自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

コロナの地中熱利用技術の進展

以前書きましたが、コロナは地中熱利用のヒートポンプを販売しています。それについて追加情報を入手しました。
 
1.ハイブリッド地中熱システムのGeoSIS HYBRID
これは2014年3月に発表済みのものです。発売は同9月から。
地中熱ヒートポンプについてはこちらで書きました。これに対応したコロナの商品がGeoSISですが、今回見つけたのは地中熱と空気熱を組み合わせたGeoSIS HYBRIDです。地中熱と空気熱を組み合わせるのがハイブリッドの由来です。メリットはいくつか書いてありますが、最大の目的は穴掘りコストの削減だと理解してよいでしょう。つまり、普通のヒートポンプと併用することで地中熱側の負担を減らし、その分浅い穴掘りでも済むようにしています。典型的なケースだと従来比半分の50mで済むそう。
こちらの記事にGeoSIS HYBRIDの解説がありますが、それによると日本では地中熱ヒートポンプ用の穴掘りコストは1mあたり1万5千円くらいだそうです。なので、従来型のGeoSISだと150万円かかりますが、GeoSIS HYBRIDでは75万円で済みます。逆にヒートポンプ機器の価格はGeoSISが68万円、GeoSIS HYBRIDで90万円と少し高くなります(定価、床暖房タイプでの比較)。
トータルでは新型のGeoSIS HYBRIDで53万円安くなる計算です。なかなかのコストダウンではありますが、うーん、やっぱり高いですね。穴掘りコストが大きく下がるのは素晴らしいのですが、専用の機器がこれまた高いので、なかなかおいそれとは手が出ません。
以前も書いた通り、コロナの地中熱システムは冷暖房にしか使えない(給湯には対応していない)ので、コストパフォーマンスの点ではどうしても見劣りします。もう一工夫欲しいところです。
空気ヒートポンプは夏の給湯効率が良いので、空気熱・地中熱併用のシステムなら是非とも給湯に対応すべきだと思うのですが。(給湯で必要な80~90℃の高温を作る場合、15℃程度の地中から熱をくみ上げるよりも、25~30℃の外気から熱をくみ上げる方がヒートポンプの効率が高い。)
 
2.穴掘り費用をさらに下げるパイルファイブシステム
コロナは更に穴掘り費用を下げる一手を打ってきました。パイルファイブシステムと言って、ある限られた条件の場合に穴掘り費用を1/4に下げられるそうです。解説記事はこちら。
適用条件は2つ。
 
1つ目は、鋼管杭による地盤改良工事が必要な新築物件であること。
イルファイブシステムでは地盤改良の鋼管杭と同じものを地中熱用の熱交換パイプとして使用します。これがコストを下げる肝です。つまり、地盤改良工事のために鋼管杭を打つ「ついで」に、地中熱のための杭を5本だけ余分に打つことでコストを下げる発想です。
確かに地盤改良工事は、重機を現場に運んでくるための費用など、段取りのためのコストがかなりの部分を占めるはずです。遠方からはるばる重機を運んできて、現場でトラックから降ろしてセッティングし、作業後にセッティングを解いて再度トラックに乗せて戻っていく一連の手間を考えれば、現場で杭を打つ作業時間が5本分増えたところで、大したことはないでしょう。
逆に言えば、地盤改良工事が不要な物件の場合、あるいは改良工事はやるにしても鋼管杭方式ではない場合は、パイルファイブシステムは使えない(コスト削減の効果は全く出ない)ことになります。これが弱点の一つ。
 
2つ目の条件は、Ⅲ地域以南であること。つまり厳寒地には使えません。これは浅い杭を使うことと関係していそうです。
イルファイブシステムは前述のGeoSIS HYBRIDと組み合わせることが前提です。つまり、本来なら50mの杭を1本使います。しかし、前述の鋼管杭による地盤改良工事の「ついで」に杭を打つため、長さ10mという短い杭を5本使うことでその代用にします。(前述の「5本」はここから来ています。)
問題は10mという浅さです。地中熱は本質的に「地中の深いところは年間を通して一定温度である」性質を利用しています。10mと浅い場合、あんまり温度一定ではなくなります。(杭の先端部分は10mの深さがあるのでほぼ一定かも知れませんが、先端だけで熱交換するわけではなく、杭全体で熱交換しますので。) 特に厳寒地の場合、地表に近い地下数mまでは凍てつく外気の影響を強く受けるでしょうから、地中熱としての効果が大きく損なわれます。
この為、パイルファイブシステムは対象から厳寒地を除かざるを得なかったのでしょう。
 
さて、運良く条件に適合した場合、工事費が1/4になるとのことですが、これはGeoSIS HYBRIDとの比較ではなく、GeoSISと比較した場合です。つまり、
  • GeoSISをGeoSIS HYBRIDにすれば、100mの穴が50mになって、穴掘りコスト半分。
  • イルファイブシステムを併用すれば、10mの穴×5本になり、更に穴掘りコスト半分。
  • 合わせれば、GeoSISの1/4になる。
ということです。GeoSISでは150万円でしたから、37.5万円ということですね。
専用のヒートポンプ機器はGeoSIS HYBRIDで90万円ですから、合計で127.5万円。
うーん、空調機器(床暖房、パネルヒーター)としては未だ高いかなぁ。何しろ機器の90万円はヒートポンプユニットだけの価格で、床暖法パネルやパネルヒータの価格(工事費も)は別ですからねぇ。
これで給湯もまかなえるのであればかなり魅力的なのですが。
 
それに、対象がⅢ地域以南と言われてしまうと、「そもそも地中熱無くても何とかなるじゃん」という突っ込みも可能です。普通のヒートポンプでも何とかなってしまう地域であるという前提に立てば、普通のヒートポンプと真正面から競争できる価格でなければなりません。
穴掘り費用を(条件が限られるとはいえ)37.5万円にまで下げる目処を立てたのは賞賛に値しますが、それによってどの程度効率を上げられるのか(電気代を下げられるのか)、そこをはっきりさせるのが次の課題でしょう。(コロナはGeoSIS HYBRIDのCOPを公表しておらず、この肝心な点を検証できません。)
 
コロナの今後の頑張りに期待したいと思います。