自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

エアコン除湿の難しさ

再熱除湿エアコンは大したことないみたいな話を書きましたが、これは理由を紐解いていくと、そもそもエアコンによる除湿の難しさという話に行き当たります。
 
1.エアコンでの除湿の仕組み
そもそもエアコンで何故除湿が出来るのかというと、空気を冷やして結露させているからです。逆に言えば、結露させないと除湿は出来ません。もっと除湿したければ、もっと冷やす必要があるのです。どこまでの除湿が必要かによって、どこまで冷やさねばならないかが決まります。
 
私が良く参考にさせてもらっている鵜野日出男さんによると、絶対湿度で8~10[g/kg]にするのが快適性にとって重要とのこと(そしてその場合、温度は高くても低くても快適性にあまり関係ない)。私自身の経験では、ぎりぎり快適と言えるかどうか限界なのが12[g/kg](28℃、50%がこの条件)なので、鵜野さんの指針は妥当な様に思えます。
ここでは9[g/kg]を想定しましょう。
 
9[g/kg]にするために、何処まで冷やす必要があるでしょうか。空気線図を見ると、12℃だと分かります。12℃のときの飽和水蒸気量が9g。12℃ではこれを超える水蒸気は全て結露して取り除かれるからです。
つまりここまで除湿するためには、エアコンは空気を12℃まで冷やす能力が必要と言うことになります。
 
2.良く冷やせるエアコンは効率が悪い
エアコンはヒートポンプという仕組みを使って空気を冷やしたり暖めたりしますが、その効率は外気と室温によってかなり変わってきます。例えば冷房で、28℃の室内から33℃の屋外まで熱を運ぶとします。この「室内28℃」や「屋外33℃」といった温度が効率に影響します。定性的に言うと、室温が低いほど効率は悪く、外気温が高いほど効率は悪くなります。
効率の良いエアコンを作りたいエアコンメーカの立場からすると、むやみやたらに冷やすエアコンにすると不利になるわけです。
冷やした空気は部屋の空気と混じりながら吹き出されるので、12℃の空気がそのまま出てくるわけではないですが、とにかく、あまりキンキンに冷やせるエアコンにはしない方が効率の面では良いことになります。
効率重視であまり冷やせないエアコンの設計にすると、その分だけ除湿能力は低下することになります。
 
昨今のエアコンが再熱除湿を止めているのは、これが原因ではないかと推定されます。再熱除湿は冷やして除湿した空気を再度暖めることで、冷やさずに除湿だけを行う機能ですが、そもそも除湿能力が低いと、この機能には意味がなくなるからです。
効率も重要ですが、その代償として除湿能力が下がっているのだとすると残念なことです。
 
3.効率と除湿の両立を図ろうとする試みもある
高い効率を維持しつつ、除湿能力も最大限確保する取り組みも始まっているようです。私が気づいたのはダイキンの取り組みです。さすが、空調の第一人者。
その仕組みはこちらのページで説明してあります。ダイキンはプレミアム冷房と呼んでいますが、その中でも肝になるのはデシクル制御と呼んでいる熱交換器を部分的に使う動作モードです。
要約すると、
  1. 室温が設定温度まで下がると微弱運転になる。その場合はあまり冷やさないので、除湿が出来ない。
  2. 微弱運転時に熱交換器を一部だけ使う様にすれば、熱交換器(の使う部分)はよく冷えることになり、微弱運転でも除湿が可能になる。
という仕組みです。
設定温度到達後の冷房に必要な能力が0.3kWだったとして、3kWのエアコンを10%の能力で動かす場合、大量の空気を少しだけ冷やすことになり除湿できません。しかし、仮に0.3kWのエアコンがあったならば、それをフルパワーで動かせば、1/10の量の空気を充分に冷やすことになり、微弱運転でも除湿が可能です。
デシクル制御は、3kWのエアコンを0.3kWのエアコンであるかの様に見せかける技術と言って良いでしょう。(必要に応じて段階的に能力を変えられる様です。)
 
ダイキンは数年前から再熱除湿を止めましたが、この機能が実用化できた以上、今後も再熱除湿を使うことはないでしょう。確かにこれなら再熱除湿は不要です。再熱除湿は、除湿のために先ず冷やし、冷やしすぎたものを暖めることで温度が下がりすぎない様にします。しかしデシクル制御ならば、そもそも最小限しか冷やさずに除湿が出来るので、「再熱」の必要がありません。素晴らしいです。
とは言え、実際にこれで本当に十分な除湿能力が得られるのかは不明です。一度使ってみたいものですが、今使っているやつも買ったばかりですからねぇ‥‥。