自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

窓からの日射量を概算する

無暖房住宅にできるだのできないだのと言う話を書きましたが、そもそも冬に無暖房にできる為には、十分な日射量が取り込めねばなりません。それ無くしては、建物の熱容量だの何だのは全く無意味な議論です。
では、普通に考えて、どのくらいのエネルギーが取り込めるのでしょうか? 今回はそれを簡単に計算してみます。

1.取り込める太陽熱の量はいくらか?

太陽からやってくるエネルギーは、日本の場合、1平方メートル当たりおよそ1kWだそうです(Wikipediaより)。条件の悪い冬至の場合、下図のような状態です。

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この条件では1[m2]の窓は冬至の太陽光0.855[m2]を通過させます(cos31.2°=0.855)。つまり、窓1平方メートルあたり、855Wの太陽熱が降り注いでいることになります。
降り注ぐ太陽光の一部は窓ガラスが遮りますので、それをさっ引く必要があります。以前引き合いに出したYKKapのデータでは、Low-Eガラスの中でも日射取得率の高いものは62%の取得率だったので、855×0.62=530Wとなります。
ここまでの結論として、窓面積1平方メートルあたり530Wの太陽熱を取り入れられると言えます。

細かく言うと、カタログの日射取得率とは垂直に入射した光線に対する数値であり、斜めに入射する太陽光に対しては数値が違ってきます。具体的には少し波長選択性が長波長側にずれ、結果、日射取得率は少し高くなるはずです。ただ、ここでは簡単のために62%の値をそのまま採用しました。そう大きくは違わないはずです。


上記は冬至という1年で最も条件が悪い日の話である一方で、1
日の中では最も条件の良い太陽南中の瞬間の話です。日中の平均としてはこの半分くらいと考えるべきでしょう。つまり265Wです。
冬至の昼は9時間43分(9.72時間)であり、この間平均して265Wの太陽熱を取り入れることができるので、窓面積1[m2]あたり、1日累積で2,576Whの太陽熱を取り入れることが出来ます。(当然ながら、昼間ずっと快晴だった場合の話です。)

2.必要な日射取得量はどの程度か?

空調機の必要能力のときに計算しましたが、Q=1.16(一条工務店相当)で40坪の場合、約3kWの熱逃げが生じます。Q=1.5なら約4kWです。
これはあくまで1年の中で最も条件が厳しい瞬間の話であり、1年中また1日中この条件というわけではありません。平均気温6.8℃を使って計算し直すと、Q=1.16の場合に約2kW、Q=1.5で2.6kWとなります。
それが1日24時間続きますので、1日で失われる熱量は、Q=1.16で48.5kWh、Q=1.5で62.7kWhとなります。

失われる熱とは逆に、内部発熱もあります。
住んでいるのは4人家族とすると、400Wの人体発熱があるので400×24=9.6kWhになりますが、1日のざっと半分は不在でしょうから、4.8kWhとします。
更に照明や家電、煮炊きによる発熱を平均400W×24時間=9.6kWhとして加算すると、内部発熱は19.2kWhあることになります。
結局、窓からの日射取得で補わねばならない熱量は、Q=1.16で29.3kWh、Q=1.5で43.5kWhです。

3.必要な窓面積は?

1と2から必要な窓面積が求まります。

Q=1.16の場合 29.3 ÷ 2.575 ÷ 0.9 ≒ 12.6 [m2]
Q=1.5の場合   43.5
÷ 2.575 ÷ 0.9 ≒ 18.8 [m2]

0.9で割っているのは、窓の面積のうち1割くらいはサッシなので日射取得に寄与しないと見なしたからです。
これは一日中快晴だった場合の必要窓面積ですから、曇りや雨の日があることを考えると、上記の2倍くらいは欲しいところです。以下では2倍確保する前提で考えてみます。

1.5
間幅の掃き出し窓なら2.55×2≒5.1[m2]くらいありますので、Q=1.16なら5カ所に設ければいいことになります。1F、2Fの南側の部屋各2部屋に設けて4カ所。あと1カ所は東側や西側に小窓を設けて何とか辻褄を合わせましょう。南に設ける窓より大きくなければ同じだけの太陽熱を得られませんから、面積は割り増しにします。これなら何とか「ほぼ無暖房」に出来そうです。

Q=1.5の場合は掃き出し窓7カ所強必要なので、ちょっと無理があります。無暖房は「天気がよい日に限って」という事にならざるを得ませんね。

4.まとめ

「ほぼ無暖房」を実現するためには、以下のようなことに留意すればよいことになります。

  • 「ほぼ無暖房」にするためには、Q値が1.2以下でないと難しい。その上で以下の条件を満たすこと。
  • 南側には可能な限りの窓を設ける。具体的には、40坪の建物で26平方メートル以上必要。間取り上無理なら、東西の窓で不足分を補う。
  • 窓のLow-Eガラスは日射取得係数の高いものを採用する。
  • 取得した太陽熱を十分蓄えられるように、建物の熱容量は可能な限り大きくする。RC造レベルであれば申し分ない。
  • 取得した太陽熱を建物全体に十分行き渡らせるよう、建物内の熱伝導を良好にする。

なお、大きく設けた窓が夏場の冷房負荷として深刻にならないように日射の遮り方を工夫する必要があるのは言うまでもありません。

と言うわけで、窓面積は何とかなりそうです。ただ、前提となるQ値のハードルは高く、また、熱容量、熱伝導についてはなかなか実現が難しい話になってしまいますね。
結局はそこに帰るのか‥‥。