自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

リビングに大きな開口が欲しい

今日、正月番組を観ていたら、積水ハウスのCMが流れてきました。それを観るなり相方が「こういうのいい!」と声を上げたのが、リビングに巨大な開口(窓)のあるモデルハウスです。単に大きな開口があるだけでなく、庭に面した2面がともに開口になっており、コーナー部に耐力壁が無い間取り。
言葉で言っても分かり難いですね。写真はこちら。BeSai+eという商品です。

大きな開口が欲しい

相方の言いたいことは分かります。非常に開放感が有って、閉塞感という言葉の対極にあるような間取りです。こんなリビングなら、ゴロンと床に転がってのんびり過ごすのもまた格別でしょう。
我が家では、年に数回ですが庭でバーベキューをやることがあります。猫の額のような庭ですが。
CMにあるモデルハウスなら、リビングからウッドデッキ、庭への連続感があるため、庭でのバーベキューも一段と楽しいものになりそうです。「年に何回もやらないのに?」という内なる声を無視して夢は膨らみます。
掃き出し窓のサッシがレール段差のないフラットタイプであるのも好印象。

以前も書きましたが、南側の開口部は広いほど温かい家になりますので、その点でも大きな開口を作るのは良い方に作用します。
これはもう、南側にドカーンと大きな開口を設けた間取りにしないわけにはいかないでしょう。南側と言わず、東側から南側にかけて、連続的な大開口にしちゃいましょうかね。

問題点は?

‥‥と、ここまでが景気の良い話。

実際のところ、こういう間取りはいろいろと問題含みです。大きく言うと、

  1. 耐震性が劣る
  2. 断熱性が劣る

という2つの問題が出てきます。
1つめの耐震性は、十分な耐力壁を設けられないことに起因します。より正確に言うと、耐力壁の配置バランスが悪くなりすぎる、という表現が適切でしょうか。実際のところ、ああいう間取りの家はなかなか建てられません。建築確認申請が通らなくなってしまいますので。
とは言え、この問題は建てる前に嫌でも分かることです。建てた後で「しまった」とはならないという意味で、あまり深刻になる必要はないでしょう。

2つめの断熱性は、住んでみて初めて問題に気づく可能性があるので要注意です。
南側の開口は大きいほど暖かい家になると以前書きましたが、あれには2つ大きな注意点があります。「夜は開口が大きいほど寒い」という当たり前のことです。それを補って余りあるほど昼間の日射エネルギーが大きいからこそ、トータルでは「開口が大きいほど暖かい」と言っているわけですが、その為には昼間の日射エネルギーを十分に蓄えられる能力が建物に備わっている必要があります。つまり、建物の熱容量です。
これが低いと、昼間、室内は温室のようになって暑くてたまらず、窓を開けて換気する羽目になります。蓄えたエネルギーを換気で逃がすわけですから、夜間の冷え込み時に備えた蓄熱は不十分になります。結果、夜は寒いリビングになる恐れがあるわけです。まあ、空調すればいいじゃないかとは言えますが。

解決策は?

もしも実際にああいう間取りをやるのであれば、かなりいろいろな工夫が必要になりそうです。

先ず、構造強度を出すための手段としては、木質フレームを使うのが良さそうです。と言うか、他に方法は多分無いでしょう。こういうのです。ただ、実際問題、上手くいくかな?
上でリンクした木質フレームの事例では、一般の工務店に木質フレームを使ってもらうのが前提になっているようですが、世の中の工務店のほとんどは純粋な木造軸組み(又は2×4)しかやったことが無いはずです。不慣れなことをやってもらうと、それに起因した何らかの問題が起きる可能性が高いと考えるべきでしょう。かなり心配。

断熱性に関してはサッシがどうこうよりも、建物の熱容量をどれだけ高められるかが肝心です。それができるなら、昨今の一般的なサッシでも極端な問題にはならないはずです。
とは言え、「夜に窓辺に立つと冷気が漂ってくる」くらいの可能性はあります。それも排除したいなら高性能サッシを使う必要があります。
価格を無視すれば、真空ガラスのスペーシアにはスペーシア21という、非常に高い断熱性の窓ガラスがあります。その断熱性は、ちょっとした断熱材並です。これに樹脂サッシを組み合わせれば、断熱性に関しては最強のものになるでしょう。値段も最強でしょうが。

スペーシア21は断熱性は高いものの、日射取得率がやや下がってしまいます。一般のLow-Eガラスに比べると2割引きくらい。それ以上に断熱性が高いので、多分トータルでは「最も暖かい窓」になると思いますが、機会があればちゃんと計算してみましょう。


細かい話ですが、私の知る限り、樹脂サッシでレールに段差が無いものはありません。冒頭に挙げた積水ハウスのモデルハウスの様に、レールに段差の無いサッシにしたければ、断熱性能を犠牲にしてアルミ樹脂複合サッシにせざるをえません。性能と使い勝手の両立が出来ないのは非常に残念です。樹脂サッシでは開口幅も1.5間までのものしか存在しないようで、今回の「大きな開口」という目的には今一つです。
性能がいいからこそ大きな開口には持って来いなのに、非常に残念なことです。メーカが力を入れて新製品を開発してくれることを祈るしかありません。

おまけ

今回のネタのきっかけは積水ハウスのCMでしたが、にも関わらず積水ハウスで建てる気はさらさらありません。寒い家になる結果が見えているからです。「寒い」が言いすぎなら、「私が期待するほどには暖かくない家」と言いましょう。
他の大手メーカも同様です。住友林業三井ホームも木質フレーム工法を持っているので、構造的には大開口のリビングを実現できますが、断熱性は積水ハウスと大差なしです。
それが分かっているので、相方も積水ハウスで建てようとはさすがに言いません。いくらCMで観たモデルハウスが素敵に見えても。

しかし、現時点の有力候補の一つである一条工務店では、ここまでの大開口は不可能ですね。大手の場合、自社で開発したものでなければ、構造の様な根幹の場所に使うことはおそらく不可能でしょう。住友林業三井ホームなどは自社で持っていますからやろうと思えばやれますが、一条工務店は多分無理。

もう1つの有力候補であるFASの家では、依頼する工務店次第で対応は可能な気がしますが、不安があるのは前述の通り。

なかなか両立はできないものですな。