自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

必要な断熱性は如何ほどか?

前回の記事で「Q値2.0~2.7程度の断熱性は今時の水準としてはイマイチ」と書きました。私に限らず世の中にはQ値の必要値について主張を述べている方が大勢居ますが、残念ながら「OKとNGの境目として、何故その数値を選んだのか?」を説明している事例にお目にかかったことがありません。
私も「Q値2.0~2.7程度はイマイチ」と主張する以上は、「ではどの程度のQ値が必要なのか?」を根拠とともに述べるべきでしょう。
という訳で、今回はQ値の必要値について書きます。根拠といっても厳密なものではなく目安程度ですが、私自身が家を建てるにあたって実際に指針にしているものです。

なお、私はⅣ地域に住んでおり、その前提での考察です。他地域の場合は結論としての数値は変わってくるでしょうが、考え方自体は有効だと思います。

1.そもそも何故高い断熱性が必要なのか?

今更ではありますが、何故高い断熱性が必要なのかをおさらいしておきましょう。これを踏まえれば、「その条件を満たすために必要な性能値はどの程度か?」という考察ができますし、場合によっては「これ以上の性能は無駄だね」といった指針が得られるかも知れません。
私が考える理由は2つ。

1つめは住む人の快適性のためです。
断熱性の低い家は夏暑く、冬寒くなります。空調をガンガン利かせれば一応改善はしますが、とくに冬は暖気が天井付近に溜まるため、足下の温かさまで含めた十分な快適性を得ることは難しくなります。
吹き抜けや勾配天井のような高い天井の間取りの場合は、更にハードルが上がります。勿論、「我が家には吹き抜けも勾配天井も作らない」という場合はハードルが下がります。ただ、「吹き抜けが無ければ寒くないですよ」というのは、ハウスメーカの商品として少々魅力に欠けます。個別の事例に対しての判断はともかく、一般論としては「吹き抜けがあっても寒くない」を必要性能の目安にすべきでしょう。

2つめは光熱費の削減のためです。別の言い方をすると、二酸化炭素排出量の削減の為です。(両者は本来別物ですが、強い相関を持つため、光熱費を削減するように工夫すると、二酸化炭素排出量も削減できます。)
快適な空間を維持するために湯水のように光熱費を費やすわけにはいきません。快適な空間を維持することを大前提に、その上で光熱費を抑えるためには高い断熱性が必要です。一方で、断熱性を高めるためには建築費が増えます。ほんの僅かな光熱費の節約のために、大幅に建築費が上がるのは得策とは言えません。このバランスが取れるところが最適点ということになります。

2.快適性の為に必要なQ値

快適性は主観的なものなので、厳密な判定はできませんが、一般的な目安はあります。ネット上の情報をいろいろと調べた限りで目につくのは、「自分は積水ハウスに住んでいるが、吹き抜けがあるリビングは寒い」というご意見です。先日、積水ハウスから来たダイレクトメールにも最近の竣工事例が載っていましたが、そこには「こだわりのあったリビング階段にしたが、寒さ対策の為、2階に上がりきったところにドアを設けた」という記述がありました。どうやら積水ハウスの吹き抜けが寒いというのは確かな様です。
積水ハウスのQ値は2.2くらい。つまり、Q値2.2では性能不足ということです。(なお、吹き抜けが無ければ寒くないというご意見が主流のようです。なので、吹き抜けが無い場合はQ値2.2
でも十分であるといえます。ここでは前述の理由で、吹き抜け有りを前提で話を進めます。)

逆に、吹き抜けが有っても寒くないというご意見は、一条工務店の夢の家にお住まいの方に見受けられます。夢の家のQ値は1.16。つまりQ値1.16なら性能は十分ということです。

2.2では不足で1.16だと十分。となれば、OKとNGの境目はこの間のどこかにあるはずです。
これを絞り込むための十分な情報は、残念ながら見つけられていません。という訳で、荒っぽいですが、この真ん中であるQ値1.68を、「吹き抜けが有った場合に寒いかどうかの境界値」と判断することにします。
実際の設計ではここからちょっとマージンを取って、Q値1.5以下とするのが妥当でしょう。
これが快適性の観点で見た、断熱性の必要値です。

3.光熱費の観点で必要なQ値

試算の条件によって差はありますが、40坪程度の家でQ値が1違うと、年間空調費は4~5万円違うという試算結果が多いようです。つまり、坪あたり1,000~1,250円です。
高断熱の為の投資に対し、何年で元が取れれば良しとするかは人に依るでしょうが、まあ長くても20年というところではないでしょうか。となると、初期の金額アップが坪単価換算で2~2.5万円以下であればペイすることになります。
たとえイシカワはQ値を約1上げるために坪4万円アップでした。これだと20年では元が取れず、32~40年かかります。まあ、それでもいいとする考えはあり得ますけどね。

光熱費で元をとるという視点の場合、どこまでのQ値が必要かというよりは、Q値をアップさせるためのオプションの費用対効果を判断する、という判断基準になります。そして、元が取れるケースは、決して多くなさそうです。

4.必要なQ値は1.5以下

以上より、必要なQ値は1.5以下で、それ以上の改善については「Q値1.0分の性能向上に対して、坪単価の上昇が2~2.5万円以下」なら改善を実施すべき、という結論になりました。
ほぼ快適性の観点でのみ決まっています。




前回「Q値2.0~2.7程度の断熱性は今時の水準としてはイマイチ」というのは、以上の考察を踏まえたものです。

読んでお分かりの通り、考察のあちこちに仮定が入っていますし、計算精度も粗めですが、得られた結論はそう大きく外していないと思います。「この見積もりは甘めだ」と感じた方は1.5よりも少し厳しい要求値にすればよいでしょうし、逆もまたしかり。
私はひとまず「Q値1.5以下」を自らの要求仕様に掲げるつもりです。標準品だと一条工務店しか選択の余地が無いのが困ったものですが、他社のオプション仕様に期待したいところです。