自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

空調機の必要能力

建築計画も中止になったことですし、当面はのんびり考察を重ねていくことにします。
先ずは空調関係から。

今回は、空調機の必要能力を算出します。
この算出には建物のQ値が決まっている必要があります。現時点では当然確定していないので、仮の数値として一条工務店が公表している1.16[W/m2・K]を使用し、建物の床面積を40坪とします。
室温は私好みに、夏は28℃、冬は20℃とし、外気温は気象庁のデータから、2009年の東京都のデータを使用します。
また、この家には5人住んでいると仮定します。

なお、当然ながら全館24時間連続空調が前提です。ヒートショックは快適性からも健康の面からも避けたいので。

1.冬の空調能力

一番厳しい瞬間最大風速的な条件で言えば、外気温が年間を通しての最低気温である0℃になったときが最悪条件です。このとき室内外の温度差は20℃。
このとき、単純にQ値から必要な空調能力を算出すると下記のようになります。

1.16 × 40 × 3.3 × ( 20 - 0 ) = 3,062 [W]

つまり、約3kWの熱逃げが生じています。これを補うわけですから、暖房機器の能力も3kWあれば良いことになります。エアコンで言うと10畳用のモデルがこの程度の能力です。これで40坪の建物が全館空調出来ることになります。最悪条件にて。

実際には人が住んでいますから人体からの発熱があります。これがおおざっぱに言うと1人当たり100Wです。今回は5人の想定なので500W。これだけの熱は何もしなくても室内で発生しています。当然、その分だけ暖房器具の能力は落としていいことになります。今回のケースでは2.56kWまで落とせます。8畳用くらいになりそうです。
家電機器や照明器具などを使っていれば、それらの消費電力も最終的には熱になるので差し引けます。ただ、今回のワースト想定は夜明け直前の最低気温の瞬間ですから、家電や照明器具はほとんど動作していないでしょう。なので無視します。

と言うわけで、暖房の必要能力は最悪条件で2.56kWになりました。エアコンで言うと8畳用が1つあれば家全体をまかなえることになります。(暖気をどの様に家全体に行き渡らせるかは、今回は論じません。この後の冷房も同様です。)

なお、昼間は日照があるので、日射を上手く取り入れれば暖房負荷は大幅に下げられます。人が起きて活動しているので、家電や照明の発する熱、更に調理に伴う熱などが、暖房負荷を大幅に下げてくれます。
加えて、昼間の太陽の熱を何らかの方法で蓄熱できれば、夜間の室温維持の助けにもなるので、最悪想定の2.56kWを更に下げられる可能性があります。
そこまで考えるとちょっと計算が複雑すぎるので、ここでは先ほどの値を採用しておきます。

2.夏の空調能力

こちらはちと難しいです。まず、冬と同様にQ値からの単純計算をすると下記のようになります。(最高気温は34.2℃。)

1.16
× 40 × 3.3 × ( 34.2 - 28 ) = 949 [W]

これだけの熱が室内に入ってきます。冬に比べて方向が逆で、量的には1/3くらいですが、これは単純に、室内と室外の温度差が冬より小さいからです。
問題はここからで、夏はこの数字を最悪時の値と見なすことが出来ません。というのも、様々な要因が条件をシビアにする方向に働くからです。
まず、住んでいる人の人体発熱は冷房負荷として作用します。これを加えねばなりません。+500W。
夏の最悪時は昼間ですから、家電や照明が稼働しており、冷房負荷をかさ上げします。+300Wくらいかな?
もしかしたら調理もしているかも知れません。この熱気はかなりの部分がレンジフードから局所排気されるので、全部が冷房負荷にはなりませんから、+300Wとしてみましょう。
更に、窓から入ってくる日射が大きな冷房負荷になります。日射を上手く避ければ
最小限に抑えられますが、それでも+500Wくらいでしょうか。

さて、精度の荒い数字がいくつも出てきましたが、とりあえず合算すると下記です。

949 + 500 + 300 + 300 + 500 = 2,549 [W]

と言うわけで、精度は荒いですが、冷房の必要能力は最悪条件で2.55kWとなりました。
これも8畳用のエアコン程度の能力ですね。

暖房の時と同様、夜間の冷気を蓄熱(と言うか蓄冷)できれば、昼間の冷房負荷を下げられる可能性があります。
暖房と同様、ここでは前述の値を採用します。

3.結論

暖房も冷房も、8畳用のエアコンが1台あれば、40坪の全館空調が可能ということになりました。日射のコントロールや建物の熱容量の大きさ次第では、更に下げられる可能性さえあります。
家全体で1台で済む(ハズ)にも関わらず、各部屋に1台ずつエアコンを装備するのは、実にもったいない話です。技術者としての美意識も「そんなのは許せん」と言っています。

1台のエアコンの暖気・冷気を上手く家全体に行き渡らせることが出来れば、1台で全館空調という美しい方式が実現できます。
次回(以降)ではそう言う上手い手段がないかを考えてみます。