自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

エス・バイ・エルのモデルハウス見学

次はエス・バイ・エルです。

ここは凄いです。入る前から「普通じゃないぜ」オーラが漂っています。
入ったらますます凄いです。

何が凄いのかというと、内外装の奇抜さ。
間取りと言い、仕上げと言い、「どこかのアトリエかギャラリーですか?」と言いたくなる雰囲気で、とても
人の住むところとは思えません。いえ、こういう洒落た空間に住んで違和感なく暮らしている人もいるでしょうが、私には無理です。ここに住む生活は全く想像できません。カタログには「ジャパニーズ・モダン宣言」と書かれていて、その方向を目指しているのは分かるんですが、いくらモデルハウスとは言えやり過ぎでしょう。
「モデルハウスは大きすぎて自宅をイメージし難い」という意見は良く聞きますが、ここは大きさに加えて更なる障害が待ちかまえています。

営業の方もそこは心得ているようで、「まあ、こういう事も出来ますよということです。一般の方はこうはなさらないと思いますが」と言います。でもねぇ、一般の客を相手にするのが目的の住宅展示場で、こういうモデルハウスを造るのはあまり賢くないと思いますよ。「その手の客層」にターゲットを絞っているなら別ですが。
聞けば私が訪問したところに限らず、エス・バイ・エルのモデルハウスはほとんどがこのバージョンなんだとか。営業さんが苦労していそうです。

技術的な点で言うと、木質パネル工法と、壁体内換気システムが特長です。
エス・バイ・エルの木質パネル工法は、どう聞いても2×4(ツーバイフォー)の仲間なんですが、同社は「2×4とは違うもの」と言い張っています。
2×4との違いは、壁の枠木と構造用合板を接合するのに、釘ではなく接着剤を使っていること。モデルハウス内に、「釘は弱いけど接着剤は強い」を体験させてくれる簡単な試験工具があり、それでやってみると、確かに接着剤は強靱です。
でもね、枠木と構造用合板の接合強度が高いからと言って、建物としての強度が高くなるとは必ずしも言えないでしょう。2×4の場合、構造用合板と枠木で構成される壁パネルが強度の根幹ですので、確かにそこの接合がはがれてしまうと建物の強度は確保できません。重要な部分であることは確かです。しかし、だからこそ剥がれたりしないように2×4では構造用合板を留める釘のピッチまで規定されています。剥がれさえしなければ、建物としての強度は合板のよじれに対する強度で決まりますので、それ以上に剥がれ対策をしても、建物強度は上がりません。
接着剤で留めていることを建物強度の売りにするのは、ちょっとずれているような気がします。

壁体内換気システムとは、建物寿命の原因になる壁体内結露を防止するためのものだそう。世間一般ではこの目的のために、構造用合板と外壁材との間に隙間を空ける「通気工法」が使われます。エス・バイ・エルではそれに加えて、構造用合板の内側にも通気層を設けています。
壁の厚さの3/4くらいにグラスウールが入っていて、残りの1/4(グラスウールの室外側)はスカスカの通気層という感じです。
この2箇所の通気層は、小屋裏の空間とつながっています。エス・バイ・エルでは屋根断熱ではなく天井断熱なので、小屋裏は高温になります。その熱気が上昇気流となって小屋裏の排気口から出て行くと、壁内の通気層の空気が引っ張られて壁内も半強制的に換気されるという仕掛けだそう。
確かにこの方法だと、壁の中の通気はしっかりとれるでしょうけど、断熱性が思いっきり犠牲になってるんじゃないでしょうか。グラスウールの室内側の空気も、道連れになって換気されてしまいまっせ。
どうやって断熱性と壁体内結露の防止を両立するかに各社頭を悩ませており、また工夫のしどころでもあるのに、どっちかを犠牲にするなら、そりゃ対策は簡単でしょう。
この方法にはとても賛同できません。実際、エス・バイ・エルのQ値は2.68と、次世代省エネ基準ギリギリの数字です。

もう一点気になったのが、モデルハウスでもらった資料。
技術カタログなどとは別に、「住まい作りのスタートは!?」というチラシをくれたのですが(会社として作成したものではなく、営業所として、あるいは営業担当者が独自に作成したものでしょう)、これにはこんな事が書いてあります。
「住まいの計画を進めてみようと思ったとき、はじめに把握しておくポイントが3つございます。その3つとは、『予算』、『総資金計画』、『スケジュール』です。」
確かに重要なことではありますが、何のためにどんな家に住みたいのか、といった根本的な事の前にカネの話が来るのはちょっと違う気がします。それらは家を作る際の『制約条件』であって、『目的』ではありません。まず目的、その後に制約条件、の順番でしょう。
まあ、担当者との感覚のズレは担当替えをしてもらえば済む話なので重要とは思いませんが、住宅そのものの特長も特にこれと言って惹かれるものはありませんし、縁はなさそうなメーカです。