょう。
先ず、竹ひごを思い浮かべてください。小学生が工作に使う、あれです。それを適当な長さに切って、一方の端に重りを取り付けて振り子を作ります。そして反対側の端を持って左右に揺らしてみます。下図のような感じです。

イメージ 1
さて、ここからは想像力をたくましくしてください。手近に似たような材料があれば、いっそのこと実際に作って試してみるのもいいでしょう。
ここで肝心なのは、竹ひごを揺らすペースです。専門的には周波数と言い、単位は[Hz](ヘルツ)です。竹ひごを持った手を、1秒間に1回往復させるペースを1[Hz]と言います。1[Hz]はかなりゆっくりしたペースですね。1秒間に2往復なら2[Hz]、3往復なら3[Hz]というわけです。人の手で竹ひごを揺らす場合は、5[Hz]くらいが限界でしょうかね。

さて、あなたが作った振り子を揺らしてみるとき、ある特定のペース(周波数)で揺らすと、竹ひごがしなって大きく揺れるポイントがあることに気づくでしょう。そのペースで揺らす場合、手をほんの数cm揺らすだけで、重りは数十cmも揺れる事になるはずです。もしかしたら竹ひごがしなりすぎて折れてしまうかも知れません。
この「特定のペース(周波数)」のことを、その振り子の「共振周波数」と呼びます。共振周波数で手を動かせば、手の振動のエネルギーが効率よく振り子に伝わって、大きく揺れることになるわけです。
一方、共振周波数よりもずっとゆっくり揺さぶった場合は、重りは手の動きと同じくらいしか動きません。手を10cm
の幅で揺らせば、重りも揺れますが、同じく10cmほど揺れるだけです。
逆に共振周波数よりもずっと速く揺さぶった場合は、重りは手よりも小さな動きしかしなくなります。手を10cmの幅で揺らしても、重りは5cmくらいしか揺れなかったりします。もっとも、人の手でやる場合は、「共振周波数よりもずっと速く揺さぶる」というのがちょっと難しいですけどね。
イメージ 4
つまり、振り子を大きく揺らすには、その振り子の共振周波数で揺すってやれば良いと言えます。

地震と建物の関係も、ちょうどこの振り子と同じような関係になっています。振り子が建物で、揺らしている手が地面です。地震の時は、地面という「手」が建物という「振り子」を揺さぶるわけです。

もうお気づきでしょうか? 地震の揺れる周波数が、たまたまその住宅の「共振周波数」と同じだったとき、地震の揺れは効率よく建物に伝わり、建物は大きく揺れる(変形する)ことになります。そうなれば、程度次第で建物は倒壊するでしょう。(地震の周波数と建物の共振周波数が完全に一致しなくても、近ければ近いほど状況は酷くなります。)
逆に言うと、地震の時に建物をなるべく揺らさないためには、上図の右端の条件が成り立っていれば良いことが分かります。つまり、建物の共振周波数を、地震の震動の周波数よりもずっと小さくするのです。また、左端の条件であれば、ベストではないものの、少なくとも中央の場合よりはマシと言えるでしょう。

そんな理由で、その建物の共振周波数がどういう値であるかが、地震対策には非常に重要になるのです。

2.共振周波数は何で決まる?
では、建物の共振周波数は何で決まるのでしょうか? 実際の建物は非常に複雑なので、先ほどの竹ひごの振り子で考えてみます。
実際に何種類かの振り子を作って試してみればよく分かるのですが、結論は下記のようになります。
イメージ 2
イメージ 3
建物の場合は複雑ではありますが、傾向としては上記の竹ひご振り子と同じです。建物が高くて柔らかくて重いほど、共振周波数は低くなります。てことは、高層ビルは普通の戸建て住宅よりも共振周波数が低いのかというと、その通りです。

では、可能な限り共振周波数が低くなるような家を建てればよいかというと、なかなかそう簡単にはいきません。