自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

ジオパワーシステム

以前、地中熱の利用について書いた際に、ジオパワーシステムについても触れました。その後、ジオパワーシステム社に技術的な問い合わせをしたりして、少し不明点が明らかになったので、今日はそれを書きます。

1.ジオパワーシステムの動作詳細

同社ウェブ・サイトを見ただけではよく分からなかった項目の中で、同社に問いあわせて分かったことを下記に列挙します。

(1)システム全体の空気の流れ
基本的に、ダクトを使って家の中で空気を循環させるとのこと。システム概要説明では細部が省略されていてよく分かりませんが、取り入れられた外気は、ジオパイプ→1F床下→1F居室と流れます。
この後、1F天井付近から天井裏に入りますが、これはダクトで1カ所に集められた後、今度は1Fの居室に入るとのこと。
更にその後、2Fの天井裏に送り出され、(a)そのまま屋外に排出される、(b)ダクトを通って地下のジオパイプに戻る、のどちらかになるとのこと。どちらになるかは、運転モードによって変わるそうです。
パイプを地面に埋めて、ファンをつければお終いかと思っていましたが、ダクト工事が必要とのことで、思ったよりは大がかりなシステムです。(ダクト工事って、住宅では結構面倒なようですし。)

(2)パイプの大きさと本数
地中に埋めるジオパイプは直径250mmで、延べ床面積40坪程度の住宅の場合はこれが2本必要だそう。
またこのとき、建物の断熱性は次世代省エネルギー基準程度を想定しているとのこと。断熱性が悪ければ、もっと本数が必要になるでしょうね。

(3)結露水はどうする?
夏期にはジオパイプ中に大量の結露水が出ますが、排水ポンプを備えてあり、センサーで一定の水量を検知したら自動的に排水されるとのこと。

(4)加湿用の水は?
冬期にはジオパイプ中に加湿用の水を入れることになっていますが、給水配管が備えてあって、自動又は手動で給水できるとのこと。
単にパイプの中の水が自然蒸発するだけで十分な加湿になるとはとても思えませんが、そこは突っ込みませんでした。まあ、加湿器は安いので、ジオパワーシステムに頼らなくてもどうにかできるでしょう。

なお、パイプの中の水は排出/給水されて順次入れ替わるので、カビが発生することはないそうです。ホンマかいな? にわかには信じがたい。そんな単純なものかな?

(5)蓄熱用のグリ石の量
1F床下の空間には、蓄熱用の石なるものが詰めてあります。この間には、メッシュ状の空気パイプが設置してあって、ジオパイプで冷やされた(又は暖められた)空気の熱をグリ石に蓄えるようになっています。大きな熱容量の効能については以前書いたことがあるのでそちらを参照下さい。
これについては後ほど詳説します。

(6)騒音
ウェブ・サイトにある利用者の声を読むと、ファンの音が気になるようです。空調の音が嫌いな私にとっては、これは由々しきことです。
質問したところ音量は40dB程度で、1F床下のファンユニットから出るそう。設置場所を寝室から遠ざける、遮音材で囲うなどの対策をとるとのこと。
私は40dBの音が常時聞こえるのは絶対に許容できません。たとえ寝室でなくてもダメ。遮音材でどの程度良くなるのかにも依りますが、この一点だけで、私にとっての魅力は急減です。モータやファンをケチっているのでしょうかね。

2.グリ石での蓄熱性能

グリ石での蓄熱に関して、ジオパワー社とメールで何度か質問のやりとりをしたのですが、ちょっと解せないところがあります。本来なら追加の質問をすれば良かったのですが、途中で仕事が急に忙しくなったので、それどころではなくなってしまって、若干の疑問点が残ったままになってしまいました。今更感もあるので、ここでは疑問を書き記すに留めます。

(1)グリ石の使用量と蓄熱性能
同社から得た情報は下記です。延べ床面積40坪を前提に質問したものです。

グリ石の量   20~25 [m3](空隙率3割程度)
密度        2.6 [t/m3]
比熱        0.8 [J/kg・℃]

最後の比熱は、単位が誤記でしょう。正しくは[J/g・℃]のハズです。コンクリートの比熱が0.8[J/g・℃]なので、グリ石も同じくらいと考えられるからです。少なくとも1,000倍も違うことは有り得ません。
空隙率も、これを加味して正味20~25[m3]なのか、それとも加味してなくて正味は14~17.5[m3]なのか、はっきりしません。同社とのやりとりを踏まえると、どうも正味が20~25[m3]の様なのですが。まあ3割くらい違っても大騒ぎするほどのことではないので、これは良しとしましょう。

ともかく、上記からグリ石の熱容量を計算してみます。

重さ        20 × 2.6 = 52[t] = 52,000,000[g]
熱容量      52,000,000 × 0.8 = 41,600,000[J/℃]
(単位変換)   41,600,000 ÷ 3,600 = 11,556[Wh/℃] = 11.6[kWh/℃]

これに建物躯体の熱容量5[kWh/℃](日本外断熱総合研究所(2020/04/18注:サイト主が転職したのか、ウェブサイトが全く別の個人ブログの様な内容に変わっています)からの値)を加えると16.6[kWh]となります。以前試算した熱容量の必要値 では、床面積1m2あたり258[Wh/℃]必要とのことだったので、延べ床40坪の場合は34[kWh]必要になります。この必要値に対して半分ということです。半分とはいえ、そもそも熱容量を高めるのは非常に難しいことを踏まえると、これはかなりのものです。
ジオパワーシステムは、蓄熱性に関しては、かなり高性能と言っていいと思います。

(2)どうやって置くのだろう?
一方で、このグリ石の量にはかなり疑問が残ります。そもそもそんなに置けるのか? という意味です。
上記では正味20[m3]のグリ石を仮定しましたが、空隙率が約3割と言うことからすると、このグリ石は空隙を含めて28.6[m3]の体積があります。これは延べ床面積40坪の場合の使用量とのことなのですが、仮に総2階建てとすると、1Fの床は20坪(66[m2])しか有りません。ここに隙間無く28.6[m3]のグリ石を並べるとすると、その高さは1.4m 43cmにもなります。

弥生時代の高床式住居じゃあるまいし、床下が1.4m以上も有るような住宅は無いでしょう。そもそも今の建築基準法だと、床下が1.4mもあったら、地下室として建築申請せねばならなくなります。 これを床下に入れるのは不可能ではないですが、かなり苦しそうです。普通の床下の高さとほぼ同じなので、床下はグリ石でいっぱいです。実際には浴槽の部分や玄関の三和土など、石を置けない箇所があることも含めて考えると、特別に床を高めに作っておかないと、置くことはできそうにありません。床下点検などで人が入ることも諦めざるを得ない感じです。
総2階建てでなければ少し高さは低くなりますが、仮に平屋だとしても70cm 22cmです。これでも相当無理があります。実際問題、70cmも石を積むには、床下は1m近い高さが必要でしょうし。 この程度なら基礎を高めに造れば、点検などで人が入る余地を残しつつ、グリ石を積むことも不可能ではないかなという感じですが、依然としてかなり無理があるようには感じます。それに、何しろ平屋ですからかなり特殊事例です。

と言うわけで、ジオパワーシステムは能書きでは大した蓄熱性能なのですが、そもそもその性能値自体の実現性が怪しく、「数字の間違いじゃねーの?」と思わざるを得ないのが正直なところです。

2012/11/04追記
コメント欄で阿武隈高地さんに計算の間違いをご指摘頂きました。お恥ずかしい凡ミスでした。上記では取消線で見せ消しした上で、赤字で訂正しました。
ご指摘いただいた阿武隈高地さんにはお礼を申し上げます。有難うございました。
3.いくつかタイプがある

ジオパワーシステムにはいくつかタイプがあります。

(1)がっつり型
なんでこの名前なのか知りませんが、ジオパイプを2本使ったシンプルなシステム構成のもの。

(2)自然エネルギー
ジオパイプの本数を増やして熱交換量を増やしたタイプ。

(3)快適性プラス型
床下にエアコンを設置して、快適性を高めたタイプ。

更につい最近、システムNという新型がデビューしたようです。ファンが低電力型になったのが大きな違い。

4.価格は不明

参考価格くらいは聞きたかったのですが、地域によって、地盤によって違うので一概には言えないとのことで、50万円なのか500万円なのか、その程度の感触すら分かりません。

5.まとめ

とりあえず、今回は分かったことをまとめました。
こうしてまとめてみて感じるのは、悪くないけど今ひとつ切り札に欠ける、という印象です。シンプルなシステム(と言う割にはダクト工事が必要なんですが)であるのは良いのですが、効果がやや中途半端。ジオパワーシステムのコンセプトには「少しの我慢」が入っているそうですが、むべなるかな。
可能な限り高い快適性と省エネの両立を追求したい私としては、ちょっと方向性が違うようです。