自宅新築日記

自宅の新築にまつわるあれこれを綴っていくつもりです。

オーブルデザインの「緑の家」のウェブ上見学-前編-

面白いウェブサイトを見つけました。
オーブルデザインという設計事務所です。所在地は新潟なので、私自身がこちらに自宅の設計を依頼することはありませんが、ウェブ・サイトの記述は大変勉強になります。特に温熱環境に関して、ここまできちんと系統立てて設計している設計事務所を初めて見ました。耐久性など、温熱環境以外も同様の印象で、まさにプロの設計士の面目躍如といった感じです。こういう設計事務所(あるいは工務店、大手メーカなど)が当たり前の存在になれば、私も住宅業界は江戸時代の主張を取り下げることが出来るのですが。
自らが設計する住宅を「緑の家」と呼び、その仕様・性能をきちんと開示しています。

1.Q値、C値が優れる
Sプラン、SSプラン(標準)、SSプラン(普及版)の3種類があります。具体的な違いはこちらを見てもらうのが手っ取り早いでしょう。
2018/04/07追記
プラン名が変更になったようです。
Sプラン→廃止
SSプラン普及版→Bプラン
SSプラン標準→Aプラン
にそれぞれ変更され、更に最上級グレードとしてAsプランが追加されています。性能値も一部改訂されています。

Sプランに対して断熱性だけを高めたのがSSプラン(普及版)。そこから更に耐震性や耐久性、メンテナンスの容易性まで取り入れたのがSSプラン(標準)という関係です。


プラン毎に多少違いがありますが、Q値はSプランで1.9以下、SSプラン(標準、普及版とも)では0.99以下です。またC値は仕様により1.8以下又は0.99以下となっていますが、実際の仕上がりはプランに依らず平均0.6になっているようで、施工精度の高さも覗えます。
Q値、C値が良いのなんて当たり前でしょ、という雰囲気は頼もしい限りです。

2.基礎が高い

プランに依りますが、基礎の高さが1又は1.2mと非常に高いのが特徴の1つです。目的の1つは白蟻対策です。
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の仕様書には、「地面から1m以内の木材には白蟻駆除剤を塗布しなければならない」という規定があるのだそうです。白蟻は基本的には地面からやってくるので、地面に近い木材は食害に合う可能性が高いとして、そのような規定があると。
だったら基礎を1m以上にすれば全ての木材が地面から1m以上になるから、白蟻駆除剤を塗らなくても良いじゃないか、という発想です。後述の床下暖房を実現するためには、床下に白蟻対策の薬剤を散布出来ないことから、こういった別の手段での対処が必要になっているわけです。薬剤に頼らずに対策が出来るなら、それに越したことはありません。

基礎を高くするもう1つの目的は、基礎の強度を高めることにあります。
基礎の役目は建物の重さを受けて支えることですが、この力は基礎の立ち上がり部に曲げ応力として働きます。これに耐えるためには、基礎は高い方が有利です。
特に新潟は積雪があるので、屋根に積もった雪の分だけ基礎への負担が増します。これに対する配慮の意味が強いようです。

基礎を高くするおまけの効果として、床下を収納スペースに出来ることも挙げています。SSプラン(標準)では、階として数えなくても良い限界である1.4mぎりぎりの天井高(と言うか床高と言うか)にしてあります。小屋裏やロフトを収納にするのは良くありますが、あれの床下バージョンです。収納場所としての使い勝手は、小屋裏より良さそうです。(尚、1.4m以上だと1つの階と見なす必要が出るので、平屋のハズが2階建てに、2階建てのハズか3階建てになってしまいます。そうなると色々面倒です。)

3.蓄熱式床下暖房

最上級のSSプラン(標準)では、床下空間をエアコンで暖めることで補助暖房にしています。こちらの説明が良く纏まっていて分かり易いです。

良くある類似のアイディアとは異なり、床下の空気を室内に循環させることはしていません。(床下を密封することまではしていません。床下との積極的な空気循環は避けていると言う意味です。) 理由として、床下の空気が十分に清浄ではないことを挙げています。基礎コンクリートのコンクリート臭、いくら高気密でもある程度虫は入ってくる(そしてその死骸が床下に溜まる)ことなどを踏まえてのことだそう。もっとも、前述の基礎の高さ(床下空間の高さ)のために、虫の死骸などの清掃が容易であり、だからこそ不安のない床下暖房が可能になったと主張します。

2018/04/07追記
この部分は私の読み間違いで、床下からの空気循環をやっています。床下暖房として床下からの空気循環をするが、その為には床下清掃が容易な高基礎にする必要がある、というロジックになっています。


FASの家どとは考え方が違いますね。もっとも、FAS
の家の床下は発泡断熱材で覆われているので、コンクリート臭も虫の進入も先ず無いでしょう。床下からの空気循環が絶対的にダメというわけではないはずです。あくまでも緑の家ではそういう思想だと言うこと。

なお、単に床下をエアコン暖房するだけでなく、「蓄熱式」にしいてるところがもう1つのミソです。
深夜電力の契約をして、この床下エアコンは深夜の安い電力で動かしています。そしてその熱を基礎のコンクリートに蓄えて、日中の暖房の補助にします。私も前に同じ様なことを書きましたが、緑の家ではそれを実践しているわけです。
ただ、緑の家(SSプラン(標準))の基礎断熱は、ちょっと中途半端な仕様になっていると思います。以前、基礎断熱の色々な方法について書きましたが、緑の家(SS標準)ではこちらのページの図の様になっています。基礎を外側で断熱したり内側で断熱したり、ちぐはぐです。白蟻対策としての点検の容易性と両立するためにこの仕様になっているとのことなので、蓄熱の視点だけで決めるわけにはいかないのでしょうが、ちょっと勿体ない気がします。

4.風呂の廃熱回収

ヒートファクトリーと呼んでいますが、風呂の排水(浴槽の残り湯やシャワーからのもの)はお湯なんだから、捨てる前にその熱を暖房や給湯に活用しようというもの。こちらに説明あり。

床下空間の高さを利用して、大きな貯水タンクを設置してあります。そこに風呂の排水(お湯)を溜める仕掛けです。このタンクは特に断熱処理はしていない様なので、排水の熱で床下の空間が暖まります。これが前項で説明した床下蓄熱暖房の補助になると言うわけです。(夏は冷房の邪魔になるので、タンクに貯めずにそのまま排水するそうです。)
更に、このタンク内には水道水の配管が設置してあります。水道水の内、エコキュートに行く水は、先ずこのタンクの中を通ることになります。(水道水と風呂の排水が混ざるわけではありません。温排水の溜まったタンクの中に水道管が通してあって、熱交換が出来るようになっているわけです。) これによって水道水の温度がある程度上がってからエコキュートに入ることになるので、エコキュートでの湯沸かしの為の電気代が節約できます。

設置費用は15~17万円とのことで、15万円として光熱費の低減で約18年でペイするとのこと。ちょっとかかり過ぎかなぁ。
でもこういう工夫は良いことです。本当は、大手の浴槽メーカやエコキュートメーカが取り組むべき事でしょう。

 

-後編に続く-