自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

住友林業のモデルハウス見学

お次は住友林業です。

名前からして木造軸組構造、と思っていたら、確かにそれが主流ではあるものの、2×4や木造ラーメン構造までやっているそう。モデルハウスは木造軸組のものでした。

入って直ぐに目に付くのが無垢のフローリング。別に無垢のフローリングくらい、どのメーカでも出来るんですが(経験の多寡による施工品位の高低はあるにせよ)、こうやってモデルハウスに使われていると、ついつい採点が甘くなってしまいます。おっと、無垢フローリングのカットサンプルが
5、6種類くらい置いてあります。ああ、どれも良さそう。いかんいかん、何だかこれだけで良い家が建つような気がしてしまいます。

主力の木造軸組では、
壁一面にクロスハッチ状に木片を打ち付ける工法を採っているのが特長です。同社では「きづれパネル」と呼んでいて、これは何というか、小さな筋交いが大量にある状態と言ったらいいんでしょうかね。釘打ちの本数や、内装側の強度パネルとの組み合わせで、壁倍率5倍まで出せるそうです。
非常に特徴的なきづれパネルですが、これはモルタル外壁の場合に壁体内通気を確保するために使うのだそう。サイディングの場合は別の部分で通気を取るので、きづれパネルではなくDパネルと呼ぶ構造用合板の一種を使います。これも他との組み合わせで壁倍率5倍まで出ます。こうやって壁で強度を出すので、筋交いを使わないんだそうです。

そう言えば、先に訪問した一条工務店でも同様の手法で強度を高めていると言っていました。
木造同士で比べると、強度的にはパネル工法である2×4が強いと一般的に言われますが、住友林業一条工務店の場合はこと強度面に関する限り2×4レベルと言えるでしょう。間取りの自由度の高さは木造軸組の方が優れていると言われますから、2×4を主体にしているメーカは、うかうかしていられませんね。(ただ、そう考えると、何故住友林業は木造軸組とは別にわざわざ2×4をラインナップしているのか、理解に苦しみます。2×4にしか出来ないことがあるんでしょうかね?)

非常に意外だったのは、基本的に集成材を使っていること。てっきり、「お客さん、木の良さは何と言っても無垢材ですよ。集成材なんて本物の木じゃありません」とでも言うのかと思っていたら、逆でした。まあ、品質を安定させるためには無垢よりも集成材の方が良いのは自明ですから、それで良いとは思いますが、集成材であることを他社から攻撃されることもあるとか。他社って何処ですか?と訊いたら、「一条さんとかね」ですって。やっぱりね。あそこは無垢材にこだわりが有るみたいだから、どのメーカとは名指しせずとも、集成材には否定的な見解を出すでしょうね。あまり合理的な意見とは思えませんが。

一方で、住友林業のこの営業さんもいけません。一条工務店との比較の話になったときに、「あの緑色の柱は健康被害が心配ですよね」と加圧注入による防蟻処理を非難していましたが、それを言うなら、おまえんちの防腐・防蟻処理に使っている薬剤や集成材に使っている接着剤はどうなんだと突っ込みたくなります。
勿論、「当社の使っている材料は安全性を確認済みです」と言うでしょうし、確かにその通りだと思いますが、だったら当然他社も同じと考えるのが普通でしょう。まさか、自社以外は材料の安全性確認をやっていないなんて、本気で思っているのでしょうか? 困ったものです。こういう思い込みで他社批判する人と話をしていると、イライラしてきます。理屈の通った批判ならいいんですけど。

営業担当の個人的資質は別にして、住友林業としては全体的にかなり工学的な手法を重視しているようです。
例えば、建物や基礎に対して有限要素法による応力解析を設計段階で実施し、その結果に基づき、「基礎のこの部分には応力集中するから、鉄筋を増やしておこう」といった対応を取るそうです。確かに、こういうことをやるためには材料の均質性が不可欠で、無垢材を避けたくなるのは道理です。(無垢材はばらつきが大きく、そのため解析結果と現実の乖離が大きくなってしまいがちです。現実との誤差が大きすぎる解析は、何の役にも立たないばかりか、時として害を及ぼします。)

肝心の断熱性はQ値1.92と平凡。カタログで旧省エネ基準(1980年の規格)と比較して「こんなに凄い」と謳っているのがちょっと悲しい。気密性はC
値5.0以下と、更にショボイ。
営業に「もっと断熱・気密を頑張らないのか?」と訊いてみたところ、「家は断熱性だけではありませんから。どうしてもその性能が欲しいと言うことであれば、一条さんで建ててもらうしかないです。うちはいろんな項目のバランスがいいのが特長です」という答が返ってきました。
「(一条は)それだけの性能があっても、年間3,000
棟しか建ててません」とも。
確かに、断熱性・気密性が家を選ぶ唯一の理由という訳ではありません。それはおっしゃる通り。でもね、それは性能改善の努力を放棄しても良いと言う理由にはならんのですよ。しかも、断熱性は躯体強度に次いで「後からではどうにもならない」項目ではないですか。
どちらに軸足を置くべきかは、自明だと思うんですけどねぇ。(一条工務店の場合は内外装に力を入れなすぎと思いますが。)

住友林業に限らず、大手ハウスメーカが今ひとつ断熱性・気密性を頑張らない理由は、次世代省エネ基準があまり厳しい性能を要求していないからだと思われます。この基準は1990年に制定されたもので、今となってはちっとも「次世代」ではありません。初代である旧省エネ基準が1980年、2代目の新省エネ基準が1992年ですから、約10年毎に基準が改定され、厳しくなってきた訳です。そろそろ全面的な改定がなされても良い時期ですが、なかなかそうはならないのは何故なのか?
一説によると、一部の大手メーカ(特に鉄骨系)が今以上の高断熱・高気密住宅を造れないため、基準を今よりも厳しくすることに反対しているのだとか。「無用な性能追求は消費者のためにならない」と主張して。真偽の程は分かりませんが、今まであちこちのハウスメーカで話を聞いてきた感触、また、私自身の仕事上の経験(住宅業界ではありません)に照らしても、有りそうな話だなとは思います。
エネルギー供給不安と常に隣り合わせの日本にとって、省エネの追求は際限なく必要なものだと思うんですけどね。勿論、コストとのバランスは必要ですが、出来ているメーカがあるんだもん。無茶な要求じゃないでしょ。

そうそう。このモデルハウスには、2.5階とも言える広いロフトがありました。隠れ家的に使える心地良い空間です。これも住友林業でなければ作れないものではありませんが、「あ、いいなぁ」と思えると、そのメーカの印象も良くなるのが困ったものです。

ちょっと甘いけど、ここも一次選考通過で良いかな。
営業さんはイマイチだけど。