自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

高断熱・高熱容量の木造は快適か?

これまで、高い断熱性が必要だ、とか、それだけではダメで高い熱容量も必要だ、などと書いてきました。それ自体は正しいと今でも思っていますが、はて、それだけで足りるんだっけ?を改めて考えてみました。

 

1.前提

当然ですが、家全体を快適な温熱環境に保つことが出来ることが大前提です。
その上で、光熱費を最小限に出来ること。もっと言うと、太陽熱などの自然の力を十分に活用して、機械空調への依存度を最小限に出来ること。冬は「無暖房」に限りなく近づけられること。
更に、機械空調を使う場合であっても、「エアコンで冷えすぎ」などの不快感を伴わない空調であること。
もう一つ欲を言うと、機械空調の音がほとんど聞こえないくらい静かであること。

これらを全て実現できるかどうか、という命題を考察します。勿論、現実的なコストと工法で。

 

2.実現できそうなこと

先ず、家全体を快適な温熱環境に保つこと。これは「実現可能」で間違いないでしょう。木造で十分に快適な温熱環境が実現できることは、例えば一条工務店の夢の家を見れば分かります。手段は十分な断熱と気密性を確保すること。特に難しいことでもありません。

次に機械空調使用時の不快感がないことですが、これはちょっとはっきりしないところがあるものの、断熱性が十分に高ければ機械空調への依存度がそもそも小さいので、微弱な空調で済むことになり、不快感にはなりにくいようです。これも多分実現できるでしょう。

空調音がほとんどしないことについては、セントラル空調を採用すればコスト面で少々割高にはなるものの、概ね実現できそうです。
又は輻射熱方式の空調装置を使えば、同様に実現できるでしょう。

このあたりまでは、概ね問題なく実現できそうです。

 

3.実現が難しそうなこと

問題は「自然の力を十分に活用して機械空調への依存度を限りなく下げること」です。
勿論、十分な断熱性と気密性を確保すれば、それだけで機械空調への依存度はかなり下がりますから、それを根拠に「実現可能」と言うことは出来ます。
しかしここで想定しているのは、冬には「無暖房」になるほど徹底した自然の活用です。そのレベルを意図すると、ちょっと難しいのではないかと思えてきました。

先ず、日本外断熱総合研究所(2020/04/19注:サイト主が転職したのか、ウェブサイトが全く別の個人ブログの様な内容に変わっています)太陽建築(2020/04/26注:リンク切れ)の事例を見ていると、冬にほぼ無暖房にすることは可能なようです。(「完全」な無暖房でなくても、「ほぼ」無暖房であれば良いことにします。)
これには建物の熱容量が大きいことが絶対条件で、日本外断熱総合研究所ではRC造で、太陽建築では床をコンクリートスラブにすることでそれを実現しています。

普通の木造でも、潜熱蓄熱材を床板の下に敷き詰めるなどすれば、それらに匹敵する大きな熱容量を実現することは可能と思います。窓から入った太陽熱を床にたっぷり蓄えることは可能でしょう。施工上の課題はありますが。
では木造でも「ほぼ無暖房」が可能かというと、快適性との両立という意味で、大きなハードルがあることに気づきました。

 

4.熱容量が大きいだけの木造ではダメな理由

熱容量が大きければ、昼間に太陽の熱を蓄えておいて夜間にじわじわ放熱することで、1日を通して機械暖房を不要にすることが出来ます。それは木造+大きな熱容量でも同様です。
では、何がダメなのかというと、「家中何処でも快適な温熱環境」との両立が出来ないのです。

昼間に蓄えるのは太陽の熱ですから、当然、窓から直射日光が入ってくる部屋でなければ蓄えられません。日射を上手くコントロールするとは言っても、そもそも日の当たらない北側の部屋ではどうにもならないのです。南側の部屋は無暖房で快適だけど、北側の部屋は機械暖房が不可欠、という中途半端なものしか実現できません。(勿論、それでも普通の家に比べれば十分凄いじゃないか、という言い方は出来ます。ただ、ここではあえてもうちょっと高望みをしてみます。)

では日本外断熱総合研究所の言うRC造や、太陽建築では何故この問題が生じないのか?
それはコンクリートを使っているからです。これらの家で太陽熱を蓄熱させる相手であるコンクリートは、熱伝導率が割と高いので、南側の部屋で取り込んだ太陽熱を、躯体に蓄えつつ、家中に伝達することが出来るのです。なので直接日が射さない北側の部屋でも暖かさを得られるのです。
木造では、いくら床に潜熱蓄熱材を敷き詰めてもダメです。熱容量は大きくできますが、蓄えた熱を家中に分配することが出来ません。十分な太陽熱を取り入れたとすると、南側の部屋は暑すぎて、北側の部屋は寒すぎるという状態になってしまいます。
つまり、大きな熱容量に加えて、どうにかして熱を家中に伝える手段が必要と言うことです。

 

5.木造で建物内の熱伝導を良くする方法

そもそも木は比較的断熱性の良い素材です。この性質故に木造では構造体が熱橋にならず、充填断熱工法でも十分な断熱性を発揮することが出来ます。しかし、家の中の部屋から部屋へと熱を伝えるためには、この性質が邪魔になります。
とは言っても、軽量鉄骨にするわけにも行きません。軽量鉄骨では断熱性・気密性を十分に高めることが難しいからです。(不可能ではないのでしょうが。)
外壁部分だけを木造にして、内壁部分は鉄骨というハイブリッド構造なら両立できますが、さすがに構造体として成立しないでしょう。快適な温熱環境以前の問題になってしまいます。

となると、木造をベースにしつつ、家の中の熱移動を容易にするような仕掛けを設けるしかありません。
例えば‥‥、

(1)床板の下に金属板を敷き詰めて熱伝導させる

熱伝導が最もいいのは銅板です。これなら家の中で部屋から部屋へと熱を伝えることが出来ますが、そもそもそんなものを床板の下に敷いたら、いろいろと問題が出そうです。
湿気は全く通さなくなりますし、第一、施工上、どうやって床板を固定しましょうか? 銅板をぶち抜きながら釘を打つ? 出来なくはないでしょうけど、大丈夫かな? それに、銅が錆びてきたら上下の木材に悪さしそうです。
更に言うと、銅って結構高価です。家中に敷き詰めると、材料代だけで100万円近く(以上?)になる様です。
アルミ板ならもう少し安いかも知れません。熱伝導率は銅よりも多少劣りますが、十分でしょう。銅のような錆びかたはしないので、多少扱いやすそうです。それでも問題は山積でしょうが。
 

(2)床下に配管を通して温水を流す

ほとんど床暖房そのものですね。但し一条工務店の床暖房みたいに、全ての部屋に温水が通っていなければなりません。普段は熱源を切って、温水を循環させるだけにしておけば、温水が部屋から部屋へと熱を運んで、家中を均一な快適温度にしてくれるはずです。たまに日射しが弱くて暖かさが不足する場合だけ、ヒートポンプなどの熱源を作動させればよいわけです。
一条工務店の床暖房にそういう動作モードがあるかどうか、後で聞いておきましょう。仮にそう言う動作モードが無かったとしても、普通に動かせば、ヒートポンプが微弱運転か、ほとんど動作しない状態で温水が回り続けることになりますから、ほぼ同じような状態が作り出せることになります。


なお、他にもヒートパイプを使う方法を思いつきましたが、高温部と低温部の温度差が小さすぎて動作しないのでボツにしました。施工も、金属板を敷き詰める以上に難しそうですし。

しかしこうしてみると、一条工務店は当初思ってた以上にいいかも知れませんね。(何だか一条工務店の宣伝っぽくなってきた‥‥。)
但し、一条工務店の標準仕様では決して熱容量が大きいわけではないので、重要な必要条件が1つ足りません。あの床暖房パネルの配管の隙間に、潜熱蓄熱材を詰め込めれば申し分ないのですが‥‥。