自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

なんちゃってセントラル空調

家全体を8畳用程度のエアコン1台でまかなえるはずであること、また私が空調音が嫌いであることなどから、セントラル空調で上手くやる方法を考えてみます。
スタート時点での考え方を整理するとこんな感じ。

  • 能力的には小型エアコン1台で家全体の空調をまかなえるとしても、冷気・暖気をきちんと家全体に行き渡らせないと全館空調にはならない。この解決にはセントラル空調の考え方が有効。
  • 例えば一条工務店ロスガード90は第一種全熱交換型の24時間換気システムなので、セントラル空調と同様の配管・吸排気動作になっているが、これはほとんど換気音のしないシステムになっている(モデルハウスによって差はあったが)。これから類推すると、セントラル空調で上手くやれば、空調音のしない全館空調が実現できるはず。
  • 世の中にはセントラル空調システムが売られているが、何せ高価。例えばこの工事業者(2020/04/26注:リンク切れ)では300万円くらいする。工事費込み、熱交換型の1種換気機能も込みとは言え、それでも高い。普通のエアコンなら工事費込みで7~8万円だから、家中に付けまくっても100万円には全然届かない。これに熱交換型の第1種換気システム(40~50万円くらいらしい)を足して150万円くらい。この程度の費用で済むような方法が無いものか。

具体的な手段としては、熱交換型の第1種換気システム(例えば一条工務店のロスガード90)をベースに小細工を加えてみましょう。どのみち換気システムは不可欠で、しかも快適性や省エネ性に配慮すると熱交換型を選択することになります。となると、ダクト式の第1種換気になるのはほぼ必然ですから、家中に張り巡らせたこのダクトを有効活用しない手はありません。
というわけで、こんなのを考えてみました。

先ず、普通の第1種換気システムはこんな感じです。

イメージ 1


これをベースに、下図の様な小細工をしてみる。

イメージ 2
 

平たく言うと、換気の吸気ダクト内にエアコンを設置してしまおうと。もちろんそれは普通の家庭用エアコンなわけです。もっとも、本当にダクトのままではエアコンが設置できないので、ダクトを一旦小部屋に通し、その小部屋の中にエアコンを設置します。小部屋と言っても、エアコンが入るだけで十分なので、部屋と言うよりは、大きめの箱といったところでしょうか。もともと熱交換型の1種換気システムの場合、半畳ほどのスペースを占有しますから、その上部の天井裏空間などを利用して作れれば効率的です。

え?素人の思いつきに過ぎない?
まあ、その通りですね。ただ、形だけについて言えば作れない代物ではないでしょう。意図した通りの機能をするかどうかに不安があるのは確かですから、そこは考察を加えて、改良のアイディアを積み重ねればいいでしょう。

とりあえず、直ぐに思いつく利点と欠点を挙げてみましょう。

利点

  • 家庭用エアコンという、広く出回っているものを使うので、安価。ベースになっている熱交換型第1種換気システムは、セントラル空調化とは関係なく、そもそも必要なものなので、セントラル空調化に伴う費用は、家庭用エアコンと小部屋の設置工事のみ。
  • 故障しても、普通のエアコンなので修理や交換が素早く安価に出来る。(換気システム部分は可動部がファンだけなので、あまり壊れるものではなく、壊れてもモーターの交換だけなので、比較的対応が容易と推定される。何れにしても、セントラル空調化によってその部分の故障リスクが増すわけではない。)
  • エアコンを最初から2台設置しておけば、同時に故障することは考え難いから、故障時も最低限の空調機能は確保できる。仮にそれをやっても、初期費用の増分は10万円程度で済む。
  • 一般のセントラル空調と同様に、冷暖房の両方に対応できる。
  • エアコンに再熱除湿機能付きのタイプを使えば、除湿も可能。

欠点

  • 部屋毎に室温を変えることが出来ない。(一般のセントラル空調と同じ欠点。)
  • エアコンが設置されている「小部屋」と、実際に人が暮らす空間が別なので、温度調整が上手くいかない懸念がある。
  • 空調能力が風量に依存するので、24時間換気の必要性以上に風量を取る必要が出る可能性がある。必要以上に換気をすることになるので、実効Q値が悪化し光熱費が上がる。(建物の断熱性と換気システムの熱交換効率次第ではある。)
  • ダクトの途中が特殊な形状になるので、各部屋への風量調節が難しくなる。(もともと集中型換気システムはこれが難しいが、更に難度が増す。)

2番目と4番目が少し重い課題でしょうか。解決策としては例えば下記。

先ず2番目の欠点ですが、最近のエアコンには本体(室内機)の温度センサではなく、リモコンの温度センサの測定値が設定値になるように運転するタイプがありますから、それを採用すれば解決しそうです。エアコン室内機を設置した「小部屋」に窓を設け、居住空間から見通せるようにしておきます。その上で、室内機から見通せる位置にリモコンを設置(壁にぶら下げるなど)すれば、リモコンの温度センサは居住空間の室温を測定しますので、エアコンは居住空間の温度が設定通りになるように運転するはずです。リモコンとエアコン室内機が遮られないように設置するのが注意点です。

4番目は難しいですね。そもそも今回のなんちゃってセントラル空調に限らず、集中換気システムでは各部屋の風量コントロール(各部屋に適切な風量が届けられること)が難しいのが現実です。まさかナビエ・ストークス方程式を立てて解くわけにもいきません。流体シミュレーションも産業界の一部では実用化されていますが、住宅に適用できるようなものは寡聞にして聞いたことがありません。
少々力業の解決策としては、吸気ダクトを分岐した後で、部屋毎のダクトに個別にシロッコファンを付ければ、部屋毎に必要な流量が確保できるのではないかと思われます。下図のような感じ。

イメージ 3

上図では軸流ファンの画になっていますが、単に適当なクリップアートがなかっただけです。シロッコファンだと思ってください。

シロッコファンはファンの形式の一種で、風量はあまり取れませんが、風圧が高いタイプです。分かり易く言うと、「送り出す空気の量は少ないけれど、少ないなりに確実に送り出すことが出来る」タイプのファンです。最近のIH調理器対応のレンジフードなどに使われることが多いです。
一方、軸流ファンは大きな風量を取ることが出来ますが、外乱の影響を受けやすく、その風量を確実に確保することが難しいタイプです。代表的な軸流ファンは扇風機です。
上図の様に、複数のファンが我も我もと空気を送り出そうとする状況では、お互いに影響を及ぼしあって、狙った通りの風量を確保することが難しいので、影響の出難いシロッコファンにするのが有効です。もっとも、シロッコファンなら万全とは限らないので、あくまで可能な範囲での改善という位置づけです。

ファンの数が増えると費用が高くなります。1つ1つのモータは小さくて済む(安い)とは言え、数が多いと合計は高くなるのが普通です。とは言え、10万円も違わないのではないかという気がします。これ自体は深刻な影響はないでしょう。
この方法であれば、それぞれのファンの流量を可変することで、部屋毎の空調の強さをある程度独立に変えることが出来るという副産物も付いてきます。(勿論、限界はあるでしょうが。)

とは言え、問題もあります。
ファンの構成が変わると、それはもはや「既存の換気装置を流用する」という範疇ではなくなってしまい、ファンの数が多いといったレベルではなく費用が跳ね上がる可能性があります。
また、シロッコファンで十分な流量を取ろうとすると、かなり回転を高くする必要があるので、騒音や消費電力に悪影響が出ます。

と言うわけで、十分な解決策には未だ到達していませんが、この延長線上で引き続き考えてみる価値はあると思っています。
最大の問題は、こういうへんてこりんなアイディアに付き合ってくれるハウスメーカがあるかどうかですな。普通はいやがるでしょう。