自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

地中熱の利用-前編-

先日、某TV番組でジオパワーシステムというメーカの特集をやっていました。いわゆる「地中熱」を利用するシステムを開発しているメーカです。
地中熱自体には以前から興味があったのですが、今一つ自分の中で咀嚼できていなかったこと、また、価格面で一般住宅に採用するのはかなり無理があることなどの理由で、今まで検討の俎上に載せていませんでした。が、TV番組を見たのも何かの縁でしょう。自分の頭の中を整理する意味で、思うところをまとめてみます。

1.地中熱とは巨大な熱のダムのこと

地中熱とは何かと言うと、これがどうにも、一言ですっきり説明するのが少々難しい代物です。
まず理解せねばならないのは、火山や温泉の元になっているマグマの熱エネルギーとは全く違う話だということです。
では何なのか?

正しく理解するために、あえて小難しい言い回しを使ってみましょう。
まず理解のポイントになるのは、「熱容量」という言葉です。この言葉は以前、建物の快適性や光熱費の削減の為に必要な性質だという説明をした際に言及しました。その時は建物の熱容量の話でしたが、地面(大地)というものも熱容量を持ちます。そして、考えてみれば当たり前ですが、大地の熱容量の大きさは、住宅(建物)の熱容量に比べると、桁違いに大きなものです。
熱容量が大きいと、どういうことになるかと言うと、少しくらい熱を与えても温度がほとんど上がりませんし、逆に熱を少々奪っても温度はほとんど下がりません。大地の場合は、熱容量が桁違いに大きいので、かなり大量の熱を与えたり奪ったりしても、温度はほとんど変わらないことになります。

だったら、大地から少々熱を頂いて、住宅の暖房に使えばいいじゃないか。
逆に、大地に少々熱を捨てさせてもらって、住宅の冷房に使えばいいじゃないか。

というのが地中熱の利用ということです。
資産家のご両親がいるのをアテにして、給料日前に親から借金したり、ボーナス後に借金を返したりしながらやりくりするみたいなものですね。いや、ちょっと違うか。
とにかく、地面がどんどん熱を発しているわけではなく、地面は単に巨大な「熱のダム」なのです。そしてそこから熱を取り出したり熱の捨て場所にしたりする場合に、そのダムのことを「地中熱」と呼んでいるわけです。

2.パッシブな利用形態

地表から数メートル程度よりも深い地中の温度は、その地域の平均気温とほぼ等しくなっています。夏に暖められ、冬に冷やされ、しかし熱容量が極端に大きいので急激には温度が変化せず、何年、何十年もかけて、その地域の平均気温に落ち着いていくのです。
日本の場合、多くの地域ではその温度は15~18℃程度らしいです。東京だとここ数年の平均気温は17℃程度。地中数メートルよりも深い部分の温度は概ねこの温度になっているはずです。

で、頭のいい人がこう考えました。


地下深くまで空気を通してやれば、その空気は地中の温度と同じくらいになるはずだ。夏なら戸外の30℃を超える空気を理想的には17℃まで冷やせるので、それをそのまま住宅に入れれば十分冷房になるはずだ。実際には17℃までは冷えないかも知れないが、それでも冷房として十分役に立つはずだ。
逆に冬は0℃近い外気を地中に通せば理想的には17℃にまで暖められる。実際には17℃までは無理としても、光熱費を大幅に減らすことはできるはずだ。


この考え方に基づいて作られているのが、冒頭のジオパワーシステムです。
エコホームズという住宅メーカがやっている地熱住宅というものも、地中深くに直接空気を通すことはしていませんが、基本的には同じ考え方に基づいています。

3.パッシブ利用形態の利点と欠点

パッシブ利用形態の利点は、「設備」らしいものとしては送風ファンくらいしか必要ないシンプルな機構であることです。もっとも、ジオパワーの方は地中に長さ5mの太いパイプ(直径30cmくらい)を埋めますから、これが設備と言えば設備でしょうかね。
これによってもたらされる利点は以下です。

  • 設備がファンだけなので故障が少ないと期待される。万一壊れてもファンだけであれば交換費用も大したことはないと思われる。
  • 稼働時の消費電力がごくわずかと推定される。

推定ばっかりなのは開発元にちゃんと問い合わせていないためです。自宅に本気で採用する気になったら、ちゃんと問い合わせてみましょう。

欠点としては以下が挙げられます。

  • 地中の温度(15~18℃)に依存した性能しか出せないので、補助冷暖房が必要。
  • 空調の代用には(ある程度)なるが、給湯には無力。

個人的には、やや中途半端なシステムという気がします。
これで少なくとも空調は全部まかないたいところです。

-中編に続く-