自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

熱容量はどの程度必要か?

過去に必要な断熱性(Q値)はどの程度か?とか、必要な気密性(C値)はどの程度か?について考察を書きましたが、熱容量については同様に大切だと書いたくせに、どの程度が必要かを書いていないことに今更ながら気づきました。
そこで今回は、熱容量の必要値について考察します。

 

1.判断根拠はパッシブハウスになっているかどうか

そもそも熱容量とは、熱をどのくらい溜め込む事が出来るかという数値です。で、何のために熱を溜め込むかというと、「昼間の太陽熱を溜め込んでおいて夜間に放熱することで、暖房費を削減する」と言った形で活用するためです。こういう形で光熱費の削減を行う住宅のことをパッシブハウスと呼ぶそうです。(本当はパッシブハウスという用語にはきちんとした定義があるみたいですが、ここではおおざっぱに「大体そんな感じの住宅」のことをパッシブハウスと呼んでいます。)

「夜間の暖房に活かす」と言っても、暖房費がちょっとでも安くなればいいことにするのか、あるいは暖房費がゼロになる条件を求めるのか、判断の基準はいろいろあります。
ここでは、「平均的な日であれば夜間の暖房費が要らなくなる」という条件で、必要な熱容量を求めます。当然、平均よりも寒い日の場合は暖房が必要になりますが、その程度はまあいいか、と考えるわけです。

 

2.夜間に機械暖房が不要になるためには

ここでは2009年の東京都の気温データを使います。1月が最も寒く、平均気温は6.8℃、最低気温の月平均値は3.5℃です。つまり、平均的な1月のとある日の場合、1日の平均気温は6.8℃で最低気温が3.5℃と言うことです。ここでは、1日の平均気温ではなく、夜間の平均気温が知りたいのですが、直接の数字はありません。仕方がないので、平均気温と最低気温の真ん中が、夜間の平均気温だと見なすことにします。つまり、5.15℃です。

その他の条件は以下の通り仮定します。
・室温の基本は21℃とし、夜間の放熱により、明け方には1℃の室温低下を許容する。つまり、夜間の平均室温は20.5℃。
・建物のQ値は1.2[W/m2・K] (現在の私の本命である一条工務店FASの家での平均的な性能値)
・日没は17時、日の出は7時とし、この間の14時間が「夜間であり、放熱により室温が低下する時間帯」と見なす。

以上の場合、以下の様に計算できます。
まず、夜間の平均室温と平均気温の差を使って、夜間に放熱するトータルの熱量は下記になります。(床面積1平方メートル当たりの数値)。

1.2 × ( 20.5 - 5.15 ) × ( 14 × 3,600 ) ≒ 258 [Wh/m2]
1.2 × ( 20.5 - 5.15 ) × 14 ≒ 258 [Wh/m2]
(2012/11/02誤記訂正。不要な3600が式に含まれていたものの、計算結果は正しいという我ながら不思議な間違いでした。)


これだけの熱が失われたときに、1℃の温度低下が生じる熱容量は下記です(これも床面積1平方メートル当たりの数値)。

258 ÷ 1 ≒ 258 [Wh/K・m2]


つまり、床面積1平方メートル当たり258[Wh/K]の熱容量があれば、夜間の室温低下を1℃に抑えられることになります。

 

3.それってどの程度?

本ブログでたびたび引き合いに出している日本外断熱総合研究所(2020/04/19注:サイト主が転職したのか、ウェブサイトが全く別の個人ブログの様な内容に変わっています)のウェブ・サイトでは、延べ床面積120[m2]の住宅の場合で、RC(鉄筋コンクリート)造なら40[kWh/K]、木造なら5[kWh/K]だとしています。
これに対し、前章で計算した258[Wh/K・m2]というのは、120[m2]なら31[kWh/K]となり、かなりRC造に近い値だと分かります。

木造の5[kWh/K]が正しいなら、残りの26[kWh/K]は蓄熱材で補わねばなりません。熱容量を大きくする方法というのを過去に書きましたが、26[kWh/K]もの熱容量を実現できる可能性があるのは、事実上潜熱蓄熱材だけでしょう。
JOMO(2020/04/26注:現JXTGエネルギー)のエコジュールという潜熱蓄熱材は、比較的高性能な潜熱蓄熱材ですが、これの代表的な比熱は34[J/g・K]です。これを使って26[kWh/K]の熱容量を得るためには、このエコジュールを2.75トン使う必要があります。

2.75トンの潜熱蓄熱材がどのくらいの容積になるのかピンと来ませんが、床下に並べただけでは並びきらないような気がします。かなりの量であることは間違いありません。

果たしてFASの家の潜熱蓄熱材は、これに近いくらいの量があるのでしょうかね? 非常に興味深いところです。