自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

次世代型FASの家

以前、「FASの家では、換気回数を大幅に減らしても問題ないという特別な認定を受けることを計画しているようだ」と書きましたが、どうもそれが日の目を見たようです。
FAS本部である福地建装の社長さんのブログ(2011年6月30日)によると、次世代型FASの家についての言及があります。背景も含めて改めて整理するとこういう事です。

  • 現在ではシックハウス症候群対策として24時間換気が法律で義務づけられている。法律上は、2時間に1回、室内の空気を全部入れ換えるペースで換気扇を動かさねばならない。
  • これは折角空調した室内の空気を捨ててしまうことを意味する。温度も勿論だが、夏なら除湿、冬なら加湿に使ったエネルギーもパーになってしまう。両方合わせて空調エネルギーの損失である。(ちなみに、換気に伴う損失を断熱性の悪化と見なして計算したのがこちら。特に除加湿がチャラになってしまう影響は甚大です。)
  • この損失を最小化すべく、FASの家では全熱交換型の換気装置を採用しているが、交換効率は70%程度(温度と湿度の影響を合算したエンタルピーという指標で見た場合)であり、30%は損失になっている。(とは言え、そもそも熱交換型の換気システムを採用しているのは、ごく一部のメーカだけです。ほとんどのメーカは、「換気した分、全部がダダ漏れ」です。)
  • 換気のペースを落とせるなら、この30%の損失も減らせることになる。換気のそもそもの目的に照らせば、シックハウス症候群を換気以外の方法で対策できるなら、換気のペースは減らしても構わないはずだ。
  • FASの家は床下のスカットール(シリカゲルの一種)にVOCを吸着する効果があるので、これがシックハウス症候群対策になるはず。但し、目一杯まで吸着したらそれ以上は吸着できなくなるので、効果は一時的。これではシックハウス症候群対策になるとは言えない。
  • 吸着したVOCを分解する性質を持つ新型スカットール(仮称)があれば、「効果が持続する」と言えるので、シックハウス症候群対策になると言える。
  • そういう性質を持つ新型スカットール(仮称)の目処が立ったので、換気回数を減らしても良いという特別な認定を受けることを目指す。

で、最後の「目指す」ですが、結局認定が受けられたようです。ブログには明確に書かれていませんが、新型ファースの家を推進していく事業に行政支援が出るとの事ですから、技術内容には当然許可が下りているはずです。事業への支援に関する話は、経産省のウェブ・サイトにあるPDFファイルを御覧下さい。

2011/07/24追記
FAS本部のウェブ・サイトに、本件に関する情報が載っているのに気づきました。
それによると、「これから新型FASの家を全国に建てていき、その実績を持って国土交通大臣認定(換気認定)を取得することを目指す」ということの様です。つまり、未だ工法としての認定はとれていないらしいです。
認定がとれていなくても建てて良いというのがどうも合点がいきませんが、当面は実運用データを採りながら、やばそうだったら止める、という運用をしていくのかも知れません。


生憎、換気をどの程度まで減らして良いことになったのかは書かれていません。シックハウス症候群対策としては換気が不要になったかも知れませんが、換気にはもう一つ、二酸化炭素濃度を一定以下に保つ目的もあります。その観点では換気をゼロには出来ず、1/3程度に減らすくらいが限界です。このあたりが落とし所でしょうかね。

ところで、FAS体験宿泊の記事に書いた通り、私自身はこのネタに大した意義を見いだしていません。現状のFASの家のままで単に換気ペースを減らせばいいと思っていますので。ただ、今思えば、そもそも「行政からの事業支援を得る」のが目的だったのかも知れません。であれば、もっともらしい技術開発が事業のベースに存在していなければならないというのも理解できます。大人の事情って奴ですね。
こういった方法も会社経営の手法としては決して否定するものではありませんが、どうせならもっと直接的に快適性や省エネ性の向上につながる技術に力を注いで欲しいものです。はっきり言うと基礎コンクリートを断熱ラインの内側に取り込む仕様にしてくれよ、熱容量足りてねーぞってことです。

更に余計なお世話を言うなら、もっと宣伝しなさい、ですね。もう20
年近くもやってきて、FASの家の累積の着工件数が僅か2,000棟というのは、いくら何でも少なすぎます(年間の着工棟数ではありません、年平均するとたった100棟です)。
世の中には家の性能で困っている人が山ほど居て、今も大幅に減少したとは言え年間80万棟の新規着工があるというのに、その内、79万9900棟の施主には、「残念でしたね、ちゃんと調べないあなたが悪いんですよ」と言って切り捨てる姿勢は、ものづくりに携わる者として如何なものかという気がしてなりません。勿論、施主の自己責任の部分もゼロではないでしょうけど。

まあ、個人経営の会社をどの様に運営しようが、それは社長の専決事項ですから、余計なお世話以外の何ものでもないんですけどね。