自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

窓があると寒い家になる?

窓は住宅の「開口部」と言われ、室内から逃げる熱の主要な経路とされています。その為、冬に暖かい家を作りたいなら、なるべく開口を(つまり窓を)小さくすべきなどと言う意見も散見されます。そう言った意見は、「窓がないと採光も不足するから、無くすわけにも行かないし、でも暖かい家にするためには小さい方がいいから、そのバランスだよね」というスタンスで述べられていることが多いようです。

さて、本当でしょうか?
勿論、壁に比べたら断熱性のウィークポイントであることは事実ですが、日射の採り入れ方で書いたように、窓(とりわけ南に向けた窓)には日射の暖かさを取り込む効果があります。その両者のどちらが優勢かで、窓があると寒いかどうかは決まります。
と言うわけで、具体的に計算してみましょう。

1.逃げる熱

窓から逃げる熱を概算します。
計算には窓の熱貫流係数が必要なのですが、ほとんどのサッシメーカでは「2.33以下」などと、実にアバウトな数字しか公表しておらず全く役に立ちません。仕方がないので、一条工務店が公表している1.72[W/K・m2]という数字を使用します。ペアガラス、Low-E、アルゴンガス封入、樹脂サッシという仕様のものです。
東京都の2009年1月の平均気温は6.8℃です。室温を21℃とすると、この窓から逃げる熱量は1日トータルで、

(21 - 6.8 ) × 1.72 × 24 × 3,600 ≒ 2,110[kJ/m2]


となります。これは、窓面積1平方メートルあたりの数字ですから、窓面積が大きければ大きいほど、総量は大きくなります。

2.入ってくる日射のエネルギー

一方、窓から入ってくる日射のエネルギーはどうでしょうか。ここでは南側に面した窓で考えます。
以前計算した結果をそのまま使うと、1日の累積で2,576[Wh/m2]の日射熱を取り込めることになっていました(これも窓面積1平方メートルあたりの数字)。これの単位を[kJ/m2]に換算すると、

2,576 × 3,600 ÷ 1,000 ≒ 9,274 [kJ/m2]


となります。

3.結論

と言うわけで、南面の窓に関しては、冬の寒い日であっても、窓から逃げる熱よりも窓から入ってくる日射エネルギーの方が4.4倍も大きく、窓が多ければ多いほど暖かい家になると言えます。

4.注意事項

上記で計算したのはかなり簡略化したケースでして、実際には以下のような要因も考慮する必要があります。

  1. 今回の計算で使用したのはかなり性能の良い窓なので、性能の劣る窓を使えばその分だけ差は縮まる。とは言え、今時の新築で普通に使われている「ペアガラス+アルミ樹脂複合サッシ」であれば、性能はせいぜい上記の2割落ちくらいなので、まだまだ結論がひっくり返ることはない。
  2. 日射のエネルギーは、日中ずっと晴れていた場合の数字なので、晴れ時々曇りだとかなり小さくなる。一日中曇っているとか、雨だったりすると日射取得はほぼゼロになる。そんな日は窓が多ければ多いほど寒い家になってしまう。
  3. そもそも東西面や北面の窓については今回の計算が当てはまらない。東西面は日射を受ける時間が短いのに加え、隣家や植栽の有無で日射の状況が大きく変わるので、単純には計算できない。北面に至っては日射がほぼゼロなので、さすがに窓が大きければ大きいほど寒くなる。

と言うわけで、注意事項はあるものの、大きな窓は暖かい家を作るのに大いに貢献してくれると言えそうです。

なお、夏は完全に窓は悪者です。大きければ大きいほど暑い家になります。とは言え、日射の避け方を工夫すれば、悪影響は最小限に抑えられるでしょう。
基本的には冬を主体にして(南面は)可能な限り大きな窓で設計し、夏は庇やオーニングでカバーするのが良いだろうというのが私の考えです。